二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto—— ( No.12 )
- 日時: 2010/02/06 19:50
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: 4NEy1N7f)
【第六話】子猫も憎悪で獅子と化す
ルキアが白哉と恋次に尸魂界に連れ戻されて数日後
丁度、一護達が尸魂界に侵入した頃
黒猫は未だルキアと会うことはできずにいた
市丸も会わせたいのはやまやまだったが他隊の牢まで忍びこむことは容易ではない
毎日塞ぎこんだように笑みを浮かべることも言葉を発することも少なくなった黒猫は市丸を落ち着かなくさせる
その瞳は元は金色と翡翠色という澄んだ輝くもののはずなのに、今は闇のように暗い色をしていた
ルキアが罪を犯したという絶望と戸惑いと守れなかったという己への怒りと嘲りと奪った人間へ対する憎悪で光を失った瞳で世界を見る
そんな黒猫に市丸はさらなる追い打ちをかけなければならない
「ルキア姉様から力を奪ったのはどんな人間なんですか?」
ある夜にふいに黒猫に尋ねられた言葉
それはあの人の予想通りの言葉
暗い瞳に目を向けて市丸は苦笑を浮かべる
「橙色の髪を持つ男なんやて」
その聞き慣れない容姿に黒猫は首を傾げる
しかし、その瞳には僅かな光が浮かび始めていた
それはあの人が望んでいるもので、市丸は望まぬもの
理想へ近づくためならば私情は捨てなければならない
そう自分に言い聞かせて市丸は言葉を続けた
「そんでな。その男、今こっちに向かっとるんやって」
予想外のその言葉に黒猫は眼を見開く
僅かに唇を開けて声を出す
「どうしてですか?何の目的で…」
黒猫の言葉を遮るように市丸も言葉を返す
「ルキアちゃんを取り戻しに来るんや」
人間の元へルキアを渡す=自分の元からルキアを手放す
そう脳裏で解釈した黒猫の瞳は更に鈍い輝きを増す
絶対に自分の方が一緒にいる月日は長いのに、それを無視して大切なものを奪われるのは納得がいかない
子供らしい我儘で黒猫の心は怒りに染まる
けれどその怒りのはけ口が見つからなくて胸が苦しかった
「その男は、橙色の髪を持ち身の丈ほどもある大刀を背負っている。現在旅禍として侵入を果たしており、彼らの討伐を命ずる」
前置きなく言われた市丸の言葉に黒猫は伏せていた目を上げる
『彼らの討伐を命ずる』?
討伐、それは倒すということ
相手を消してもいいということ
復讐の機会が与えられるということ
黒猫の瞳に浮かんでいた光は今や強い輝きとなっていた
このどうしようもない怒りを向ける場所が見つかったことで安堵する
正義を片手に復讐を果たすことができる
黒猫は、久しぶりに満面の笑みを浮かべて市丸を見上げた
「旅禍が来たら絶対俺もつれてって下さいね!俺、ちゃんと戦えますから」
その瞳に浮かぶ無邪気な輝きは狂気と呼ぶのに相応しい
藍染の手から逃がしたくて、あの日黒猫を救った
けれど今、彼女は結果的に彼の駒となっている
計画を進めるために、邪魔なものは排除できるよう
仕える駒が必要だった
夜に一人で眠れなくなるほどのトラウマを抱えさせてでも
素直に無邪気に生きられればと思ったのに
狂気を芽生えさせた幼心は時に大人さえも凌駕する
旅禍を倒す時には自分もつれて行け
満面の笑みで言われれば断ることはできない
黒猫の頭を撫でながら市丸は頷いた
「えぇで?でも、危ないことしたらあかんよ」
きょとんとした表情を浮かべる黒猫の鼻先に指を当てて苦笑した
「ボク、黒が怪我するの見るん嫌やもん」
納得したような穏やかな笑みを浮かべる黒猫を見下ろしながら市丸は思う
十の言葉の内、九は嘘で一は本音
それくらいはいいでしょう?
だって自分は無邪気な子供の光を壊せるほど
まだ鬼畜にはなれないから