二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.104 )
日時: 2011/01/23 22:09
名前: かっぺい (ID: ZMNBWJT7)

ちょいちょい更新……最近どうも安定しません。気長に待って頂ければ幸いです。

【Crash into Deep and Deep】 その1



昔 お山に 雀が居った 木々の間で 芋虫を くちばし開いて
トったげな トったげな
ある日 人間 やって来た にやにや笑いが 移ろうて それを最期に
取ったげな 取ったげな
ようよう 彼らは 去ってった 落ち葉踏み踏み 音だけが 真っ暗お目々を
塗ったげな 塗ったげな
かくて 雀は夜の中 うねるを見るは ついばんで 人間様でも
殺ったげな 殺ったげな





異変に気付いた、というより、異変に反応したのはカジだった。

「こ……れは……!?」

茂みに唄が響いていた。
歌っているのは、茂みの向こうにいるミスティアだ。

……いや、違う、そちらは問題ではない。

カジはごしごしと自分の目を擦った。
瞬きを繰り返し、首を振って周りを見渡した。
見渡そうとした。

「マズいよ」

カジは妹紅の声を聞いた。その声の方に顔を向ける。

———世界は漆黒だった。
全く何も、彼には見えていなかった。

「眼が見えん……!」

「彼女の能力だ」

カジは小さく舌打ちをした。
唄を聞くだけで視力を失うとは、今までに仕掛けられた事の無い攻撃だ。
いや、まだこれが攻撃のためと決まった訳ではないが……

手探りでカジは妹紅に触れようとした。
その伸ばした手さえもが、瞳には映らない。

闇の向こうで、妹紅が自分の手を掴んだのをカジは感じた。
そこで、唄が止んだ。

「彼女はみんなから好かれているんだ」

妹紅の声だった。カジは意識を尖らせながら、その台詞を聞く。

「お前が言うならそうなんだろうな」

「歌が好きでさ、鰻を焼くのもとっても上手でさ……」



瞬間、カジは、事態が非常に危険な状況であることを理解した。

それは、正面からの風を感じただけではない。
今まさに攻撃されようとしているから、だけではない。

妹紅の手が震えていた。
友人に牙を剥かれた彼女は、この漆黒の世界で戦意を持てていなかった。

また何か彼女が漏らす。
声までもが、焦燥と動揺で上擦っていた。

———動けない

妹紅は、根を張ったようにその場に立っていた。
カジが腕を引いている、引いてはいるのだが……
彼女は喋るのを止めない。彼女は何も、視えていなかった。



「みすちーは優しい娘なんだ!」

「妹紅っ!!」

空気が大きく震えて、弾けた。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.105 )
日時: 2011/01/30 23:19
名前: かっぺい (ID: ZMNBWJT7)

ここらへんを書くにあたって、どうも前までとの違和感がorz
量が量ですし、修正は保留とさせて頂きます……

【Crash into Deep and Deep】 その2



『流れてきた女が居た。
 彼女はぼろぼろの衣を纏っていたが、その身体は不自然なほど綺麗だった。

 女は上白沢の家に招かれた。というより、上白沢の「ばけもの」が彼女を引き取った。

 村中で不安の声が上がった。やはり、「ばけもの」自らが養うと言ったのが不味かったのだ。
 ひょっとしたら、あの女も妖怪かも知れない』





隣を庇うようにして、カジは右腕を出していた。
ばぁんという音、何も見えない世界の中で、じりじりとした痛みが現れる。

カジが顔をしかめると同時、傍ではっとする声がした。

「か……カジ……」

「正気に戻ったか?」

妹紅の声を聞いた。直後、追い立てるように『玉』の気配があった。

「……! 早く逃げ———」

「もう動けるよな」

え、という声を余所に、カジは地面を蹴った。
二人の身体が宙を駆ける。一瞬で、暴力的な波動から、距離を置く。

「うわっ!」

「手を離すな!」

カジは左手で、妹紅の手を強く握った。
そのままの勢いで右手を振る。
焔を纏った拳から、熱波が放たれる。

「な、何を」

「……攻撃だが」

地面に着いた。ばたばたとする妹紅を抱え直し、カジは二歩目を蹴る。
その時、ごあ、という音がして、背後で風を切る音がした。
吐き出した炎は『玉』を素通りしたらしかった。

「やっぱり『当たらない』な」

カジは一層強く妹紅を抱え込んだ。
三歩目を着く、と同時に

足下へ拡散する炎を打ち出した。



手にはまだ触れるものがある。

立ち上がる炎を目隠しにして、カジはミスティアから距離を取った。
風の途切れた場所……恐らく今、彼らがいるのは木の陰だ。
まだ、眼は見えるようにならない。

手にはまだ震えているものがある。

「なんで」

小声を聞いた。
カジは、くいと首を曲げて、隣を見る。
漆黒の向こうに、ひとの気配。

「なんで彼女を攻撃したんだよ」

妹紅の声は、しっとり湿った刃のように、カジの耳を突いた。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.106 )
日時: 2011/02/06 19:07
名前: かっぺい (ID: ZMNBWJT7)

今日も元気だ捏造捏造
自分設定にはご了承ください……

【Crash into Deep and Deep】 その3



『村でのあの女の評価は、そろそろ限界まで墜ちたようだ。
 不可解な力を使えるのが分かった以上、あんな化け物を置いておく理由はない。
 「ばけもの」に怪我をさせた今なら、二人まとめて追い出せるかもしれない。
 やはり「ばけもの」をかばう者も、化け物だったのだ。

 ところで、村外れに妖怪が出るという話は、まだ調査中らしい』





妹紅の台詞は、カジが予想していたものだった。
ただし、彼はそれを望ましいとは思っていなかった。

「……なんで攻撃した、とは?」

「みすちーが怪我するだろ!」

暗闇の中で妹紅の声が悲痛に響く。
一応隠れているつもりのカジは、風の流れに集中した。
今のところ、こちらに向かってくる力は、無い。

「彼女は俺たちに攻撃してきた」

「何かの間違いだよ」

「確かに、殺意は無かったんだがな」

カジは、繋いでいない方の腕に意識を向けた。
じんわりとした痛みが、未だに消えず残っている。

「ふざけてる訳でもないらしい」

「……違うんだってば……」

隣からの声はますます沈んでいく。
不安や混乱が滅茶苦茶になって、妹紅を包んでいるような感覚が、カジにはあった。

手を強く握られた。

「殺さないで」

カジは背後に、ふわりと風を感じた。

「私たちが逃げれば、闘わなくて済むから」

風は徐々に勢いを増す。躊躇らしい流れは、感じ取れない。

「彼女を……殺さないで……!」

その瞬間、カジは、妹紅の手を払った。





「殺すつもりなんて、最初から無い」

カジは、襲い来る攻撃を両手で弾いて、立っていた。
背後には妹紅の呼吸の音がする。
目の前にはミスティアの気配がする。

「そこで見てろ」

「カジ……」

「俺が彼女を止めてやる」

真っ暗な世界に自分の声が反響するのを、カジは聞いた。
そして轟風。



妹紅は見る事ができなかった。

カジがその瞬間、酷く辛そうな顔を浮かべて、地面を蹴ったのを。
その表情が、妹紅自身とよく似ていたことを。