二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.67 )
日時: 2010/05/04 17:25
名前: かっぺい (ID: S3B.uKn6)

たらこ・フータ その7



「異変?」

「そうなんです……お二人が怖がられてたのも、それが原因で」

大妖精の言葉を聞きながら、僕は空中に手を伸ばした。
何も無い所に壁がある。

「ってのも変な話だが」

「ね、不思議よね〜」

隣のたらこは、無遠慮に空間にパンチを入れている。
チルノも真似をするが、思いのほか硬かったらしく呻き声が出た。

この湖は、僕らが来たのと同時に隔離されてしまったらしい。
おおよそ湖から50mほど、そこで外界とは切れている。

「元々こうじゃなかったのか?」

「とんでもないです。本当なら行き来は自由で……」

「紅白が通ったりするもんね!」

とにかく、何かしらの異変と見て良さそうだ。
たらこを一瞥する。

「ま、挨拶はできたしね」

「ん、まあな」


たらこの予測に反して、妖精達の同調は早かった。
怯えていたのは間違いないが、僕らを頼ってくれたのかもしれない。
;既に日は沈んでおり、彼らとは別れていた。

「『寝床』も確保できたし、とりあえずは快適なんだが」

「大ちゃん、僕らに手伝えることがあったら言ってよ」

「ありがとうございます」

「……あたいは?」

「黙ってくれればオッケーだ」

頬を膨らませるチルノを見ながら、僕は『家』を見渡す。

巨大な氷の家……

お洒落じゃないか。
ちょっと笑ってしまった。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.68 )
日時: 2010/05/15 17:16
名前: かっぺい (ID: S3B.uKn6)

ただいまです。

たらこ・フータ その8



「さぁって、ほんじゃ確認だ。
 オツムが足りてねぇ奴もいることだしな」

「……オツムってなに?」

「さあ」


僕らは元の世界での『事故』でこの世界に飛ばされた。
正直、まだ半信半疑な所はあるが……

「おいおい、ココまで来たら信じる他ねぇだろ」

「だって非現実的だし」

「ジコって……何かあったの?」

「ん、まあな」


ここで出会ったのは、チルノと大ちゃん他妖精。
戦う必要は無いし、これからも説明してもらわなきゃならない。

「受け入れてもらえましたか?」

「……とりあえずは」

「悪ぃな、大。そいつは意地っ張りだからよ」


そして、僕らが訪れると同時に『異変』が発生した。
勿論、僕らがやった覚えは無い。
そんな事はできない。

「もしこの『異変』が幻想郷全体のモノなら、私達に出来る事はありません。
 けれど局地的なモノなら、切り離された部分に原因があります」

「つまり湖だね」

「おいチルノ、お前がやったんじゃねえのか?」

「あたいじゃないよ。狭くしたらつまんないし」


つまり、やる事は決まった。
元の世界に帰るにも、行動しなければ始まらないらしい。
大ちゃんによると、有望なのは外にあるジンジャとの事だ。

「ジンジャ?」

「そこが外を繋いでるらしいです。
 湖から出れたらご案内できるんですけど……」

「結局、事件解決が先だな」


一段落して、僕は氷の家から外に出る。
冷たい風が気持ちいい。
目を細めて、遠くを見渡す。

そこで、見慣れないものに目が止まった。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.69 )
日時: 2010/05/24 21:08
名前: かっぺい (ID: S3B.uKn6)

お久しぶりです

たらこ・フータ その9



黒っぽい人影が、少しずつこちらに向かって来ていた。
妖精にしては大きい。
ざわ、と背筋に悪寒が走った。

「た、たらこ」

「あ? どした?」

にゅっと首を出したたらこは、人影を見て目を細める。
誰だか識別できていない……
自分の目は、他の仲間より夜目が効いた。

「アレは」

言うより先に、たらこがびくりと震える。
背後のチルノ達をちらりと見て、僕に口をよせてくる。

「同じ顔だ」

「うん」

「本人だと思うか?」

「……」

既に人影は30mほどまで近づいていた。
俯いていた顔が、ふいと上がる。

その瞬間、僕は仰け反ってたらこの後ろに下がった。

目が合った。
虚ろだった。

「違う、偽物だ!」

「おうよ!」

慌てて大妖精とチルノが家から出てくる。
僕は二人と一緒に後ろに下がった。
直後、たらこが水を噴射する。

「ぶぉぉぉぉおおお!!」

「うわぁ! ゲ○? ゲ○なの!?」

「チルノちゃん!」

僕は一歩引いて影を観察する。
人の一人や二人は軽々吹き飛ばせるハイドロポンプだ。
少なくとも足を止めるくらいは……?

