二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編— ( No.291 )
- 日時: 2011/01/29 14:24
- 名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: TV9sr51/)
第十四訓 朝焼けが綺麗に見えた日には雨が降る
朝の柔らかな日差しが窓から差し込む。
その日差しは斜めに伸びて、夢幻の頬を照らした。
「夢幻、どうした。もう食べんのか」
桂の声で、夢幻ははっと我に帰った。朝餉を食べながらぼんやりとしてしまっていたらしい。右手に持った箸は、空中でその動きを止めていた。
「え、と……」
「もう入らないなら無理はいらんぞ。今朝は作り過ぎてしまってな、昼にまわせば良い」
そういえばお腹は既に一杯で、これ以上食べる事は無理だった。ごちそうさまでしたを言い、ラップを取ろうと席を立つ。
残した物を冷蔵庫に直し、夢幻は再び桂の隣にちょこんと座った。
「……こたろ」
自分の名を呼ぶ声に、桂が夢幻の方を見た。まだ何か食べているらしく、彼の眼だけがどうした、と言っている。
何故かそれがおかしくて、夢幻は思わず笑みを零した。
「何、か……情報、集まっ、た……? あの、朱音ちゃん、の……」
瞬間、桂の表情が陰る。其れはまだ何も集まっていないという証。
あれから——朱音が万事屋にやって来た日から、既に数日が経過していた。
それなのに、桂率いる攘夷党の情報網を持ってしても、大した情報は集まらない。これまでに分かった事は只一つ。朱音の父・眞前と兄・晃己が消えたと見られる日付、一月二十八日という数字だけ。
桂は自分の情報収集力には自信を持っていたため、この結果に苛立ちを感じていた。
「面白い位、何も出てこん。これ程何の情報も出てこないというのは、ある意味おかしいな」
「そ、か」
ふ、と。
何の気無しに、夢幻は窓を見た。
窓から見えるのは、太陽のある東の空。其の空には雲一つ無く、只ひたすら青かった。そういえば夢幻が起きた頃は丁度日の出の頃で、東の空が真っ赤に染まっていた事を覚えている。
「空、綺麗……」
「あぁ、そうだな。だが今日は恐らく雨だ」
独り言のつもりだったのに、桂には聞こえていたらしい。
それよりも夢幻には、桂の言葉の意味が気になっていた。どうして今日が雨だと思うんだろう、こんな綺麗な空なのに、と。
「知らないか? 昔からこう言うんだ、朝焼けが綺麗に見えた日には雨が降る、と」
「そ、う……なんだ」
これ程綺麗なのに。
今に雨雲が西からやって来て、雨が降るのか。
考えながら、再び窓を見やった、その時。
すぱんと独特の音を響かせ、部屋の襖が開いた。
其処に居たのは、白く大きな物体——エリザベス。
「エリザベス、どうした?」
直ぐに立ち上がり、エリザベスに近寄る桂。夢幻も其れに続く。
エリザベスはお決まりのプラカードを出し、二人に見せた。つーか其れ何処から出したの?
それには汚い字で『桂さんにお話があるそうです』と書かれてあって。夢幻が全てを読み終えると、丁度計ったように廊下から誰かが走る音が聞こえてきた。
エリザベスの横から顔を出した男。其の人は夢幻も何度か見た事のある、桂の攘夷党の一員だった。
「どうした、こんな朝早くから」
突然お邪魔して申し訳有りません。
男は深く頭を下げると、深呼吸して息を整えた。
男があまりに緊張した面持ちをしているので、自然と部屋の空気がぴんと張り詰める。
「……大変な情報が入りました。実は——」
雨雲は、もう直ぐ其処。