二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [テニプリ]いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ− ( No.276 )
- 日時: 2010/06/30 16:13
- 名前: 亮 (ID: TtH9.zpr)
かっこいいじゃん。
そう言えば、アンタは怒るんだろうね?
でもさ、今のアンタには、その言葉がピッタリだよ。
見惚れるほどに、かっこいい女の子。
そんなの、アンタしかいないじゃん。
そんなアンタを見つけたのは、俺だけどさ。
あ、俺のほうさ、出来れば、見ないで欲しいんだけど。
秋が来た。
「文化祭? ——で、何でうちの部が模擬店?」
リョーマの声が、部室に響く。
その手には、“青春学園学園祭 部活動模擬店について”と記されている紙があった。
リョーマの後ろには、覗き込むようにしてその紙を麗が見ていた。
「あれ? 越前たち、知らねぇのか?」
「知らないッス」(リョーマ)
桃の問いに、リョーマが頷く。
麗も同じように頷いた。
「青学の文化祭はな、何処の部も何か1つ、模擬店ださなきゃなんねぇんだよ」(桃)
機嫌良く言う桃に対し、リョーマはめんどくさそうに机に頬杖を付いた。
「・・・で、何やるか決まったんスか?」(リョーマ)
その言葉に、桃は「待ってました」とでも言うようにニヤっと笑った。
「英二先輩! 不二先輩! お願いします!」(桃)
「え、英二先輩と不二先輩?!」(麗)
「え、ちょ、何するんスか!」(リョーマ)
「ほいほ〜い、ちょぉっとおとなしくしててね♪」(英二)
「ごめんね。 すぐに終わるから」(不二)
2人の目に、不二の黒い微笑みが映る。
それを最後に、世界は真っ暗になった。
およそ、10分後。
「でっきたよ〜ん♪」(英二)
英二が、軽やかな足取りで部室に戻ってくる。
そこには、手塚、河村、乾、大石、海堂も揃っていた。
「皆来たんだねー、ちょうど良いや」(英二)
「英二先輩! 早いトコ頼むッス!」(桃)
「おぅ、そだね」(英二)
英二の声と共に、扉が開く。
「連れてきたよ」(不二)
そこには。
なんだか、リョーマみたいな麗と麗みたいなリョーマが。
「おお! 似合うじゃねぇか!」(桃)
「そうだろー?」(英二)
彼らの瞳に映るのは、可愛く、格好良く、そして何より、不機嫌な顔をしている2人——。
その姿はどこまでも似ていて、リョーマの短髪なトコロをのぞけば、麗はリョーマに、リョーマは麗に見えてくる。
「これで、うちの部の模擬店は決定だな」(海堂)
海堂が安心したように呟く。
「そうだな!」と桃が声を上げた。
手塚も、他の面々も、頷く。
頷かないのは、2人だけ。
「ちょっと待ってください!」
麗の声が響いた。
「何で私がこんなカッコしなきゃなんないんの?!」(麗)
「同感。 俺も、何でこんなの着なきゃなんないんスか?」(リョーマ)
麗は、ウェイターの服のネクタイを緩めながら。
リョーマは、ヒラヒラのウェイトレスのスカートを弄りながら。
状況がやっと理解できはじめたのか、声を張り上げた。
「私は男じゃないんだからさ。 ———しかも、何この服、暑ッ」(麗)
ネクタイを放り投げる。
「こっちはこっちで、恥ずかしいんスけど。 桃先輩の案ッスか?」(リョーマ)
リョーマはリボンを投げた。
「そういうなよ〜、麗はともかく、お前は合同学園祭の時のオフィーリアで慣れただろ?」(桃)
「そ、それは関係ないじゃないッスか!」(リョーマ)
