二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編— ( No.345 )
日時: 2011/03/14 14:27
名前: 李逗 ◆hrygmIH/Ao (ID: .qxzdl5h)


第十六訓  最初の予定からどんどん外れていく悪循環ってどうやって抜け出せば良いのォォォ!!!


雷音は少しずつ近付いてくる。見上げる空はまだ青いが、背後を振り返り見れば、重く淀んだ雨雲が直ぐ其処までやって来ていた。
道行く人々は皆、色とりどりの雨傘を右手に持っている。心なしか何時もより人が少なく見えるのは、やはりこの天気の所為なのだろう。

そんな事を考えていると、ふと耳に新八の声が入って来た。

「銀さん銀さん、此れ財布です。有難う御座いました」

はいどうぞ、と言いながら、新八は銀時に財布を渡す。銀時は其れを受け取ると、財布の中身を確認した。
一瞬後、何時もの死んだ魚の様な銀時の眼が少しだけ見開かれた様に見えたのは気のせいだろうか。

「何だ此れ。和月が買った分以外全然減ってねーじゃねーか」

銀時の財布を覗き込んで見てみれば、確かに中身は和月がブ○メンを買い終えた時と変わっていなかった。

「駄菓子屋に来てたにーちゃんが買ってくれたアル」

沢山の駄菓子を買ってもらえて上機嫌の神楽が言う。
和月と銀時は其れを聞き、奢って貰ったァ?と神楽の言葉を反復した。
神楽が右手に持つ袋はパンパンに駄菓子が詰まっている。そんな量の駄菓子を買って貰えたなど、羨ましい事山の如しだ。

「紫色の髪したにーちゃんでなぁ、急に出て来て買ってあげよーか、って」

そう言って朱音は、顔一杯に満面の笑みを広げた。それにつられて和月も笑顔になる。

「僕が気付いた時にはもう居なくなってて。すいません銀さん」

和月と銀時が店の前に居た時にそんな人物は出てこなかったから、恐らく寥とアリスと話している時に出て行ったのだろう。

「良いなぁ、其れ。あたしも店の中に居れば良かった」

「和月にもあげるアル!」

神楽はそう言うと、袋を広げて和月に見せた。和月はやった、有難うと言いながら、神楽の髪をぽんと撫でる。

「金持ちのにーちゃんだなァ。まぁ俺は金も残ったし良しとしよーや」

銀時はそう言うと、にっと笑った。



それから少し歩き、見慣れた「スナックお登勢」の看板が見えてきた頃。
朱音は疲れてしまったらしく寝てしまい、神楽に背負われていた。神楽が持っていた荷物は銀時が持ち、日よけの傘を差すのは和月だ。

万事屋に続く外階段を最初に上り切ったのは新八で、懐から鍵を取り出すと、扉の鍵穴に差し込む。が、しかし。
鍵をガチャガチャと何度か動かした後、新八は此方を振り向いた。其の新八の眼はキョドり、額には何本もの青筋が浮かんでいる。

「……ぎぎぎ銀さん。扉、鍵開いてます」

「は?」

「お前が閉め忘れたんだロ」

そんな新八を見て、神楽が呆れた様に言った。追い討ちをかける様に、其の後更に和月が続く。

「鍵閉めんのは新八の仕事でしょーが。あんたが閉め忘れただけだって」

本来一緒に住んでいない新八が鍵閉め当番というのは可笑しな話だが、和月と神楽はそんな事全く気にしてない様だ。だってどうせ新八だから。

「オイ冗談じゃねーぞ、泥棒入ってたらどうすんだ新八コノヤロー」

「だからって何で僕の所為!? 閉めたっつってんだろォォ!!」

ぎゃんぎゃんと一人騒ぐ新八を横目に、銀時は鍵の掛かっていない扉を開けた。和月達も横から覗き込む。
玄関には見慣れない草履とブーツが一足ずつ。
果たして泥棒がこんなきちんと履物を並べて行くだろうか。

(……あれ? この草履とブーツ、どっかで……)

和月が記憶の糸を手繰り寄せようとした、その時。

「ヅラァァァァァ!!!!!」

銀時が突然吼えたかと思うや、黒いブーツを脱ぎ捨て、眼にも留まらぬ速さで部屋の中へ入って行ってしまったのだ。それはもう世界記録更新したんじゃないかという速さで。

「ちょ、銀時兄ィ!?」

慌てて和月達も其れに続く。
銀時が「ヅラ」と呼ぶ人物は只一人だ。居間に飛び込んだ和月の眼に映ったのは、正しくその人。

桂小太郎と夢幻だった。



……既に桂は先に入った銀時にボコボコにされていたが。