二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: いろんな愛のカタチ−スキだから、だからこそ− 【リク受付中】 ( No.134 )
日時: 2010/05/24 17:39
名前: 亮 (ID: cX1qhkgn)





おかしいな。
何でかな。

涙が出てきて、止まらなくて、それを拭ってくれる人もいない。
それが、たまらなく寂しいよ。
いつもなら、
「そんなの必要無い」、そう言って払い除け、邪険に扱うのに。

何でかな。
どうしてかな。

寂しいよ。 コワイよ。 
ねェ、誰か。
誰か、誰か、誰か———







ココロはどしゃぶり。







そんななか、彼方が傘を差してくれるのを、待ってる。



暗い雲に空は覆われ、それまで森の深くにまで届いていたヒカリが突然消えた。

「嘘、雨・・・?」

雨粒が頬に落ちる。
俄雨だろうか、急に強まった。

「冷たい」

どうしようもなく、それは冷たかった。
ココロのように。

体温を、容赦なく奪う、雨。
当たりを見渡しても、小屋1つ無かった。
配布されたデイナックの中に、雨具は無い。

「・・・役に立たない。 ダメじゃん、コレ」

誰に言うわけでもなく、文句を吐き捨てた。
実際、何の役にも立ってない。
武器を使うつもりなんてさらさらないが、
入っていたのがテニスボールでは、なんという皮肉だろう、と文句の1つも言いたくなる。

輪廻は、側にあった木の下に入った。
小柄な輪廻は、楽に雨宿りすることが出来た。

「はぁー・・・、いい加減にして欲しいよ」(輪廻)

座り込んで落ち着くと、今度は頭でいろんなコトを考えてしまう。
脳裏に、今までのコトが1つずつ、浮かんでは消えていく。

「唖季栖、悲しむ、かな」(輪廻)

弟のことを、ふと思い出す。
このBRに、氷帝学園は不参加だ。
最後まで、自分が付いて行けないコトを悔やみ、姉の心配をしていた弟。
あんなに優しい子が、巻き込まれなくて良かった。

「ホントに、良かっ、た」(輪廻)

良かった。
本当に、良かった。
死んでいくのは、私だけで十分よ。

「でも、」(輪廻)

でもね、寂しいよ。 
私は1人で、どうすれば良いの?

放送で呼ばれる名前は、会ったことのある人ばかり。
話したことのある人ばかり。
ついさっきまで、笑っていた人ばかりなの。

輪廻の目に、涙が光る。
体操座りをした腕の中に、顔を埋めた。


どうすれば良いの?




誰か、誰か、誰か。
側にいて、此処にいて、誰も何処へも行かないで。















ねェ、裕太————















刹那、雨で冷えた体は、温かいモノに包まれた。

懐かしい、懐かしい、安心できる。
知ってる、私のよく知ってる、温もり。
カオを見なくても、誰だか分かる。


「裕、太——?」(輪廻)


気がつけば、名前を呼んでいた。

「良かった、輪廻。 やっと見つけた」(裕太)

彼の腕の中は、何処よりも暖かい。
こみ上げてくる涙は、止まらない。
カオを自分の腕に埋めたまま、輪廻は問いかけた。



「裕太は、何処へも、行かない?」(輪廻)



カオを見なくても、表情が分かった。
不安と、恐怖と、寂しさと、喪失感と——。
きっと、俺たち似たようなカオしてるよ。


その質問、こっちがしてェくらいだよ。 輪廻。
兄貴がいない今、俺には——



「輪廻のいるところに、いつでもいるよ」(裕太)



お前しか、いないんだから。

裕太の言葉を、背中で聞く輪廻。
それに少々、苛立ちを感じ始める。

「・・・いい加減、こっち見ろよ」(裕太)

輪廻はただ、肩をふるわせるだけ。

「輪廻、」(裕太)

裕太が、そこまで言ったとき雑音と共に、太い男の声が流れる。

『放送を、始める』

裕太は、唇を噛み締めた。

『死亡者の報告だ。 不動峰、橘桔平、神尾アキラ、山吹、壇太一———』

つらつらと述べられる、名前。
輪廻の耳に、衝撃が走った。





『青春学園、不二周助—————』





ふじ、しゅうすけ・・・?

輪廻の頭に、1人の少年が浮かぶ。
先輩であり、裕太の。
裕太の——

「ゆう、た」(輪廻)

涙で濡れた顔のまま、輪廻は裕太の方へ向き直る。
何とも言えない、切ない表情を浮かべた、裕太がいた。
少しだけ、自虐的な笑みを浮かべながら。


「兄貴、さっき死んだんだ」(裕太)


その言葉は、棘となり、胸に抜けないくらいに突き刺さる。

「嘘、」(輪廻)
「嘘なんかつかねェよ。 ついさっきなんだ」(裕太)

裕太は、泣き顔を見られたくないのか、腕に顔を隠す。

「裕太」(輪廻)

今度は反対に、輪廻が裕太のほうを向いた。
掛ける言葉なんて、1つも思い浮かばないけれど。

「りん、ね」(裕太)
「裕太?」(輪廻)





「もう、もう俺———、どうしていいか分かんねェよ———・・・ッ」(裕太)





同じだね。
同じなんだね。
私たち、一緒なんだね。
私にも、分からないよ。
どうしたら良いのかな、どうすれば、また笑えるのかな。
何をすれば、この土砂降りの中から、あの日溜まりの中へ帰られるのかな。


ああ、でもね。


「何も、しなくて良いよ」(輪廻)


もう、充分。
彼方は、いつでも。

「輪廻?」(裕太)

いつでも、側にいてくれるだけで。










「裕太がいてくれるだけで、ね。 私は、それだけで良いの。 だから、何もしなくていい」(輪廻)










それは、告白、だったのかもしれない。

I Love You.

そんな言葉は恥ずかしくて。
溢れ出すその思いを、違う言葉に託す。

「輪廻、」(裕太)

輪廻は、雨か涙か、あるいはどちらもか——、ぬれた頬を、裕太の胸に付けた。

「あったかい」(輪廻)

もう、彼方しかいない。
もう、私には彼方だけ。

「馬鹿ヤロ、」(裕太)

裕太もまた、細く小柄な輪廻を抱きしめた。


お互いに、お互いしかいない。
お互いに、お互いの温もりを感じあう。
お互いを———、愛している。













精一杯の、I Love You.
しっかり、届いていますか?















土砂降りの中、ココロは晴れ模様。
それは、此処にキミがいてくれるから。
彼方が、私のココロに、“愛”という傘をさしてくれた。