二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto—— ( No.11 )
- 日時: 2010/02/05 21:57
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: 8zzGCz7V)
【第五話】真っ赤な嘘で君を囲う
黒猫はルキアと初めて会った時のことを思い出して暫くボーっとしていた
その様子を見ながら市丸は苦い思いが胸を占めるのを感じていた
無垢な彼女の沈んだ顔など見たくないのだから
やっと我に返った黒猫が市丸へ視線を向ける
その瞳にはもう戸惑いの色はなくて、どこか納得しているようだった
首を傾げた黒猫はそのまま疑問の色を瞳に浮かべて口を開いた
「ギン隊長は…何でルキア姉様のことを俺に教えてくれたんですか?」
如何なる時でも変わることのない笑顔のまま市丸は言葉を返す
「だって、黒はルキアちゃんのこと大好きやろ?だからルキアちゃんのことは何でも教えたった方がえぇかと思うて」
その言葉に目を見開く黒猫の素直な反応を見ながら市丸は胸の内で顔を歪める
まるで彼女のことを一番に考えているかのような言葉
それは真っ赤な嘘
本当に黒猫が大事なのは確かだけれど
今の自分の言葉はただ静かに彼女を囲っているだけ
あの人の理想へ近づくため黒猫を手の内に入れる
自分のために使うことはしないと決めたはずなのに、結局はその決意も折れてしまった
あの人の前ではどんな決心も意味を無くす
黒猫でさえあの人にとってはただの捨駒にすぎないはずだ
そんな人についていくことを決めて、何でも従う自分が時に恨めしい
市丸の言葉を聞いて黒猫は驚きに目を見開きながら嬉しさに心が温かくなっていた
ルキアのことを大事に思っている自分のために教えてくれたという市丸の言葉が酷く嬉しくて
喜ぶ内容ではないと分かっていながらもただ彼の心遣いが嬉しかった
無意識に囚われて都合良く動く人形にされ始めているとは気づきもせず
市丸を微塵も疑うこともなかった
不意に浮かんだ疑問を何気なく口にする
「ルキア姉様は…どうして罪を犯したんですか?」
一瞬きょとんとした表情を浮かべた市丸だったが、思い出したような顔をして苦笑を浮かべながら頭を掻いた
「あぁ、それなんやけど…ルキアちゃん、現世で死神能力の譲渡してもうたみたいでな?そんで捕まったわけ」
人間への死神能力の譲渡
それは黒猫でもわかるほど重い罪
さっきよりも大きな衝撃にうたれたように顔を歪める黒猫は更に口を開いた
「何で…誰にそんなことを」
わざとらしく苦い顔をしながら市丸も言葉を止めることはない
「何や事情はよう知らんけど、人間を助けるためやったみたいやね」
弱き人間を救うために己が大きな罪を犯す
その選択は短い間だったが慕い続けているルキアの最もやりそうなことだった
自分を犠牲にしてでも弱い者を守り抜く
それは黒猫が一番尊敬しながらも、一番恐れていたことだった
黒猫の悲しみと戸惑いと何かへの憎しみを混ぜたような暗い色になった瞳を見下ろしながら市丸は苦しげだった
無垢な彼女を悲しませることはしたくないのに
この言葉が彼女を闇へと嵌らせることは分かっているのに
それを止めることのできない自分が嫌になった