二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボーカロイド曲小説 ( No.6 )
- 日時: 2010/04/27 20:11
- 名前: 悪ノ娘 ◆Qd6XA/vkyQ (ID: F35/ckfZ)
-悪ノ召使- 初恋
「レン、隣国へ出かけるわ。ついてきて」
「はい、王女」
そして、馬車に揺られること10分、隣国…。緑の国へ着いた。
「わぁ…」
そこには、黄の国では見ることがない光景が広がっていた。王族と庶民が仲良く会話しながら食べ歩きしていたり、庶民の服屋で「どんな服がいいだろうか?」と相談して決めていたり…。王族と庶民の交流がある国だった。
「…」
王女はその光景を見てぼーっとしているんじゃなくて、誰かを見てぼーっとしていた。
「王女?」
王女の視線の先には青い髪をした背の高い男の人。海の向こうの青い国の王子を見ていた。
…一目惚れをした初恋の顔で。その隣にいる緑の娘は、楽しそうに青の王子と会話していた。
「…!」
あの緑の娘の楽しそうにはしゃぐ声、無邪気な笑顔。
僕も一緒で恋をした。一目惚れの初恋…。双子って、こんなところまで似てるのかな?
「レン、レンってば!」
「はっ、はい!申し訳ございません!何でしょうか?」
「気が変わったの。今日は買い物だけして帰りましょう。なんだか疲れてきちゃって」
「大丈夫ですか?今日は早く帰って早めにお休みしましょう」
「えぇ」
「すみませーん…」
服屋の中に入った。拒絶されるかと思う。王女の悪逆ぶりは隣国まで知れていて、馬車から降りた時も一瞬だけ空気が変わった。
「はいはーい!いらっしゃいませ…」
王女の姿を見てから、少し気まずそうにする服屋の店主。
「あの…」
「はい、何でしょう?」
でも、すぐにその態度を改めて接客用の態度にする。
「黄色と黒を基本にしたドレスってありますか?」
「そちらの可愛い王女様が召される物ですか?少し値は張りますが…。可愛いのがありますよ!」
30代後半くらいのおばさんがそのドレスを大切そうに持ってきた。
「キレイ…」
その言葉は王女が発したものだった。
「お気に召されましたか?王女」
「えぇ、とてもキレイね。気に入ったわ」
「そうですか、それはよかった!」
店主のおばさんが優しげな笑顔で喜んだ。
「これ、おばさんが作ったの?」
「はい、一応」
「凄く上手ね。気に入ったわ、私の所に来ない?」
「あ、それは…。主人も娘もいますから…。ドレスのご注文があれば、出来次第そちらの国へ持っていきますから!」
「そう、解ったわ。ねぇ、これはいくら?」
「13万8000円です」
「あら、もっとするかと思ったわ」
高級な布と宝石で作られた黄色いバラが美しかった。
「せっかく隣国からいらっしゃった王女様ですからね!特別です!」
「そうですか、ありがとうございます」
悪の王女と名高い客が来たというのに、嫌がりもせずにそれを受け入れ、しかも値下げまでしてくれる優しい店主だった。
「ありがとうございましたー!」
代金を渡して一礼して帰る。
「ねぇ、レン…。青の王子って結婚してた?」
「いいえ、していませんよ」
「そう、縁談…。進められる?」
「勿論です」
そして、翌日。青の王子がこの国へやってきた。
青の王子は縁談を断り、王女は荒れた。そして、信じられない命令を出した。
「…緑の国を滅ぼしなさい」
「かしこまりました、最愛なる王女様…」
緑の国…。ボクの初恋の人がいる国…。でも、王女の命令なら、僕はそれを受け入れよう。
初恋の人にも変えられない、大切なボクの王女様(姉さん)。
火攻めで家も城も木も草も焼き払い、緑豊かな王国は炎の赤に染まっていった。
「見つけたよ…」
「っ!!」
「覚悟、してね…」
「…初めて会ったときから、好きでした…」
その言葉と同時に、緑の娘の胸にナイフを突き刺した。
「!!!」
「嘘じゃないよ…。ホント…。ホントに一目惚れだった…。名前、なんていうの…?」
「レン!」
服を引き裂いて止血する。もう手遅れということは解っていたけど。
「レン君…。殺してくれて、ありがとね…」
「うわあぁぁぁっ!!!!!!」
誰に見られるのも気にせずに、誰に聞かれるかもしれないのも気にせずに、大声で泣き叫んだ。
そして、この戦で黄の国は勝利を収め、緑の国は滅んだ。
「今日のおやつはブリオッシュだよ」
昨日、あれだけ泣き叫んだことが嘘のように、いつもと何一つ変わらぬ態度で王女と接する。
「ホント!やった、ありがとう!」
緑の娘に負けないくらい無邪気な笑顔。
ボクの望みはもう一つしかない。それは、大切な王女様がいつまでも笑っていられること…。