そこでぎょっとした。
影は背中を膨らませながら歩き続ける。
水は、布のような胴体を押しているだけだ。

「効いてない!」

「ばぁんだっべぇ!?」

放水をやめて、たらこも傍に付いた。
影は表情を変えぬまま、足を進める。
水が止まった瞬間、元通りになった胴から水が流れ落ちた。

「バケモンめ……」

「何アレ、敵なの?」

「……え? あ、ちょっと」

チルノが声を上げた。
それと同時に、僕の傍を歩いて前に出た。

「チルノちゃん!」

「おいバカガキ、下がれ」

「ふふん、みんな分かってないわね!」

「は?」



叫ぼうとして開けた口から、息が漏れた。
影は初めて、警戒したように立ち止まって宙を見る。

チルノは自信満々で浮いていた。
周りに、大量の玉を従えて。

「あたいはさいきょーなのよ?
 こんなヤツ、ぺしゃんこなんだから!」



氷符「アイシクルフォール」



降り注ぐ氷を、綺麗だと思えた事に驚く。
唖然とするたらこと大妖精の横で、僕は一人見入っていた。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.70 )
日時: 2010/05/30 20:13
名前: かっぺい (ID: S3B.uKn6)

たらこ・フータ その10



頭に氷がめり込んだ。
あ、と思った時には、既に吹っ飛んでいた。

「ん! 効いてるぞ!」

「だから言ったでしょ?」

得意顔でチルノが叫んだ。
影は30㎝くらいの氷塊の直撃を受けて、無様に吹っ飛ぶ。
本人がこれを見たらもの凄くガッカリするだろうな、と思った。

「頭が弱点なんですか?」

「チルノ、胴体にも撃ってみて!」

了解が帰って来て、チルノが腕を振り上げる。
さっきより小さめな氷が、胴体を抉るように貫いた。
背中から影が吹き出し、ぎょっとしつつも考える。

「違う、たらこじゃダメージにならないだけだ」

「私ぁ全力だったぞ!?」

「ふふふ……多分、あたいの『弾幕』が強いからなのよ!
 もう一発撃っちゃうもんね……」

「弾幕?」

あ、と大妖精が口を開く。

「たらこさんはどうやって水を?」

「あ? ……どうやって……」

「体質みたいなモノだよ。それが?」

大妖精は納得したように頷く。
この間も、チルノは攻撃の手を休めない。

「私達の世界には【スペルカード】と呼ばれるものがあります。
 それは決闘に使われるものなんですけど……」

「決闘」

「多分、お二人の世界とは全く違います。
 あの影さんとは、それじゃないと戦えないのかも」


「これだけやっても何でやられないのー!?」

話は途中で切れた。
チルノの方を向くと、焦りが顔に表れている。

「どうした?」

「アレ」

いつの間にか、影とチルノの距離が10mほど縮まっていた。
影を見ると、穴の開いた箇所をすぐに周りの影で埋める……
効いてはいる、効いているのだが

「マズい」

「チルノちゃん!」


射程に捉えた後の影は素早かった。
数歩でチルノに接近し、空に向かって手を突き出す。

伸びた腕は刃に変わり、胸を抉った。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.71 )
日時: 2010/06/06 16:25
名前: かっぺい (ID: S3B.uKn6)

