二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ−限られた時間で、限られた命で、限られた愛を− ( No.107 )
日時: 2010/05/22 11:17
名前: 亮 (ID: cX1qhkgn)




愛に生き、愛に死す。










「・・・——————————って、かっこええやろ?」










彼は、愛、を貫きました。
どんなに苦しかったでしょう、
どんなに辛かったでしょう、
どんなに痛かったでしょう、
どんなに寂しかったでしょう。

彼は、愛、を守りました。

変わらぬ日々を過ごした、あの時と同じ言葉を呟いて。













「助けるで。 せやから安心しや」














あの声は、いつ、聞こえたのでしょう。





あと、3時間。

それが過ぎれば、この合同合宿は終わる。
この地獄が、終わる。
そして。

弥の、睡眠薬が切れる頃だ。


「カンニンな、金ちゃん」(白石)


白石の包帯に纏われた左腕に、いつもの白さはなく。
ただただ、赤く、赤く、赤く。 
紅に染まっている。
悲しい、赤色に。

「あと、」(白石)

腹部から、とどめなく血が流れる。
うまく息が出来ない、うまく声が出ない。
思うように、身体が動かない。

「あ、と、3,にん」(白石)


助けるから、助けるから、助けるから。


「白、石」(手塚)
「てづ、か、クン、・・・」(白石)
「大丈夫か?! ヒドイ怪我だ、何をしている!」(手塚)











ドクン、










心臓が
1度大きく脈を打った。


「こ、れで、残ってんのは、2人」(白石)


血の海が広がる。
相手の血と自分の血が、交わる。

「カハッ・・・!」(白石)

吐血。

「ゲホ、ゲホッ、う、」(白石)

吐血。
手も、紅。
赤く、赤く。

「・・・ッく、」(白石)

立ちくらみ。
これまで、この合宿のほとんどの人間を1人で殺してきた。
必ずしも、無抵抗なわけがない。
反撃を受け、時折、向こうから仕掛けてくる。
繰り返すウチに、彼の体力と精神力には限界が来ていた。


それでも、



「死ね、白石」(真田)



強者、ばっかやなぁ。

虚ろな目で、真田を見つめる。


それでも、


「まも、る、から」(白石)


死ねへんねや。
愛、しとるヤツがおるから。
大切な、大切な、人やねん。
せやから、アイツを、アイツを助けるまで———





愛に生き、愛に死す。





それが、使命。




『あ、発見しました、BR優勝者です!』
『こちらです、今回の優勝者は—————————————』


『今回の優勝者は、女子生徒です! 四天宝寺中学校、越智弥さんです!』



目を覚ますと、別世界だった。



『優勝しましたよ! おめでとうございます!』
『今の心境は?』
『服、キレイですね? 身を隠していたんですか?』

幾つものマイクが、弥を囲む。
状況は、理解できない。
記憶が、無いんだ。

どうして、此処にいるんだっけ?
いつ、こんなとこに隠れたの?
なんで、眠ってしまったの?

回りは、血の海。



「・・・く、ら」(弥)



その姿を見て、一瞬で理解する。

「蔵?!」(弥)

マスコミをかき分け、押しよけ、彼の元へ駆け寄る。
祈りながら。
ただただ、祈りながら。


生きていますように——、と。


「蔵、蔵!」(弥)


カメラは、こちらを向く。
かまわず、その肩を抱いた。

「蔵?、ねェ、蔵?」(弥)

抱きしめれば、紅に手が染まる。
まだ、死からの時間はそう経っていない。
ほら、温かい。

綺麗な顔。
温かい身体。
でも。
血だらけ。
至る所が、紅に染まっている。

———大きな、傷跡。

首、に。


彼の、苦しむ姿が、浮かぶ。
ふらつく足で、最期の力を振り絞り、ここまで来てくれた。
彼の、姿。


「蔵ぁぁぁッ」(弥)


弥は、叫びながら抱きしめる。
だんだん、少しずつ、でも確実に。
彼の体温は、無くなっていく。

「蔵、蔵、蔵!」(弥)

何度呼んでも、何度抱きしめても、何度揺すっても。
目を覚ますことはない。

『優勝者のカレシ、だったのでしょうか。 名前を叫び、抱き寄せています』

レポーターの実況が遠くで聞こえた。
彼女の耳に届くのは、記憶の中の、白石の声。


「助けるで、せやから待っとれや」


笑って、笑って、白石がいった言葉。
最後の、記憶。
この言葉に忠実に、彼は戦ったんだ。
誰も傷つけたくないのに、誰とも争いたくないのに。
ただ、愛、を——— 

「蔵・・・」(弥)

馬鹿みたいにマジメな彼は、自分の言ったコトを曲げることはなく。
どんなに苦しくても、愛を。

「馬鹿」(弥)

溢れるほどの、大きな愛を、弥は全身に感じる。
白石からの、愛を。
彼が貫き通した、彼の生き様を。


感じるよ。


何のために、蔵は人を殺したんだろう。
そんなのは、カンタンなコトだ。
ただ、私を守るため。
私という、自分の愛を守るために彼は、多くの人を殺めた。


「ありがとう、ありがとう、ありが、とう」(弥)


涙が、止まらない。
もう1度、物言わぬ彼を抱きしめる。
今度は、冷たかった。










「愛に生き愛に死すって、かっこええやろ?」










笑って、そう言ってた。
充分だよ。
かっこいいよ。
あとは、私が貫くから。























私は、蔵の愛そのもの。
私が、蔵の愛の証。
ここに生きている、それだけで、蔵の愛が証明されるんだ。

生き続けることで、証明される。

愛に生き愛に死んだ、彼の存在が。