二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編— ( No.244 )
日時: 2011/01/05 13:59
名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: TV9sr51/)



〈リリ様リク番外編〉

     馬鹿は風邪引かないって言うけどもアレ本当の馬鹿は風邪引いた事に気付かないからね(後編)


町外れに立つ、小さな工場に二人は居た。
タタタタタ、と二人の足音が狭い廊下に響く。

「銀さんんんん!!」
「銀ちゃァァァん!!」

工場内に入り込んでからずっとこんな調子だ。無機質に真っ白な廊下を、ただひたすら走り続ける。もう大分走っているのに、工場の者とは一度も会っていない。罠かもしれないと思ったが、銀時の名を呼び続けながら走り続ける以外術は無かった。


「何だお前ら!」

この廊下が永遠に続くのかと思われた時、低い男の声がした。
余所見をしていた新八は視線を真正面に移す。其処に居たのは薄い水色の作業服に身を包んだ、作業員と思われる男数人だった。

「其処をどくアルゥゥゥ!!」

叫ぶが早いか、神楽が地を強く蹴り、其の中に突っ込んだ。
神楽が傘を振り回し、足で蹴り上げる度に作業員はバタバタと倒れていく。

(……あれ?)

通り過ぎざま倒れた作業員達を見やった新八は、可笑しな事に気付いた。

(この人達、皆丸腰じゃないか)

作業員達は、銃や刃物と言った武器を一切身に着けていなかった。此の工場が攘夷志士やテロリストのアジトなら、武装している筈なのに。
この状態で神楽に攻撃されては、何の反撃も出来ないだろう。何せ神楽は宇宙最強傭兵部族『夜兎』なのだから。

「おい、止まれ!」

「———っ」

考えている途中、横の通路から男が飛び出してきた。頭より先に体が動き、新八は木刀で男の腹を一発突く。
ドサリと倒れた男にすみませんと一言言うと、新八は神楽の後を追った。

————

ふいに、前を走っていた神楽の足が止まった。
誰かが来た時反応出来る様に右方向を見ていた新八は、その背中にドンとぶつかる。

「痛て……どうしたの神楽ちゃん、急に止まって」

「此処……」

神楽は白く細い指で一つの扉を指差した。
廊下と同じく真っ白で、銀色のドアノブ以外何の特徴も無い扉。

「銀ちゃん……多分此処に居るアル」

野生の本能とでも言うのだろうか。何か感じるものがあるらしい。
新八は自然に拳を握り締めていた。

(此処に……此処に銀さんがいる!)

二人は一度顔を見合わせ、互いに頷き合う。
一度ゆっくり深呼吸すると、ドアノブに手をかけた。
ぎぎぃ、と鈍い音を立て、扉が開いていく。案の定、部屋の中も真っ白な空間になっていた。
そして。
そして其処で見つけた。壁と同じ、真っ白な頭をした銀時を。

「銀さん!」
「銀ちゃん!」

二人の顔にぱっと笑顔が咲く。やった、探し人は無事だったと。
……しかし。一瞬後、二人の表情が変わった。満面の笑顔から失望を孕んだ表情へと。
椅子に座る銀時と、その隣に立つスーツ姿の男性。
そして銀時が手にし、床にも散乱している大量の——菓子。

「え、何お前ら……来たの?」

銀時の顔に、明らかに焦りの色が浮かんでいる。ヤバい、ヤバいよと繰り返し呟く銀時に、新八と神楽がゆっくりと、だが確実に近付いて行く。

「待て待て待てェい! 此れにはわわ訳が……」

ある、と続けようとした銀時の言葉を遮ったのは神楽だった。

「あんコラてめー、人が心配して来てみたら……」

神楽の後に新八が続く。

「何コレ? は? お菓子食ってるだとォ?」

二人の背後に三つの顔を持つ阿修羅が見えた気がして、銀時はごしごしと目を擦る。

「てンめェェェェェェ!!!!」

神楽は傘を、新八は木刀をぐっと握り締め、ゆっくりと持ち上げた。
二人の眼が鋭く光る。

「待てェェェ俺の話を聞……ぶべらァァ!!」

「死ねやァァァァァ!!!!!」

————

一方その頃。
和月は一人万事屋に居た。ピピピと小さな電気音が響く。
のろのろと腕を動かし、和月は体温計の文字盤に写る数字を見た。

「何ゴレ熱四十度ぉぉぉ、死ぬらばー……」



終われ。