二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂。・銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ・。—白銀の鬼姫— ( No.28 )
日時: 2010/09/19 16:52
名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: 7.F5HCJo)

第二訓   寝坊は三文の得   


「朝ですよォォォ!!!!」

「ぶべらァ!!」

雲一つ無い江戸の空に、少女と男の声が響く。
道行く人々は皆足を止め、その声が聞こえた建物を見上げるが、呆れたように溜息をついて再び目的地へと歩き始めた。
一方、その建物——万事屋銀ちゃん——では。

「今何時だと思ってるアル!! 寝坊は一日がダラダラ始まるきっかけって何処かのオッさんが言ってた様な気がするヨ」


「ダラダラなのはお前の台詞だ! 大体いつもはお前が一番ねてるだろ—が!!」

片言の日本語を話す、オレンジ色の髪の少女は神楽。
白髪頭の……否、銀髪天然パーマの男は坂田銀時だ。

「どっちの台詞もダラダラだよ! それより銀さん良いんですか? 結野アナの占い始まりますよ」

この、眼鏡をかけた少年は志村新八。

「僕の紹介文だけ短いんですけど」

特徴の無いお前が悪いダメガネ。
新八の声を聞いて、銀時はまるで逃げるゴキブリの様な速さでテレビの前に移動する。
ローアングルからテレビに映る結野アナを凝視するのが銀時の日課だが、一見すると只の変態だ。

『ハーイ、今日一番ツイているのは、天秤座の貴方です。特にたった今家族や兄弟などに叩き起こされた天然パーマの方は、昔知り合った人との再会が訪れます』

「はァ? 昔の知り合いとの再会ィ?」

天秤座でたった今叩き起こされた天然パーマ。
正しく銀時の事だ。

「桂さんとか坂本さんとかの事じゃ無いですか?」

「きっとまたロクでも無い事押し付けられるネ」

「マジでか。そんなの全然ツイてねーじゃんかよォオイ」

今までに桂や坂本に会って、良い事があった例が無い。
今日はあんまり良い事無さそうだなと考えながら、いちご牛乳を飲もうと台所に向かった。
白い冷蔵庫からいちご牛乳を取り出し、扉を閉める。
丁度その瞬間、インターホンが鳴った。

「ンだよ〜」

大袈裟に溜息を吐きながら玄関へ行き、「新聞ならいらねーよ」と言いながら扉を開けた。
銀時はついさっき起きたばかりだが、既に町の人々はそれぞれの一日を過ごし始めていた。

「あ、すいません。道教えて欲しいんですけど」

いちご牛乳を開ける為に下を向いているので、相手の顔は見えないが、どうやら少女らしい。
神楽よりも少し高い、良く通る声だ。

「道ィ? 何処までの……」

そこでやっと銀時はヒョイと顔を上げた。
銀時の眼に映る少女の髪は銀色。銀時の様に白っぽい色では無く、日の光を浴びてキラキラと輝く綺麗な銀だ。
大きな瞳は黄色で、腰には金色の鍔の着いた刀が差してある。
恐らく新八と同い年か、一つ上か下だろう。

(……どっかで見たツラだな)

考えたその瞬間、脳裏に一人の女の子の顔が浮かぶ。
戦場の中一人、その名の通り月の如く銀時達を照らした女の子の顔。
まさかとは思うが、その少女は似ていた。

「かっ……」

大きく見開かれていく銀時の眼と共に、少女の黄色の眼も徐々に見開かれていく。

「ぎっ……」

一陣の風が、桜の花を散らし、少女の銀色のポニーテールを揺らして通り抜ける。

「和月ィィィ!?」

「銀時兄ィィィ!?」


空は雲一つ無く、只ひたすら青い。