二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ−限られた時間で、限られた命で、限られた愛を− ( No.14 )
- 日時: 2010/04/18 09:43
- 名前: 亮 (ID: nWdgpISF)
銃声がなる。
何故か、人を殺すことにそれほどの抵抗は無い。
ただ、生き残りたい。
「・・・次は何処、行こうかな」
リョーマはそう呟き、移動を始める。
最高に苛ついてるんだ。
せっかくのテニス合宿だってのに、こんなのに巻き込まれて。
「生き残って、テニスをする」(リョーマ)
これだけしか、彼の頭にはない。
自分を求めている人がいることも知らずに。
どれほど歩いただろうか。
空は次第に暗くなり、足下もよく見えない。
人が居る気配も無い。
「無駄足、だったかな」(リョーマ)
他の場所へ行こうと振り向くと、草の茂みから物音が聞こえた。
リョーマの無表情な顔に、笑みが浮かぶ。
向こうは自分に気がついていない。
「サヨナラ。 まだまだだね」(リョーマ)
これで、俺の勝ち。
アンタの負け。
銃の引き金を引く。
銃弾は標的に当たり、血が飛び散る。
さすがに、顔を確認しないままじゃ失礼すぎる気もしてリョーマは相手の方へ歩み寄った。
草をかき分けると、青学の女子の制服が見えた。
「・・・」(リョーマ)
女の子は腹部に当たったらしく、息が荒い。
もう、長くは無いだろう。
暗くて、それだけじゃ誰かまでは分からない。
リョーマはさらに近寄った。
心臓が、うるさいほどに動き始める。
不安が、急に押し寄せてきた。
罪悪感なんて、全く感じてなかったのに。
今になって、冷や汗が出るほど、人を殺した自分に動揺している。
「・・・わた、るせんぱ、い」(リョーマ)
少女は力を振り絞って、リョーマのほうへ向き直る。
目には、涙が光っていた。
「やっと会えたのに、ね」(弥)
泣きながら、笑うんだ。
「こっち、来て、よ。 リョーマ」(弥)
「何で」(リョーマ)
震える唇で、リョーマは必死に平然を装った。
「俺はお前を撃ったことに、何の後悔もないよ」と。
でも、弥には見透かされている気がした。
「いい、から」(弥)
弥の靴には、泥が付いていた。
自分の靴を、改めてみる。
同じ、泥が付いていた。
弥は、ずっと、自分の後を追ってきていた。
自分の通ってきた道を、弥もまた、通っていたんだ。
リョーマの殺した数々の人を、あの瞳に焼き付けながら。
「先輩、アンタ・・・」(リョーマ)
「やっと、追いつけた」(弥)
リョーマは、弥の手を強く握る。
もう、力が入っていない。
「会いたかったんだよ」(弥)
ああ、この人はもう死んでしまうんだ。
ココロに何処かで、そう悟ってしまう。
自分で招いた結果の癖に、認めたくない。
「スキ、だよ。 リョーマ」(弥)
この人は、こんなに、自分を求めていてくれたのに。
俺が考えてたコトって、何だったんだろう。
それを思うと、恥ずかしくて。
他人のコトをこんなに思えるアンタがキレイに見えた。
弥との、たくさんの思い出がリョーマの頭を駆けめぐる。
それは弥も同じだった。
「ごめん、ごめん。 弥先輩」(リョーマ)
今になって、初めて自分の気持ちに気がつく。
「俺も、スキ。 先輩」(リョーマ)
弥は、笑う。
「やっと伝えられた」(弥)
静かに目を閉じる。
限界が来た。
弥の息は、もうない。
「先輩・・・ッ」(リョーマ)
死んだ。
だけど、先輩は幸せそうで。
撃った俺に、何の文句も言わずに。
それでも、スキだと言った。
「やっと会えたのに、ね」(リョーマ)
馬鹿だ。 自分は、何て馬鹿なんだ。
リョーマは立ち上がる。
弥に自分のジャージを掛けた。
待ってて。 先輩。
すぐに戻るから。
その時には、全てが終わっているはずだから。