ここら辺は以前書いたものです。ちょっと乱文かも……

たらこ・フータ その11



翼は叫びを追い越して空を斬る。

相手に動きを取らせるより速く、僕は少女を連れ去った。
それと同時、憤怒の形相でたらこが影を殴りつける。

「チルノちゃん!」

「うっぁ……痛ぃ……」

「喋っちゃダメだ。すぐに止血を」

がっ、という音とともに、たらこが吹き飛ばされた。
脇を掠めるように地面に叩き付けられる。
大妖精を向こうに、影を挟む形になった。

「たらこ!」

「クソがぁ、やっぱ通じねぇぞ!」

「そっちはいいから、チルノの止血をしてくれよ!」

怒り心頭のたらこに声を荒げる。
見た限りでは、かなり傷は深いはずだ。
急がなければ……

「大ちゃんが」

「え?」

チルノが呟いた。
そこで気付く、影が大妖精を狙っていることに。
大妖精自身はこちらに注目していて気付いていなかった。

「しまっ……大、逃げろ!」

既に距離は10mも無い。
たらこが叫んだ時には、既に影は腕を振り上げていた。

一歩が踏み出され、刃が大ちゃんを襲う。

「あ……」



「やめてーッ!!」

叫んだのは、チルノだった。
影の動きが止まった。
それと同時に、抱きかかえている腕が急に重くなる。

「え」

自分の腕を見てぎょっとする。
凍り付いていた。
チルノに目を向ける。

「やめてよ。ねぇ、やめてよ!」

影が、動きを止めたまま僕らに向き直った。
たらこが唖然としながら、チルノを凝視する。
向こうの大妖精も同じように固まっているらしい。

「それ以上、大ちゃんに近寄らないで」

「……」

「聞いてるの!?」

怒りの形相に呆気にとられつつも、僕ははっとした。
彼女の胸の傷が、無い。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.72 )
日時: 2010/06/13 17:16
名前: かっぺい (ID: S3B.uKn6)

たらこ・フータ その12



影がゆっくりと、こちらに向かって歩いてくる。
再びチルノを標的にしたのか、それとも『何か』を感じ取ったのか。

「行って」

「え?」

「大ちゃんのとこ」

チルノは影から目を離さない。
たらこに促され、影を中心に円を描くように、大妖精のもとへ近寄る。
だが、既に影は僕らの事を見もしなかった。

「くそっ! 力があればあんな野郎……」

「違う。チルノが狙われているのは、唯一『闘える』からだよ。
 僕らじゃ勝負にもならない」

「……それがムカつくんだよ」

大妖精の前に立つ。
そこで気付いたが、彼女は僅かに震えていた。

「……怖かった?」

「……」

僕が聞くと、大妖精はぎくりとして俯く。
ふと、初めて会ったときを思い出した。
顔を強張らせたまま、チルノの方に視線を戻す。

既に影はチルノのかなり近くまで来ていた。
チルノが接近を許したのか、攻撃しない理由があるのか。

「フータ」

突然たらこが声を掛けて来た。
大妖精を一瞥して、耳を傾ける。

「何だよ」

「……お前の気持ちは分からんでも無い。
 だが、大がそう思うのは自然だ」

「自然じゃないよ」

ぐっと、手に力が入る。
あの目は……

その瞬間、チルノが手を挙げた。
それに合わせて影も突進する。
さっきの攻撃とは段違いに、空気が凍り付くのを感じた。
離れているのに、ここまで冷気が覆いかぶさる。

「これって」

「あたい怒っちゃったから! 二人で大ちゃん守って!」

「そういうことかよ……任せろクソガキ!」

たらこが前に出て、拳を構える。
僕もそれに続いた。

「お二人とも」

「……その目やめてよ」

「え?」

僕はついに、嫌悪感を隠せなくなった。
ちらと振り向いて、指を指す。

大妖精の目は恐怖で震えていた。
それが命の危機に対してなのか、仲間の怒りに対してなのかは判断がつかない。
だがもし後者なら、僕は彼女を認める事が出来ない。

「おいフータ」

「いいだろ、守ってあげるんだし」

溜め息を吐いて視線を戻す。

既に冷気は、チルノの頭上で形を作っていた。
巨大な氷塊が影に向かって発射される。

……今度は、綺麗だと思えなかった。



凍符「パーフェクトフリーズ」

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.73 )
日時: 2010/06/25 20:07
名前: かっぺい (ID: S3B.uKn6)

そろそろこいつらも一段落の兆し。時間が欲しいなぁ……

たらこ・フータ その13



勝利すると思っていた。
先程の攻撃で弱るくらいなら、この一撃でカタがつくと。

だが違った。

影は降り注ぐ氷塊を物ともせずに接近する。
こちらにも降ってくる氷を防ぐ最中、チルノの顔に驚愕が浮かんだ。

「う……!?」

「チルノ下がれ!」

攻撃を中断して、チルノが一歩退く。
その瞬間、居た場所を影刃が切り裂いた。

「チルノちゃん!」

「チルノ!」

氷が止み、僕たちは援護に駆け出した。
攻撃は出来ないまでも、まだ引きつける事くらいはできるはずだ。

「くぬやろぉぉ!!」

15mほどの地点で、たらこがハイドロポンプを放つ。



その瞬間、僕は捉えた。

影に当たる直前、現れた『すきま』。
暗闇から覗く幾多の目の中、その空間が激流を飲み込んだ。

アレは何だ、歩調が緩む。
何の力だ、視界が歪む。
ひょっとして、さっきまでのチルノの攻撃も……

影は無表情のまま手を挙げる。
小さく開かれた『すきま』から、たらこの水砲が吹き出す。
……チルノに向けて。

「うわ!」

「!? 逸らされたのか!?」

違う。
僕は地面を蹴り、速度を速める。
チルノに向けて発射された水は、彼女が手をかざすと同時に凍り付いた。
だが、その瞬間生まれた隙に影が喰らい付く。

間に合わない……!

