二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編— ( No.163 )
- 日時: 2010/11/23 13:00
- 名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: 5YaOdPeQ)
第十訓 喧嘩する程仲が良いとか言うけど実際どうなのかは誰にも分からない
「銀時貴様、まだこんな軟弱な物を飲んでいるのか。それだからそんな捻じ曲がった髪が生えてくるんだ」
「ンな訳あるかァァ!! それ俺のいちご牛乳ゥゥ!! 大体テメー何勝手に人様の家の冷蔵庫勝手に開けてんだ!!」
勝手に冷蔵庫を開け、中を物色する桂と其の横で文句を言う銀時。
桂が来てから言い合いばかりだ。二人がまともに会話している所を聞いていない。其の様子を和月、神楽、新八、夢幻の四人は呆れたように見ていた。
ただ、其の二人の言い合いは本気で相手を嫌っているからする様な喧嘩では無く、昔から相手を知っているからこそ出来る喧嘩だった。
(全然変わってないんやね)
和月は此の喧嘩が昔から好きだった。
二人の尽きることの無い相手を罵る声も、其れを呆れたように見る高杉と、ただ笑っていた坂本も。
今、其の高杉と坂本の位置には新八と神楽がいる。勿論夢幻も。
その時、不意にクスリと夢幻が笑った。
「夢幻、どうしたアルか?」
神楽が身を乗り出して言う。
「こたろ、いつもは……あんな風に喧嘩、しない」
和月はなんとなく夢幻の考えている事が分かるような気がした。其れは恐らく、五年前の自分が考えていたのと同じ事。
(これから先も、あたしはあんな風に喧嘩したりしないんだろうな)
あんな喧嘩は友達だから出来るのだ。
和月にとって、あの二人は兄貴の様な存在であって友達では無い。夢幻もそう思っているだろう。
その証拠に、五年前和月が銀時達と一緒に居た頃、喧嘩や言い合いなんかは一度もしなかった。これから先も、銀時達と同等になる事は無いだろう。
「ヅラは猫やぶってるネきっと」
「神楽ちゃん、猫やぶっちゃ駄目でしょ。猫かぶってる、の間違いだよ」
「うるせーヨダメガネ」
「何だとォォォ!!」
神楽の其の一言にかちんと来たらしい。
こっちはこっちで新八対神楽の争いが始まりそうだ。恐らく——いやきっと、神楽が圧勝するだろうが。
「神楽頑張れ、新八の眼鏡潰せー」
「オウヨ!!」
和月の声を合図に、神楽と新八が取っ組み合いの喧嘩を始めた。始まった直後から神楽が圧倒的に有利だ。
其れを見て、和月と夢幻は顔を見合わせて笑う。
一気に騒がしくなる万事屋。
———ピンポーン!
其れを破ったのはチャイムを押す音だった。
チャイム音が響いた刹那、万事屋内は急に静かになる。
「新八見て来いヨ」
既にボコボコにされている新八の腰を、神楽が蹴る。新八はいてて、と言いながらも玄関へ向かった。
流石パシリ新八君。
「まさかババァじゃねーだろうな」
ぽつりと銀時が呟く。
あれ程どったんばったん言わせたのだから、下のお登勢が苦情を言いに来てもおかしくは無い。
瞬間、銀時、神楽、和月の顔に青筋が浮かぶ。
「銀さーん」
新八が呼ぶが無視。
「ぎーんーさーん」
しつこく無視。
「ぎィィィんさァァァァん!?」
とことん無視。
「銀さん、依頼ですよ!!」
其の声に万事屋三人は顔を見合わせ、玄関に赴いた。桂と夢幻も其の後ろに続く。
「……え」
新八の隣に立つ、依頼主と思われる人物。
其れは、わずか七,八歳の少女だった。