二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.44 )
日時: 2010/03/04 23:27
名前: かっぺい (ID: qrbmE5ew)

カジ その13



追けられているのに気付いたのは、少ししてからだった。
無言のまま帰路を行く途中、肘を叩いて異変を伝える。
僅かに、カジが早足になった。

「やっぱり追けられてたか」

「いつから?」

「わからん」

つまりは、私達では察知できない手練、と言う事だ。
ちらと、背後に目をやる。

建物の陰に隠れるように、少しずつ迫って来ていた。
暗がりにいるせいで、服装や顔は見えない。
道を歩く人も既にまばらで、不審さを咎める者もいない。

「……敵と思っていいか?」

「その方向で」

慧音の家までには後少しだが、万が一戦闘に発展した時迷惑をかける。
私とカジは顔を見合わせ、角を曲がった。
それに続いて、影はのこのこと路地に入って来る。

辺りに人の目が無いのに気付いたように、急にスピードが上がった。
背後で、手を伸ばした感覚がある。
それも、掴んだり触れようとするのではなく、殴るように。
私は無意識のうちに、鳥肌が立つのを感じた。


「そこまでだ」

ガッと、掴み掛かる音を聞いて振り向く。
角の死角から現れたカジが、不審者の手を掴んでいた。

「……」

「こいつ」

フードを被っている事に気付く。
どうりで顔が分からなかったわけだが、隙間から見える瞳に覚えは無い。
むしろ、顔を覗き込んで怯んだのはカジだった。

「なんだと……!?」

私はその声が気になった。
もしやこいつが主人なのか、それとも何か因縁があるのか。

だが、確認を取る前にカジの異変に気付く。

「カジ」

動きが止まった。
おかしい、と二人に歩み寄る。


私はその瞬間、自分でも驚く俊敏性で攻撃を繰り出した。
熱量を持った玉を、フードの男に打ち込む。
フードは直撃を受けたのにも関わらず、その場から軽やかに一歩引いた。

私は怒りを露にしつつ、崩れ落ちるカジを支えに入った。

「カジ!」

「……悪い夢だ。悪趣味すぎる」

そう言って、出血した腹を押さえる。
フード男に目をやると、明かりに照らされても真っ黒な手が見えた。

それが刃の形を取る。
まるで、霧のように。

「妖怪……?」

「そうか、妖怪か」

カジが苦笑して立ち上がる。
慌てて止めようとしたが、気にしない。

「妖怪だったら、何考えてもおかしくないな」

これが主人だというなら、お前は何だ。
少しばかり混乱しているせいか、喉元まで出た。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.45 )
日時: 2010/03/05 22:58
名前: かっぺい (ID: qrbmE5ew)

カジ その14



扉をぶち抜いて家に上がるのは、初めての経験だった。

「わぁぁああ!」

「け、慧音ごめん!」

「んぐ……妹紅、肘をどけてくれ」

カジの頬にめり込んでいる肘を持ち上げる。
慌てて背後に視線を移すと、既に影は敷居をまたいでいた。

「妹紅、アレは……?」

「説明は後で。悪いけど、カジ連れて逃げて!」

3mほどの所から、影に向かって炎玉を打ち込む。

慧音の叫びが聞こえたが、それどころではない。
……だが意に反して、玉は男に当たる前に消滅した。
何事かと目を見張ると、薄い霧状の影が目の前に広がる。
ふっと霧に触れた家具が、そこから削れていくのが見えた。

「ちょっ、速く逃げて。
 近くにいるとガチでやれない!」

「あ、いや、展開が早すぎて何が何だか……」

「俺も戦う」

そう言って、おろおろする慧音の横でカジが立ち上がる。
威勢はいいが、出血量を考えるとそれは無茶だ。

「バカ言ってないでさっさと逃げな!」

「傷は浅い。なんとかなる」

「どこが!?」

不意に男が手を突き出す。
それに合わせ、霧が渦を巻いて襲いかかってきた。
私は舌打ちをして、広げた掌に力を込める。


時効『月のいはさかの呪い』


半壊した校舎、カジが横に並ぶ。
正直やりすぎたとは感じたが、範囲がはっきりしない霧が相手だと仕方ない。
口をぽかんと開けた慧音に、頭を下げる。

「先生、明日は技術の授業ですか?」

「俺もご教授願いたいな。むしろ教師か?」

「……」

あっけからんとする私達とは対照的に、慧音は泣き出しそうだ。
もう夜も遅いと言うのに、外から野次馬の声が聞こえる。

とりあえずは、この程度で済んでよかった……と言うべきだろう。
私は胸を撫で下ろした。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.46 )
日時: 2010/03/06 16:48
名前: かっぺい (ID: qrbmE5ew)

カジ その15



人だかりができ始めていた。
涙目で状況説明を訴える慧音を置いて、私とカジは辺りを見渡す。

「今ので消えたかな?」

「凄いわざだった」

カジが感心したように呟くのを聞いて、ちょっと笑ってしまった。

「わざって、いいね」

「大技に見えたが」

「いやいや、まだ序の口。……気配はないね」

つまり、一安心と言うことだ。
溜め息を吐くついでに、遠くに医者の姿を見つける。
考え事をしているカジを引っ張った。

「ちょっと、そのケガ見てもらいな」

「ん、何故?」

「いや何故って君……」

そこで私はぎょっとする。
傷が塞がっていた。
口をぱくぱくさせると、カジは平然と口を開く。

「どこに怪我がある?」

「……腹が真っ赤に染まるほど……」

「俺の腹は、もともと真っ赤だ」

私は拍子抜けして苦笑した。
カジの黄色い部分は、胸だった。

「人騒がせなチャボだよ」

「チャボって何だ」


チャボって言うのはね、と口を開いた瞬間、カジが目を見開いた。
びくっとしてそちらを見ると、見覚えのある男が逃げ出すのが見える。

ゴシュジン?

カジが地面を蹴って駆け出す。
慌てて私も追いすがるが、早すぎて追いつけない。

人混みの中を、すり抜けるように走る。
ようやく追いついた時、カジは先程の裏路地にまで来ていた。
既にその闇には何も見えないが、明らかに気配が違う。

ざわざわと喧噪が追いかけてくる。
私はカジの背中に手を置いた。
気のせいだと思うが、カジは震えていた気がする。