二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ポケスペ†君の傍に†過去話UP ( No.49 )
- 日時: 2010/05/02 09:35
- 名前: 天月 ◆MoYaKs53do (ID: ixDFu4/i)
#12 瞬く夢
どうせ、どうせ俺はただの「道具」でしかなかったんだ
小さい頃からずっと、俺は俺を攻め続けて生きてきた
俺が生まれてきたから、母が悲しんだ、父が怒った
俺なんて、生まれなきゃ良かったのに。そう、何時だって心の中で叫んでいた
自信過剰な態度も、全て、弱さを隠すための虚勢
でも、さ…
『生まれて悪い命なんてさ、無いんだ
こうして俺達が生まれてきたら今の俺達がある
俺はさ、“護られた命”だから、それがよく判るんだ』
最初は、「どうして、お前はそう思えるんだ」って思った
でも反論は出来なかった。あいつは命の重さや、尊さ、大切さが一番判ってる気がするから
だから、アイツは命を“護る”能力を与えられたんだと思う
それに、アイツはたまに、凄く、辛そうな顔をしていた
しかも、その視線の先には、仲の良さそうな家族
アイツ等二人は俺と同じように自分の過去を話さない
でもアイツ等は素直だった。虚勢なんて微塵も感じられない、それくらい二人は強かった
その理由は、お互いが居るから。お互いが生きているからこその強さなんだと、知った
アイツ等以外の二人も、お互いで支えあっていた
……俺には、誰も居なかった
だから俺は、強がった、虚勢を張った、誰よりも
「さて…そろそろウバメに着きますね」
「あぁ………」
「……顔色が悪いですね、どうかしたんですか?」
心配なんて微塵もしてないくせに、よく言えるよ
まぁ、自分の欲しか貫けない奴に頼ってる俺もどうかと思うけど
「ウバメの森。別名迷い森、そのとおり、迷いやすい森として伝えられています…知っていますか」
「ったりめーだろ」
あの4年前の最終決戦の場所でもあるんだから
覚えていないとおかしいだろ
「ふっ、まぁそんな事はどうでも良くなりましたね
森で迷う必要も、無いようです」
「は…?————————っ!?」
俯いてたから、判らなかった
でも見てしまった、どうして。ねぇなんで
お前は、すぐに俺を見つけた?
「ゴー、ルド………? な、んで、ロケット団なんかと、居るのよ……」
答えられなかった。否答えたくなかった
前に、アイツはダイヤモンドそのもののような存在だと、誰かが言った
綺麗で、美しくて、優しくて、強くて。
でも、脆くて、儚くて、繊細で。
「ねぇ、ゴールド、答えてよ…!
なんで、どうし————がっ!?」
思考が追いつかなかった
俺の隣にいる奴が、アイツを…ユウナを、傷つけた
「なっ、テメェ!!」
「気絶させただけですよ。問題ないでしょう?」
「っ………」
嗚呼、俺は如何してアイツのように…ユウトの様に、大切なモノを護るためだけに戦えないのだろう
主人を傷つけられた、という事実から
忠誠心がバカみたいにあるブラッキー…ルナは完全に威嚇していた
でも紅い瞳が捉えているのは俺じゃない
ルナは判っていた。俺が好きでコイツと一緒に居るわけじゃないと
だから、俺を敵視していない
でも、非情なアイツのことだ、ポケモンさえ構わず傷つけるだろう
それは、嫌だ
「ルナ、大丈夫、ユウナは、大丈夫だから
……お前だけでも、逃げてくれ。な?」
そう言うと、苦痛にも似た鳴声があがる
俺にはポケモンの言葉は判らない。でもきっと今は
『逃げるなんて、嫌だ』と、言ったのだろう
ホント、ルナは主人に忠実だった
どんな危険に冒されようと、主人の後を着いて行っていた
どこからその信頼が来るのだろう、いつも思ってた
でも、だからこそ、お前には無事で居て欲しい
俺はルナに近寄って、俺とルナしか聞こえない声で言った
「ユウナは死なせない。俺が、何とかしてやるから
………後、こいつ等の野望を討った後ユウナは逃がす
でも、俺は戻らないかもしれないから。そう伝えて」
ルナは一瞬考え込んで、頷いた
俺を信じているから、なのかもしれない
ありがとう。と言って俺は踵を返した
ルナもまた、走り出した。音が聞こえた
—ごめんな、と心の中でつぶやいて
続く