二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ポケスペ†君の傍に†2話UP ( No.21 )
日時: 2010/04/18 01:35
名前: 天月 ◆MoYaKs53do (ID: ixDFu4/i)

番外編 死神と少女
*死神パロディ


—死神。それは人の死の期限を知る者、というより人の死が視える者…と言えばいいのだろう。彼は
—彼は死神の中でも異端な者でその理由は

一つ、死神の必須道具である鎌を持っていないこと
二つ…人間に恋をした。という事だ


「ユウトはさ、死神さんでしょ?」
「…そうだな」
「じゃあ、何で私は死なないのかな」

そういう君の瞳は寂しげに揺れていた
彼女は今でこそ生きているが、もう少しで果ててしまう存在でもあった
ふと、彼女の手首に目線を向けると、そこには濁った白い包帯が巻かれていた
彼女は病気でもなんでもない。けど心の病気にかかっていた
それは俺と一緒で、所謂「仲間はずれ」なのだ

「死んだら、死ねたら…楽になれるのに、もう苦しい目に遭わなくて済むのに。何で…?」

そう訊く君の瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた
…泣くなら、そんな事聞かないでよ
でもそんな事は言えない。だから俺は皮肉をこめて

「ま、死にたくないって思ってる間は死にたくても死ねないさ
………俺も、もう死にたいけど、死ねないんだよ」
「どうして?」
「…俺が死神なの知ってるでしょ?」

うん、と頷くのを確認して話を続けた

「死神と人間とじゃ生きれる年がかなり違うらしくてね
……死神は何百年も生きられるんだ。その代わり成長は遅いけど」
「……じゃぁユウトは本当は何歳?」
「さぁ、もうそんなのすっかり忘れちゃったよ。
……コッチで言うなら……せめて15歳、かな」

ふぅん。と素っ気無い返事を返した後再び訊いてきた
この子は好奇心だけは旺盛で、不思議と思ったことは何でも訊きたがるらしい


「自分で死ぬのは許されないの?」


それは、それは君が最初に俺と逢った時、君がしようとしていた行為
一体どれ程の哀しみを心に溜めていたのかは判らない
でも、ソレほど苦しんでいたのは確かだった
ここ…病院、に来てからも君はずっと苦しんでいた
今の今まで、親さえ来なかった
そして、その結果が手首の包帯の下にあるモノだ


「…よくわかんないけど、それは出来そうに無いんだ
やった奴もいないし」
「そっか………。私、さ」

突然俯いた君を見る。綺麗で調度良い長さの茶色い髪で顔は見えなかったけど、確かに落ち込んでいた

「どうしてこんな世の中に生まれてきたんだろう、って何時も思ってた
生きてても、誰も私を認めてくれない…
ならいっそ、死ねば良い。そう思った時にユウトが表れた
その格好をみたらさ、あぁ。もう死ぬんだ。やっと解放されるんだ。って思った
……けど、死んでない。如何してなんだろうって思ったら、いつの間にか手首を切ってた
両親だって来ない。何時もドアをノックしてくるのはユウトか医者だけ
……医者だってこんな患者相手にしたくないような目で見てるし」

目でわかるのか、感情が
……まぁ、ソレは少し俺にも判った
あの医者は確かに君をそんな風に見ていたな

「でもね、ユウトだけは違った。こんな風に私と話しても嫌な顔しないし
それ以前に、私を汚い目で見ないもん」

と、俯いた顔をあげて寂しく笑った
汚い。というより俺には普通に綺麗だと思う
茶色の髪も、銀の様で蒼の混じった瞳もその華奢な躰も

「……ユウナは汚くなんか無い」
「え?」
「ユウナを汚いって言う奴の方がよっぽど汚いよ」

これは心の底から思っているそれを聞いた君は驚いて瞳を見開いていた
そしてその後、一筋の涙が頬を伝った
それは幾度となく流れてて、ついには声をあげて泣いていた
別に、今の一言で泣いた。とは思わない
でも今の一言で今まで溜めていたものが溢れたんだろう
気づけば、俺は君を抱きしめていた

「え、ちょっと…」
「泣いてろ。俺は何も見てない」
「……っユウト…」
「何?」


「……アリガトウ」


ありがとう。意味は感謝…だったっけ。
俺は感謝されるような事は一切していないがまぁいっか


「どーいたしまして。…でさ、ユウナは死にたい?」


んー……。と俺の腕の中で考える声がする
答えは——————



「もう少しだけ生きてみる。でももう少ししたら……
ユウトが私を殺してね?」



俺がか…………。まぁ、他の穢れた奴らにユウナが殺されるよりは
俺が殺した方が数万倍マシだよな……


「あぁ、じゃぁそのもう少しまで一緒に居てやるよ」
「うん、ありがと」


まぁ、そのもう少しは一年後なのか十年後、二十年後かは判らない
要するに


 ずっと傍にいてやるよ、俺のたった一人の想い人


終わり