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Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編—【第七訓up】 ( No.129 )
日時: 2010/10/23 14:28
名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: 7.F5HCJo)


第八訓   洗濯は手洗いモードで


「銀さん、和月ちゃん少し遅く無いですか?」

ぽつりと新八が呟いた。
時計の針はもう直ぐ11時を指そうというところだった。和月がラーメン買いに行く、と言って出て行ったのは10時を少し過ぎた頃だ。
何かあったのだは、と心配になる新八とは裏腹に、銀時は組んだ足を机に乗せ、ジャンプを読んだまま答えた。

「心配いらねェよ。あいつの事だ、どっか寄り道してんだろ」

「そうネ新八、和月も子供じゃ無いアル。そんぐらい分かれヨダメガネ」

「何でこのくらいでダメガネ呼ばわりされなきゃなんねーのォォォ!?」

新八が言い返した、その瞬間だった。
ガラガラと扉を開ける音がしたと思うや、

「ただいまー!!」

と言う和月の能天気な声が響いた。
すると、今の今まで定春に寄りかかるようにして座り酢昆布を食べていた神楽が、猛スピードで玄関へ駆けて行ったのだ。
神楽も和月に懐いているようで、新八の顔に笑みが零れた。
なんやかんやで神楽も一人だけ女、というのも(気にして無いかもしれないが)、寂しかっただろう。和月が来て良かったな、と思った。

「銀時兄ィ、新八、ただいま」

「お帰り、和月ちゃ……!?」

部屋に入ってきた和月を見た瞬間、銀時も新八も大きく眼を見開いた。
それもそうだろう、和月と神楽の真ん中、挟まれるようにして、見覚えの無い少女が居たのだから。

「和月てめっ、まさか誘拐して来たとかじゃねーよな!! 違うよなっ!!」

そんな訳無いだろこのチャランポラン、と呟きながら、和月は其の少女の肩にぽんと手を置いた。

「さっき、道でぶつかって服に染み作らせちゃったんだよ。白いからさっさと洗わないと落ちないと思って」

成る程、確かに和月の言うとおり、少女の右脇腹辺りが橙色に染まっていた。

「私達着替えとかするから覗くなヨ! 得に其処のダメガネ」

「何で僕ゥゥゥ!?」

新八の叫びも無視し、其れだけ吐き捨てると、3人は廊下へと出て行った。


和月は神楽の部屋で、部屋の隅の箪笥から着物を取り出していた。
少しして、淡い水色の着物を取り出すと、少女に其れを渡す。

「今着流ししか無いんやけど、其れでも良い?」

和月のその問いに、少女はコクリと頷いた。
万事屋に戻って来る時から思っていたが、動作がいちいち可愛らしい。
顔立ちは和月と同じ位の歳を思わせるが、何処か幼いのだ。

「ありが、と」

「ううん、全然! あ、そうだ、名前何て言うの?  あたしは和月って言うんだけど」

「私は神楽アル!」

名前を問うと、少女はちろりと上目遣いで和月と神楽を見上げた。

「……む、夢幻。よろしく……ね、和月、ちゃん、かぐ……ら、ちゃん」

ニッコリと微笑む夢幻。
やべェマジ可愛い、と二人は心の中で思った。

「じゃあ其の服洗濯して来るネ、夢幻、着替えるヨロシ」

「あ、神楽普通に洗濯しちゃ駄目だよ、手洗いモードで——」

和月が言い終える前に、行き成りピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
ごめんあたし出て来る、と言い残し、和月は部屋を出る。神楽と夢幻は顔だけを覗かせていた。

ガラリと乾いた音を立てて、扉を開ける。
その刹那、眼に飛び込んできたのは。

腰に刀を下げた、女の様な黒く長い髪の男。
其れはまさしく。

「コタ……兄ィ?」

和月が会いたい、と思っていた、桂小太郎其の人だった。