呑気に笑う桃を見て、顔を赤くしながら反論するリョーマ。
麗は、それは不敵な笑みを浮かべながら眺めていた。
「ふ〜ん、オフィーリアねぇ」(麗)
「そーゆー顔で、見ないで欲しいんだけど」(リョーマ)
挑発的な麗をよそに、リョーマは反論を続ける。
「どうしても、おチビたちのそれが必要なんだよ〜! 俺らの模擬店が目立つためにはさ」(英二)
英二を筆頭に、先輩たちも譲らない。
「そうだよ、テニス部にはそれが必要なんだ」(河村)
「大丈夫だ、越前! 美那浦! 似合っているぞ!」(大石)
「そうだよ、いい絵になるよ?」(不二)
「こんなの似合っても嬉しくないッス」(リョーマ)
「右に同じく」(麗)
「やれ、越前、美那浦」(海堂)
「お前たちのそれで、男女共に客の数が増える割合————、96%だ」(乾)
「さすがッスね! 乾先輩!」(桃)
口々に、思い思いのコトを話す。
本人たちの意見は完全に無視に等しい。
極めつけは———
「越前! 美那浦!」
「「?」」
「お前たちは————、接客の柱になれ!!」(手塚)
ため息。
どうしようもなく、ため息。
「意味分かんないッス・・・」(リョーマ)
「私帰ってもいい??」(麗)
先輩たちの勢いに押され、疲れ切っている2人。
見かねた彼は、こんなコトを呟いた。
「どちらか————、1人だけでも、良いんだけどね」
その言葉に、2人の瞳は輝きを戻す。
2人は顔を見合わせた。
「ふーん」(リョーマ)
「そーいうコトなら」(麗)
「決まってるでしょ」(リョーマ)
「「テニスで勝負!!」」
2りでそう叫んだかと思うと、ラケットを手にコートへと走り出す。
「あーぁ、2人ともあのカッコのまま・・・」(河村)
「ふふふ、不二先輩?!」(桃)
「不二ぃ、どっちかじゃ、意味ないじゃんか!」
(英二)
「大丈夫。 今の2人なら、そう簡単に勝敗が決まるコトはないよ。 ねぇ、手塚?」(不二)
夕焼けに照らされた部室で、手塚は静かに頷いた。
外では、延々と続くラリーが行われていた。
青春学園学園祭当日。
「いらっしゃいませ。 どうぞ中へ」
澄んだエメラルドグリーンの瞳に、左目を隠すように垂らされた綺麗な髪。
ぶっきらぼうに言い放つその声は、女の子にも思われる。
「誰? 今のコ」
「越前くんじゃ・・・ 無いよね?」
テニス部喫茶店にやって来た彼女たちは、混乱しながらも店の奥へと進む。
「ほいほ〜い! 2名様だよ〜」(英二)
「こちらへどーぞ! もうすぐ、ウェイトレスが来るからな」(桃)
2人の案内を受け、席に座る。
「————ごごご、ご注文、を承ります・・・」
消え入りそうな、声。
でも、何となく、聞いたことのあるような————
2人の女子は、顔を上げる。
「あぁ?! リョーマ様?!」
「リョ、リョーマくん・・・」
「ゲ」(リョーマ)
かわいらしいウェイトレスの服に、頭には大きなリボン。
カツラこそ使っていないが、知らない人間が見れば、完璧に女の子だ。
そんな姿を見た彼女たちに、「なんでなんで?!」、と質問攻めにされるリョーマ。
———駄目じゃん、アイツ——————————
「すみません、お客様。 俺が変わりにご注文を」(麗)
澄んだエメラルドグリーンの瞳に、左目を隠すように垂らされた綺麗な髪。
どうしようもなくクールで無口な彼女の、精一杯の気遣い。
「ほら、リョーマ。 さっさと先輩たちにオーダー言ってきて」(麗)
そんな彼女は。
「あ、」(リョーマ)
何故だか、誰より可愛く。
そして、—————————————格好良く。
「・・・俺も、まだまだ、だね」(リョーマ)
彼が彼女に恋するのは、きっともうすぐ。