二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: いろんな愛のカタチ−スキだから、だからこそ− ( No.126 )
- 日時: 2010/07/05 20:29
- 名前: 亮 (ID: TtH9.zpr)
これが、アナタに託す、私の最期の言葉です。
「リサ、こっちだ。 そこだと、他の奴らから狙われるぞ」
隼人がリサに忠告しながら、「こっちへ来い」と手招きする。
リサは頷いた。
「ん。 ありがと」(リサ)
「そー思うなら、さっきから1人でウロウロすんな」(隼人)
隼人が、半ば呆れながらリサに言う。
リサは笑う。
「あは、ごめん。 外の様子とかって、気になるでしょ?」(リサ)
此処は島内のとある小屋。
小さくて、1人、寝ころべるかどうかも定かではない。
窓も高い位置にあり、この小屋のある区域が禁止エリアにならない限りは、最高の隠れ家だ。
「・・・ま、そうなんだけどさ。 アイツ見つかったら終わり、だろ?」(隼人)
隼人は、若干カオを曇らせながら呟く。
リサからも、それまで浮かべていた笑みが消えた。
「そう、だね」(リサ)
息が、つまりそう——
隼人とリサは、2人きりの空気の中で、10分ほど前の出来事を思い出していた。
「あ、不二くんだ」(リサ)
青春学園の3年であるリサは、同じクラスの隼人と再会し、森の中を移動してた。
そんな時、1人の同級生と出会う。
「え?」(隼人)
隼人が振り向くと同時に、リサは少年の方に移動を始める。
「あ、オイ!」(隼人)
隼人の位置からは不二の姿が見えなく、リサが当ても無く闇雲に動いているように見えた。
冷や汗が背中を流れ、勝手に動くリサを、急いで追いかけた。
——追いついたとき、彼の体中に、冷や汗も凍るような、悪寒が駈け巡るのも知らずに。
「不、二く、ん」(リサ)
目の前に居るのは、誰?
「不二くん、だよね?」(リサ)
頭では分かり切っている当たり前のコトを、リサは思わず訊いてしまう。
目の前にいる、彼は笑った。
「そうだよ? リサ、どうしたの?」(不二)
語りかけられた、それだけなのに。
どうしようもなく、コワイ。
だって、だってね。
「何を、持って、るの?」(リサ)
それは、なに?
彼は、再び笑う。
さっきとは別の“冷たい微笑み”で。
「コレのこと? これはね、越前の血が付いた包丁」(不二)
「え?」(リサ)
またもや、思わず訊き返す。
「見てご覧。 ほら、越前らしいよね。 涙1つ流さなかったよ。 コレを刺されてもさ」(不二)
「リョーマ、くん、」(リサ)
嘘、でしょう?
「“人は殺さない”って、意志を貫いたよ。 でもね、そういう人は殺されるだけなんだよ」(不二)
狂ってる。
「リサも、越前と同じなのかな?」(不二)
その問いに、リサは肯定も否定もしなかった。
「・・・キミが否定しても、僕がキミを殺すことに何も変わりはないんだけどね」(不二)
嫌だ。
こんな人に、こんな殺され方。
嫌だ。
リサの頭に、瞬時に浮かんだのは、隼人のカオ。
あの人を、あの人を守るための命だ、と。
そう誓ったのに。
こんな馬鹿みたいな考えの人に、こんなにあっさり。
嫌だ!
