二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編—【無黯誕うp】 ( No.330 )
日時: 2011/09/07 17:35
名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: r9bFnsPr)

第十五訓  雷鳴るとテンション上がる奴ってクラスに絶対五人は居る


「私此れも食べたいアル!」
「ウチ此れ食べたい」
「ちょ、朱音ちゃんはまだしも神楽ちゃん買い過ぎだよ。もう籠パンパン……」
「うるせー死ねダメガネ」
「何っでそーなるのォォォ!?」

和月は、つい先程銀時に買って貰ったブ○メンをすすりながら、今だ何を買うか思案している神楽と朱音を見た。その二人の隣には、銀時に渡された財布を持つ新八も居る。
神楽が右手に持つ小さな籠は、既に細々した菓子で一杯だ。

万事屋一行と朱音は駄菓子屋に来ていた。
家事が一通り終わった後に、朱音の父と兄の情報を集める為に歩き回っていたのだが、神楽が駄菓子屋に行きたいと言い出し、今に至る。

「ねー銀時兄ィ」
「あ゛ー?」

和月の向かいに座る銀時は、隣の団子屋で買って来た団子を口に運びながら此方を向く。


「あれ、財布中身入っとる? 金欠って言ってなかったっけ」

「其れがブ○メン十個も買った奴の台詞かァァァ!!! ちゃっかりしてんなお前!!」

叫びながら、銀時はテーブルに山積みに置かれているブ○メンを指差した。其れらは全て真っ赤で、側面の豚の絵の下には「トンコツ」と書かれてある。
和月は銀時の言葉に、少し不満気な表情を浮かべた。

「好きだから仕様が無いじゃん。食べたいと思った時食べとかないと一時間後地球滅亡しますとか言われた時どうすんの」

「お前家にも大量にカップラーメン持ってんだろ。俺隠し持ってんの知ってんだぞ」

「味の違いを楽しんでるんですぅ」

そう言いながら、和月はスープを一気に飲み干し、ポイとごみ箱に向かって投げ込んだ。
しかし、余所見をしながら投げた所為か、空のカップはごみ箱を大きく飛び越え、後ろにあった壁に当たり、大通りにコロンと転がった。その転がったカップの近くに丁度通行人が居たらしく、「うおっ」と言う小さな叫び声が聞こえる。
しまったぁ、と全く悪びれない様子で呟くと、和月はそちらに顔を向けた。
謝るつもりだったのだ、其の通行人を見るまでは。

「……あ」

其処に居たのは、真選組の寥と、その時合った茶髪の少女だった。
その瞬間眉間に皺が寄ったのが自分でも分かった。条件反射と言う奴だ。
一方、寥の方も顔に不機嫌さが出ていて、その周囲にはどす黒いオーラが立ち込めている。

「やっほー、久しぶり♪ 四日……五日ぶりだね」

その不穏な空気を感じ取ったのか、それとも何も考えていないのか。
寥の後ろに居た少女が、にこにこと笑いながら和月に近付いた。その直後に少女は和月の顔をじっと見、

「そう言えば……私名前聞いてなかったし言ってなかったよね? 私九条アリス。よろしく♪」

「あ、あたしは和月。斉賀和月だよ。よろしく」

お互いに自己紹介を終えた後、ふと和月は左に気配を感じて振り返った。
そこには今だ団子(餡子)を咥えている銀時が居て。相変わらず気配を隠すのが上手いなぁと感心する。本人は嬉しく無いと思っているのだが、幼い頃の経験上、和月は人の気配を読むのが得意だ。しかしそれでも銀時が自らの意思で消した気配を読むのは難しかった。

「何? お前さん達。藍色の方は前会ったよな」

「真選組参謀の氷室寥です」

「局長並びに副長補佐の九条アリスです♪」

アリスが言い終えてから少しして、ひゅうっと生温い風が吹いた。
思わず風の吹いて来た方向の空を見れば、遠くにどんよりとした雨雲が見える。其れはもうじきに雨が降って来る事を知らせていた。

(そういや、朝結野アナが午後から雨とか言ってな)

雨は鬱陶しくて嫌いだ、と心の中で呟き、和月は視線を寥とアリスに戻す。

「今日は言わなきゃいけない事があって来たの。……あの行方不明事件の事で」

「何か分かったん?」

数日前に会った時、朱音の父と兄の事が分かったら教えてくれ、と約束していた事を思い出す。桂からも何の連絡も無い事や、ずっと歩き回っていた所為で、完全に忘れていた。

「うん。幾つかね。……寥」

その刹那、アリスの表情が陰ったのを和月と銀時は見逃さなかった。其れはあまり良い情報で無い事の証。瞬間脳裏に浮かんだ最悪な想像を打ち消す。

「あの子とその兄の父親、五十鈴眞前は——」

寥は一度其処で言葉を切った。其れに呼応した様に、再び生温い風が吹く。






「……攘夷志士。穏健派か過激派かも、何処の攘夷党の者かも分かってないけど」





和月と銀時の目が見開かれる。
何度か、和月はそう思った事があった。恐らく銀時もそうだろう。根拠こそ無かったが、直感でなんとなくそう感じていた。

「真選組の予想じゃ密偵。間者として何かしらの幕府関係の役所に入り込むか、何かを調べに来たんじゃないかって言ってる」

しかし。
本当に寥の言うとおり、密偵として江戸入りしたならば、わざわざ息子の晃己を連れて来る必要は無かった筈だ。朱音の話では、晃己はまだ十三歳の子供なのだから。

「……本当は私達は嫌なんだけど」

ふいにアリスが口を開く。
茶色の瞳は何処か寂しそうで、悲しそうで。一方寥は少し眉間に皺を寄せ、相変わらず不機嫌そうに其処に居た。

「真選組より先に見つけてやって。私達は見つけたら即逮捕か……抵抗されたら斬らなきゃいけない、から」

二人はそう言うと軽く会釈して帰って行った。
其れを見届けた後に和月は後ろを振り返る。
駄菓子屋の中では、神楽と新八、そして朱音が丁度お金を払う所だった。

「抵抗されたら斬らなきゃならねェ、か。……時間はあんま無ェな」

銀時の言葉に頷いた時、遠く、雨雲のある方角から雷の音が聞こえた。
一度では無く、何度も何度も。

「土砂降りになるだろうね」

「あぁ」

刹那、背後から神楽が自分達を呼ぶ。
二人は短く返事をして振り向くと、そちらへ向かって歩いて行った。