二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編— ( No.201 )
- 日時: 2010/12/07 18:28
- 名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: 5YaOdPeQ)
第十一訓 昔の事を蒸し返すのは止めましょう
「あの、万事屋って……此処?」
黒に近い紺色の髪の少女は、上目遣いにそう訊いた。
「そうだけど……」
其れだけ言うと、新八はチラリと銀時の方を振り向いた。驚きと困惑が入り混じった様な、そんな表情だ。
そんな視線を向けられた銀時は、ぼりぼりと髪を掻きながら、あー取り合えず入れろよ、と呟いた。
「こっちアル!」
神楽が少女の白く細い手を引き、部屋に招き入れる。其れに新八、桂、夢幻と続く。
通り過ぎざま、和月の視線が少女と絡むと、にっこりと屈託の無い笑顔を向けてきた。
「どっかの銀メダルとは大違いだなァ」
「五月蝿い、銀時兄ィ」
もう過ぎ去ったいつかの出来事を言う銀時の肩をバコンと叩き、和月も夢幻に続いた。
———
少女は五十鈴朱音と言うらしい。
新八の出したお茶を飲みながらそう名乗った。
「かわ、いい」
ぽつりと夢幻が呟いた。釣られて和月も朱音を見る。
セミロングの紺色の髪の前髪は結ばれ、大きなくりくりとした黒い瞳。「美人」より「可愛い」が似合う様な、そんな女の子だ。
「で、どうした? お前見たとこ七、八歳ぐれーだろ」
銀時の言葉通り、朱音の歳は七,八歳程だろう。
万事屋にこれ程幼い依頼主が来るのは珍しい事だ。
「……さん」
「あ?」
「お父さんとお兄ちゃん、探して欲しいんじゃ」
「お父さんとお兄ちゃん?」
その場に居た五人全員で聞き返す。
朱音はコクリと頷くと話し始めた。
「半年位前に、ウチのお父さんとお兄ちゃん江戸に行ったんじゃぁ。でも一週間位しても帰って来んかった」
ふと、和月の脳裏にある記憶が蘇る。確か此の方言は、山陽(中国地方)辺りの言葉では無いだろうか。
「オイオイお嬢さんよォ、そう言うのは俺達じゃ無くてチンピラ警察24時に……」
「もう言うた」
銀時の言葉に被せるように言う。
小さな手は、硬く握り締められていた。
「……ウチ、お母さんもう死んでおらんから、二ヶ月前に江戸の親戚のとこに来たんじゃ。やから直ぐ警察にも言って貰った。けど……」
朱音の表情が陰る。
大きな眼が微かに潤んでいるように見えた。
家族全員いなくなってしまった。この少女にはとても辛い事だっただろう。其れは和月も痛いほどよく分かる。
「銀さん……」
「銀ちゃん」
新八と神楽が不安げに銀時を見やる。和月と桂、そして夢幻も同じく銀時を見た。
しばらく銀時は黙っていたが、やがてハァ、と溜め息一つ。
「しゃーねーな。お代は弾むぜ」
其の言葉に、朱音はぱっと顔を輝かせた。