「嫌、だよ」(リサ)
「関係ないよ」(不二)
「い、や・・・」(リサ)
リサの背中に、土の壁が当たる。
行き止まりだ。
不二は、ゆっくりと喉に包丁を突きつける。
そして、笑う。
「サヨナラ」(不二)
刹那。
脳裏に何度も浮かんだ彼の声。
「何してんだよ! 不二!」(隼人)
男の声にしては高い隼人の声が、叫び声となってリサに届く。
リサも不二も、隼人のほうへと振り向く。
「隼人も、いたんだね」(不二)
隼人の目に、包丁が映る。
「まさか、リョーマも、不二が・・・」(隼人)
「だったら、どうだって言うの?」(不二)
「・・・なッ」(隼人)
瞬時に、身体が悟る。
逃げなければ死ぬ、と。
戦うのは、得策じゃない。
隼人は、掴んでいた石を、不二に向かって投げた。
「!」(不二)
刹那、不二の手がリサの喉元から離れる。
そのあと、どうやって此処まで逃げてきたのか。
記憶が定かではない。
「・・・リョーマくん、泣かなかったんだね」(リサ)
「え?」(隼人)
「リョーマくんね、不二くんに刺されても、涙流さなかったって、」(リサ)
切なさいっぱいに、リサが語る。
「この状況で、意志を貫くって凄いよね」(リサ)
私も、そうで有りたい。
「そうだな」(隼人)
隼人も、同じコトを思いながら頷いた。
この時からだろうか、それまで無かった不安と嫌な予感が、隼人の脳裏にこびりついた。
——どれくらい、経っただろうか。
リサは、少しだけあいたカーテンの隙間から、外の様子を見た。
無論、隼人に怒られたが。
外には不二の姿は無く、もう諦めただろうと話した。
「大丈夫、かな?」(リサ)
「この島に“大丈夫”って言葉は、存在しないと思うよ」(隼人)
隼人は呆れた口調で言う。
『放送をする』
「「!」」
雑音と共に、低い男の声がスピーカーから響く。
耳を澄ませた。
仲間達の安否を確認できる手段は、他に無い。
『青春学園、越前リョーマ、大石秀一郎、菊丸英二・・・』
聞こえるのは、仲間の名前ばかり。
このBRには、三校も参加させられているのに。
狭い小屋の、ドアがゆっくりと開く。
開けたのは、リサでも隼人でもなかった。
『、河村隆、桃城武——・・・』
「皆、ちゃんと死んだみたいだね」
そこに立つのは、かつての仲間。
今は——、悪魔でしかない。
「キミたちを探している間に、会ったんだ。 皆」(不二)
リサと隼人は、声も出ない。
「急いで殺したから、不安だったけど」(不二)
その笑みは、もう、人じゃない。
「不二・・・」(隼人)
隼人は、懇親の力を込めて睨む。
「最低だな、お前・・・・!」(隼人)
「そんなコトは最初から分かってるよ」(不二)
「それが、最低だって言ってんだよ」(隼人)
「ごめんね」(不二)
リサは、これほどまでに冷たい謝罪を、今までに訊いたことが無かった。
これほどまでに、人を殺したい、と思ったことも。
無かった。
「隼人」(リサ)
「何だよ、リサ」(隼人)
その手で、しっかり隼人のユニフォームを掴む。
怒りに震えるココロを抑えながら、掴んだ。
反対の右手では、怒りを抑えず“ナイフ”を握った。
「大好き、」(リサ)
「は?」(隼人)
「大好き」(リサ)
「リサ?」(隼人)
リサは、悲しそうな瞳をしていた。
「サヨナラ。 ごめんね。 でも、大好きだよ」(リサ)
隼人の頭は、状況を理解するのに時間が掛かった。
「リ、サ?」(隼人)
目の前は血の海。
狭い部屋に、血が広がる。
血のにおいが、立ちこめる。
——2人分、の。
「リサ・・・・?」(隼人)
返事は、無い。
状況が、少しずつ頭に入り込んでくる。
リサが、不二に向かってナイフを向け、走っていった。
不二はそれに対して、自分の包丁を向けた。
2人とも、逃げなかった。
だから、2人とも。
目の前で。
死んだ。
“大好き”
リサは、言葉と、行動で、それを力一杯表現して。
死んだ。
Last Voice
キミから僕へ。
生きて、という願いが“大好き” という言葉となって、託すされた。
でも、無理なんだ。
キミ無しじゃ、無理だよ。
キミが1番、それを分かってる癖に。
涙が一粒、流れた。
『禁止エリアは———・・・A−12、C−8・・・』
ここは、禁止エリアだ。
『追加だ。 青春学園、不二周助、織原リサ——・・・中務隼人』
ごめん、リサ。
今、僕も、そっちへ。