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カジ　その１



ごうと音がして、風が体を通り抜けていく。
竹林は涼しく、吹き抜ける空気が心地よい。
一人、空を仰いだ。

……一人ではないな。

がしがしと鼻をかく。
上には竹が茂っていて、空は見えない。
掌から吹き出る炎が、風を受けて揺れた。


瞬間、体を捻り姿勢を低くする。
自分の頭の上を、何かが高速で通り抜けた。
勿論、風ではない。

捻った体を、そのまま加速させる。
ボッと腕から巻き上がる炎を盾に、敵へと突進した。

林の影に見えた人影に向かって、爆熱する足を振り切る。


……寸止め。
既に自分の背後に、大量の『玉』が揺らめくのを感じていた。

じっと、相手を見据える。
驚愕を浮かべながら少女は、それでも油断無くこちらを見つめていた。

バシャーモは再び自分の鼻をかく。
引き分けとは、初めての事だった。