二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【BLEACH】黒猫綺譚——onigoto—— ( No.4 )
- 日時: 2010/01/23 17:57
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: S78i8iJk)
【序章——物語の始まり——】
少女は暗い押入れの中からただ息を殺して僅かに開いている襖の隙間から外の様子を窺っていた
少女の目に映っているのは白髪で長身の男と、茶髪で白い羽織を着ている男
そして、床一面は赤い色
その赤色は少女の親類のものだった
男達はいきなり現れて少女の家族を次々に斬り捨てていった
押入れに逃げ込んだのは幼いながらの知恵を振り絞った防御策
それでも、この砦がいつまでももつ物でない事は分かりきっていた
覗いている部屋の向こうで白髪の男が口を開いた
「藍染隊長ー、後始末はボクがやりますから先に出とって下さい」
「うん、分かったよ…ギン」
暢気な口調の白髪の男の提案に不思議そうな顔をしながらも茶髪の男は素直に同意して部屋から出ていった
足音と一緒に気配も消えた事を確認して少女は少しだけ安堵した
次の瞬間白髪の男の言葉に少女は凍りつく
「さぁて、藍染隊長もいなくなったことやし
始めよか?ボクとキミの鬼事を」
「死神舐めたらあかんで?」
笑いを含んだ声音で明らかに少女へとかけられた言葉に恐れをなした少女は押入れの奥の壁へと背中をつけた
『このままでは殺される』
そう頭では分かっているのに体が言う事を聞かず自分の意思でピクリとも動かす事ができない
暫く少女のいる押入れに一歩も近寄ってこない男に、少女は諦めの思いを浮かべた
『あの人は、自分の居場所を知っている』
誰にでも分かる結論に辿り着き体の力が抜けた
「あれぇ?ここにはおらんみたいやねー」
わざとらしい口調でそう呟くと白髪の男は何故か家から出ていってしまった
嘘と分かっていてもその言葉に少しだけ安堵してしまう
少女は一つ溜息をついた
「みぃつけた…可愛い子猫ちゃん」
ゆっくりとした声に全身に鳥肌が立つ
溜息と共に下に落ちた視線を上げれば襖の隙間から細い目をした白髪の男と確かに目が合った
「何もせぇへんから…こっち来ぃ」
襖の隙間を少しだけ大きくして男は細く白い指を少女へと差し出す
少女は首を振って押入れの奥へと逃げた
あの手に掴まれば命が散る事が分かっていたから
少女の反応に困った様子の男に外から声がかけられた
「何をしているんだい、ギン?」
「早くおいで、屋敷に火をかけるよ」
静かな口調で紡がれる恐ろしい言葉
茶髪の男と白髪の男は少女の家に火を放つつもりらしい
「後ちょっとだけ待っといて下さい」
少し大きな声で茶髪の男に言葉を返した白髪の男はまた、少女に目を戻して諭すような口調でこう言った
「ほれ、はよせぇへんと…キミ、焼けてまうで?」
「いくらボクでもこない幼い子を手にかけたくはないんや」
生きたまま焼かれる
その恐怖に少女は思わず男の手を取ってしまった
そのまま勢い良く押入れから引きずり出され、部屋の真ん中で男と対峙する
部屋には隙間だけでは見えなかった家族の体が点々と散らばっていた
どれも一カ所や二カ所、急所を刺された痕だけが赤く染まっている
それを目にしても全く表情を変えず少女は目の前の以外に長身である白髪の男を見つめた
その視線に若干驚いた様に眉を上げた男はすぐに気を取り直し少女と目線を合わせるように屈んだ
「これから家族の敵を討ちたい思うんなら、ボクを殺したいと思うんやったら」
「キミ、死神になりぃ」
そう告げてにっこりと笑うとスッと少女の頭に手を伸ばし綺麗な黒髪をくしゃ、と撫でた
「じゃ、とりあえずさよならや……また会えるんを期待しとるで、黒猫ちゃん」
少女の乱れた髪を直して立ち上がると背を向けて歩きだしながら男は言葉をかけて部屋から出ていった
少し遅れて少女も窓から屋敷を脱出する
後ろを振り返れば少女の家は紅く燃えていた
人通りのある道へと、死神になるための学校に行くための道へと辿りつくため足を闇雲に進めながら少女は一言呟いた
「ありがとう、狐さん……私をあの牢獄から出してくれて」
「いつかかならず、会いに行きます」