「チルノちゃん!!」



「大……ちゃん」

「ううう……」

影の動きは止まっている。
振り下ろされた刃の前、立ち塞がるように大妖精が立っていた。
切れるかどうか、ギリギリの所で。

「え」

「テレポート持ちだったのか!?」

唖然としてブレーキをかけた。
僕は抜かされた覚えが無い。
大妖精がテレポートらしいもの、を使えるのは間違いない。

僕とは逆にたらこはスピードを上げた。
歓声を上げながら、影に拳を振るう。
影は怯みはしなかったが、ゆっくりとこちらを向いた。

「げ、マズい。
 ……いい加減しゃんとしろフータ!」

違う。
僕は口に出さず否定した。
驚きっぱなしなのは、抜かされたからじゃない。

そんなことじゃない。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.74 )
日時: 2010/06/25 15:31
名前: かっぺい (ID: S3B.uKn6)

ちょっと時間ができたので。一個だけ〜

たらこ・フータ その14



さっき僕は、大妖精が怯える理由を二つ考えた。
自分が死ぬかもしれない恐怖
暴走した仲間への恐怖

自分自身としては、後者しか有り得ないと思っていた。
彼女はチルノを信頼しきれていない、そう思っていた。

だが、大ちゃんは目の前でチルノを庇った。

斬られたら痛いだろうし、ひょっとしてそのまま死ぬかもしれない。
でも、彼女は立ち塞がった。

その目に迷いは無い。
恐れも消えていた。
彼女の信頼は、嘘っぱちではなかった。

自分の中から、何か熱いものが溢れ出すのを感じる。



竜爪「リオスラッシュ」



振り下ろした爪に、確かな手応えがあった。
たらこの驚いた顔、大ちゃんとチルノのぽかんとした顔。
周りの景色が、一気に渦を巻いて僕を包み込む。

影が混乱したように首を震わせた。

「あぁぁぁあああ!!」

渾身の力を込めて腕を振るう。
布を引き裂くような感触と共に、影が大きく放り出される。

「フータお前」

「凄いフータ!」

歓喜の声を背に、吹き飛ぶ影へ追い打ちをかける。
爪に込められた力はまだ衰えていない。
これでケリをつける……!

地面に叩き付けられた影は、虚ろな表情で僕を見た。



瞬間、再び『すきま』が現れた。
爪の軌道ではなく、影の下に。

僕はぎょっとして腕を引っ込める。
無表情のまま、影は足下に広がる空間へと呑み込まれた。

ジッパーのように『すきま』が閉じる。
唖然として後に残された僕は、背後でたらこの叫びを聞いた。

Re: 【東方】うちのメンバーが幻想入り【ポケモン】 ( No.75 )
日時: 2010/06/25 19:59
名前: かっぺい (ID: S3B.uKn6)

一個かと思ったけどまだ時間ありました。
今日中にストック出し切ります。それで一段落かなぁ……

たらこ・フータ その15



走馬灯と言うのは、死ぬ前じゃなくても流れるらしい。
僕は振り向いた瞬間、ふと昔の事を思い出す。

少し昔の、背中が見えた。
僕らからすればそれ程大きくはなく、だが、
自信と信念を背負った後ろ姿。

あぁ、よかった。

心底から思った。
これで全て大丈夫だと、そう思った。



「締め出しやがったな!」

その声は荒々しく、空に向かって放られた。
男の眼前が歪んでいる。
彼が伸ばした手の先で、先程も見た『すきま』が消えた。

そこから出てきたのか。
え、なんで?

僕はゆっくり歩き始める。
唖然とするチルノと大ちゃんと、たらこの方へ。
男はそのすぐ傍で叫んでいた。

「勝手なことしやがって……!自分でケリ付けるっての!」

男は俯き、地面を拳で叩いた。
ぱしゃんという音に、少し離れて大ちゃんがびくりとする。

なんで怒ってんの?
っていうか、現状把握できてない?

「とにかく合流しねぇとやばいな……っていうかここは」

男は、そこでようやく、辺りを見た。

「あ」

最初に僕と目があった。
ちょっ……
僕は慌てて口を開いた。でも声を出すより早く、

「よぉ、フータ」

男は笑った。



夜は更けている。
暗い湖に、ざぁと風が吹いた。