二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—【花曇編プロローグup】 ( No.120 )
日時: 2010/10/16 13:24
名前: 李逗 ◆Dy9pHDxQUs (ID: 7.F5HCJo)

第七訓  散ってく桜ってなんか切ない


桜の散る道を、和月はスーパーの袋片手に陽気に歩いていた。其の袋の中にはカップ麺がびっしりと詰まっている。
昨日の強盗を捕まえたお陰で店から礼金を貰えたのだが、其の半分はこのカップ麺代に消えてしまっていた。

(そういえば、此処ってまだ桜散り終わってないんかな。九州はもう終わってたけど)

左手に持っていた蜜柑ジュースを飲みながら考える。
和月が九州から江戸へと行く時、既に桜の季節は終わっていたのに、此処はようやく散り始めた所らしい。
桜前線は南から北へと北上して行くのだから当然っちゃ当然なのだが。

(そういえば、高杉兄ィやコタ兄ィは何処にいるんだろ)

ふとそう考えた。
坂本には江戸に来る途中、偶然会った。なんでも会社を始めたらしく、宇宙を又にかけているらしい。昔と変わらず馬鹿で陽気な彼に安心したのを覚えている(頭のモサモサ具合も相変わらずだった)。
高杉は京都に居る、という噂を訊き立ち寄ったものの、何も分からなかった。

「コタ兄ィは攘夷志士になって江戸にいる、って銀時兄ィは言ってたけどな」

俯いてぽつりと呟く。
其の二人に会いたくて堪らない。皆の元を出て行ってから一日たりとも忘れた事は無かった。

その時、地面に映る自分の陰が突然消え、同時にドンと言う衝撃が走ったのだ。
尻餅を付いてしまい、もっていたビニール袋からカップ麺が幾つか零れ落ちた。

いてて、と呟きながらヒョイと顔を上げる。
その刹那、和月の眼に映ったのは。

「あ、ご、ごめんな……さい。大丈、夫……?」

大きな瞳と真っ白な肌。

(も、ものっ凄い可愛い)

驚いて固まったままの和月に、其の少女は「あの……」と声を掛ける。
其の声にはっとして立ち上がってみると、少女は和月よりも10センチ程小さかった。

「あたしも御免なさい。余所見してて——ってあぁっ!?」

「え……」

行き成り荒げた和月の声に驚いたらしく、少女はびくっと肩を震わせた。

「あたしの蜜柑ジュースのせいだ。服、シミが……」

少女の着ていた純白の巫女服、其の右脇腹辺りがうっすらと橙に色付いていた。
何故この日に限って蜜柑ジュース等買ってしまったのだろう。何時もはサイダーを買うというのに。

「ちょっ、本当御免なさい! あたし家直ぐ其処なんでちょっ、来て!!」

「え、大丈、夫……」

そんな声も聞かず、和月は少女の白い腕を引いて走り出した。