二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.101 )
日時: 2011/01/11 23:17
名前: かっぺい (ID: ZMNBWJT7)

ただいまー!そして明けましたおめでとうございましたー!!
一週間ほどの帰省のはずが、年末年始のゴタゴタで随分お待たせしてしまいました……
またのそのそやっていきます。どうか今年もよろしくお願いします!

カジ その18



「……みすちー?」

私は空虚な屋台に向かって声をかけた。
カジはそれに眉を潜める。私の声は、想像していたものとは違っていたのだろう。

奇妙に揺れたその声は、もちろん、友への朗らかな挨拶ではない。

「どうした」

「いや……いつもなら、ここで彼女が出迎えてくれるはずなんだけど」

「出掛けているんじゃないのか」

隣からの声に、私は首を振って、屋台に並んだ鰻を指した。

「仕込みの途中で席を外すような子じゃないんだ」

「急に腹痛でも」

「彼女は妖怪だよ?」

「……妖怪でも腹を壊すかもしれん」

カジはそう言って、屋台の裏側へと回る。

「俺だって風邪をひくんだから」



ミスティア・ローレライ、それが友達の名前だった。

彼女と初めて会ったのは、もう随分昔のことになる。
村外れに妖怪が出ると慧音に頼まれ、私は夜も更けてから暗道を歩いた。
今でも覚えている。
私は妖怪の噂を聞いて、血を滴らせているような怪物を想像していたはずだ。

……けれど、少し歩いた所で、私は彼女を見つけた。
明々と光る提灯をぶら下げた屋台、煙の向こうでちらつく顔。
最近開店したんです、と、店主はにっこり笑っていた。

まだ私がずっと苦しくて、まだミスティアが敬語で客と話すような頃だった。



私とカジは近くにあった茂みの中に、倒れ伏している彼女を見つけた。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.102 )
日時: 2011/01/16 18:43
名前: かっぺい (ID: ZMNBWJT7)

だいぶ前の話に修正入れました。割とどうでもいい所なんでお気になさらず。
ついでにこっちもちょっと更新。ペースが掴めないです……; 週末にきっともう一回!

カジ その19



駆けていこうとする私の右腕を、突然カジが掴んだ。

「放してくれ!」

私は怒声と共に肢を振った。
結びは固い。
私は空いている左手で、乱暴にカジの首もとへ手を掛ける。

———いったい何のつもりだ!?
また声を発しようとしたところで、彼の表情がおかしいのに気付いた。

「気持ちは分かるが」

カジが言った。茂みの向こうを見ていた。

「ちょっと待ってくれ」

「彼女は友達なんだ!」

「そうだろう……が」

カジが指を指した。
私は焦燥を感じながらそちらを見る。またしても、目に映るのは友人の姿だ。
まだ倒れている。

私はもう一度カジを睨んだ。
けれど、彼の顔が見えた途端、私は口をつぐむ。

「あの子に『憑いている』のも、そうか?」

空気が震えた。
ぞっとするような鋭い眼をして、カジは私の前に出た。



妖怪は頑丈だ。

彼らは一様に、人間よりも強固な身体をしている。
傷の治癒も早く、また病気になったりもしない。

……が、彼らにも、地にくず墜ちる時はあるのだ。
それは多くの場合、油断か事故だが———

時折、強者との邂逅が、その原因になる。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.103 )
日時: 2011/01/16 19:49
名前: かっぺい (ID: ZMNBWJT7)

前回にちょっと追加+今回更新。
……今整理してて気付いたんですが、>>49からここまでで一日経ってません。
長ぇぇぇぇ!! と、とりあえずカジさんが終われば……また長いですけどorz

カジ その20



強者だって?

私はカジの背中を見ながら、内心で疑問符を浮かべた。
ゆっくりと前に進んでいく彼は、ミスティアから目を離さない。
カジに続く。彼の脇から、私は辺りを見渡す。

この場所に、『強い気配』は無かった。
脅威となり得るような、彼女を襲ったと考えられるような、凶悪な気配———
それが今、ここには無い。

「妹紅」

……少し考えていた。

私は、友人の不在を、何者かが干渉したせいだと予想していた。
捜索も始めの方からである。最初にカジの言ったような、体の不調が原因だとは考えにくい。

「おい、妹紅」

……しかし、この場には、その気配が無い。痕跡すらも感じ取れない。
変だ。
最初から敵は居なかったのか、と問えば、違う。
彼女が意識を失うほどの事態は、それなりに強い『何か』が居なければ有り得ないのだ。

が、その『何か』はいない……

「妹紅!」

「……さっきからなんなんだ!?
 ちゃんと聞いてるから、言いたいことがあるなら」



私は口をつぐんだ。
カジの脇から、どっぷり暗い茂みが見えている。
夜が来ていた。
薄ぼんやりした月光が満ち、横から凪いでいく風が木々を揺らす。
木の葉がかすれてざわざわ鳴った。

茂みの中で、彼女が立っていた。

「みす……ち……」

友人はこちらを見ていた。
月光が鈍く照らすその眼は、がらんどうのガラスによく似ていた。
だらんと垂れた両腕が、泥人形のようにざらざらして見えた。



ふと、昨日のことを思い出す。
ぞっとするような影の濃霧、そこから覗く虚ろなひとの顔。

そういえばさっき、カジは『憑いている』と言った。

———あぁ、今の状況は、良くない。



『唄』が聞こえてきた。