二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [テニプリ]いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ− ( No.369 )
- 日時: 2010/07/21 12:41
- 名前: 亮 (ID: TtH9.zpr)
ずっとずっと、言えなかったことがある。
言わなかった、ことがある。
いつもいつも、からかってばかりでごめんね。
いつもいつも、困らせてばかりでごめんね。
いつもいつも、不安にさせてごめんね。
こんなことに—————————————、巻き込むことになって、ごめんね。
ああ、死に向かう時って、人は懺悔の言葉しか思いつかないのかな。
“ごめんね”
「不二先輩ってさ、よく分からない」
いつだったか、麗は言った。
「・・・、どういうこと?」
不二はきょとんとして聞き返す。
あまりにも、唐突な言葉だった。
「言葉の通り。 よく分からない」(麗)
「どういうところが、分からないのかな?」(不二)
麗は一瞬不二と目を合わせて、再び伏せた。
「・・・・・・私のこと、スキだっていうけれど、それが、よく分からないのよ」(麗)
何処か、寂しそうに。
「何処がスキなのか、分からないってことかな?」(不二)
「んー、そういうんじゃない」(麗)
「僕はスキなコほどからかいたくなるからね。 それがスキって証拠だと思ってくれないかな?」(不二)
麗は困ったように不二に背を向けた。
依然、不二は微笑みを崩さない。
「それ、本音?」(麗)
あの時の、麗の言葉が耳から離れずにいる。
いつもなら、その場で「本音だよ」、と微笑んで抱きしめればお終いだっただろう。
だけど、何故かカラダは動かず、麗の言葉を静かに受け止めるだけだった。
不二は横目で“彼女”を見つめる。
そんなことを言っておいて、それでも隣に座っている彼女。
「・・・、何」(麗)
視線に気がついたのか、麗は少々不機嫌そうに言う。
不二は微笑む。
「遂に、私を殺したくなった?」(麗)
不二と麗と、青学レギュラー達はBRに巻き込まれた。
女子なのに男子テニス部に入部させられていた麗は、巻き込まれたのだ。
そのせいか、そうでないのか、不機嫌極まりない。
麗は感情を言葉に込めない。
ただ、思いついたことを淡々と述べる。
その言葉に、不二の笑顔は硬直した。
「・・・どういう意味だい?」(不二)
「だから、そのまんま」(麗)
不二は、ため息。
「キミの目に、俺はそういうふうに映っているんだね」(不二)
麗は一切感情を表さない。
いつも以上に、冷静に、無表情に。
「そういうこと」(麗)
不二を、どんどん突き放す。
「キミのこと、大切だと思っている・・・って、何回言ったけ。 僕」(不二)
「知らない」(麗)
「いつも以上に、麗は厳しいね」(不二)
不二はクスクスと笑いながら、言う。
———笑い事じゃない。
麗の中で、苛立ちは大きくなった。
「黙れ、笑い事じゃないの」(麗)
不二は言葉の通り笑うのを止めた。
「こんな状況で、何でアンタはまだ、そうやって笑うことが出来る?」(麗)
麗は、今にも泣き出しそうで。
「何でまだ、私を混乱させる?」(麗)
「麗?」(不二)
「何で、どうしてまだ、分からない?!」(麗)
麗は声を荒げる。
不二は驚いて、取りあえず麗を落ち着けようと手を取った。
「・・・ッ」(麗)
麗は動きを止める。
そして、腕を振った。
「離し、て」(麗)
そう言った麗の手は——————————————、
いつもの彼女からは想像も出来ないほどに、
震えて、いた。
何処かで、銃声が響く。
何処かで、爆音が鳴る。
何処かで、悲鳴が聞こえる。
その度に、麗のカラダはどうしようもないほどに震えた。
「麗・・・」(不二)
不二は、麗を見る。
麗は震えていることを見透かされ、恥ずかしげに俯いた。
「不二先輩、は、やっぱりよく分からない」(麗)
静かに、言葉を紡ぐ。
「それに、アンタも、私のこと、分かっていない」(麗)
その言葉には、確かに“不安”と“恐怖”が滲んでいて。
不二はようやく理解する。
———彼女は、不安、なんだ。
———何時だって、どうしようもないくらい、不安なんだ。
だから、僕にあんなことを———————————————
何時、誰に裏切られるのか。
何時、自分が狂うのか。
何時、殺されるのか。
普段の彼女からは想像もつかない程、彼女は今不安定で。
瞳には次第に涙が光る。
「・・・・・・、スキなコほど、虐めたくなるんでしょ」(麗)
麗はこの場には不似合いなことを言う。
そうかと思えば。
「じゃぁ、私を殺してよ」(麗)
この場に、最も最適な言葉を出す。
「・・・」(不二)
不二は黙って彼女を見つめた。
「こんなの、もう嫌、なの。 こんなに不安なら、まだ狂ってないアンタが、殺してよ」(麗)
不二は微笑んだ。
「?」(麗)
「じゃぁ、1つ、僕からもお願い」(不二)
「何?」(麗)
不二は、麗を抱き寄せる。
「・・・最後に、僕のことスキだと言って」(不二)
自意識過剰だ、と笑われるかもしれない。
だけど、僕は分かっている。
麗のこと、麗が思っている以上に、僕は分かっているよ。
だからこそ、お互いに、惹かれたんじゃ、ないかな?
「バカ、じゃないの?」(麗)
「でも、図星、でしょ?」(不二)
麗は、俯く。
「何でも、お見通し。 ・・・ってワケね」(麗)
最後に。
大切な人へ。
「スキ」(麗)
不二は、微笑んだ。
手には、既にサバイバルナイフ。
それでも、何故か麗は笑っていた。
「ありがとう、」(麗)
「らしくないね、どうして? お礼なんて」(不二)
「最後に、伝えられて良かったなぁって、思っただけ」(麗)
きっと、自分だけじゃぁ、最後まで素直なんてなれなかった。
「僕も、最後に」(不二)
不二は、麗の耳元へ。
「色々と、ごめんね」(不二)
こんな時なのに、僕には懺悔の言葉しか思いつかなくて。
それでも彼女は、何故だか幸せそうに、微笑んだ。
「バカ」(麗)
刹那、1人の少女と少年は、此の世を後にする。
お互いのことを理解して、幸せそうに、笑いながら。