二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編— ( No.395 )
- 日時: 2011/05/21 15:43
- 名前: 李逗 ◆Dy9pHDxQUs (ID: .qxzdl5h)
- 参照: まさかの文字数オーバーorz①↑続きです。
お世辞にも広いとは言えない通路を、桂達は時折団体でやって来る敵を蹴散らしつつ進んでいた。
「夢幻、リーダー、大事無いか!?」
「大丈夫アル。ピンピンしてるネ!」
「わ、わたし……も」
と。走っているうち、幅のかなり大きくなっている所へ出た。何故かここだけ天井に蛍光灯があり、煌々とした明かりに包まれている。暗がりから明るい場所へ出たため、一瞬眼が眩んだ。
「……え?」
再び眼を開けた時、三人は我が目を疑った。三人の向かい側に人が居たのだ。
マントらしきものに身を包んでいるため顔は見えないが、隙間から見える髪は橙色。白く細い手はしかと傘を握っている。小柄で華奢な体つきをしていて、恐らく少女だろう。
と、その瞬間。
「夢幻!」
突然少女がこちらへ向かって走り出した。そのあまりの速さと突然の出来事に、夢幻の反応が遅れる。夢幻が刀に手を伸ばした瞬間、少女が傘を横に薙いだ。
「っつ!」
直後、辺りに鈍い音が響く。
しかし、少女の攻撃を受けたのは夢幻では無く。
「かぐら……ちゃん!」
「リーダー!!」
そう、神楽だった。
おそらくあの一瞬でとっさに夢幻の前に躍り出たのだろう。反撃か防御か、そのどちらかをするつもりで。しかし両方叶わず、脇腹にまともな攻撃を食らい吹っ飛ばされてしまったのだ。
「だ、大丈夫ネ。へいき……アル」
そう言うも、神楽は痛みに歯を食い縛っている。駆け寄った桂は神楽の小さな身体を支えながら、ゆっくり立ち上がった。
一方夢幻は、その場から少しも動けずにいた。その視線の先にいるのは、神楽を殴ると同時に元の場所に戻った少女。
その姿を見ているうち、今迄感じた事の無い感情が胸のうちからふつふつと湧き上がってきた。
「こたろ……神楽ちゃん。先、に……行ってて?」
「何、言ってるアルかっ……夢幻置いては、行けないヨ!」
痛みに顔をしかめながら言う神楽に微笑むと、夢幻は桂を見た。桂の漆黒の瞳と夢幻の瞳がかち合う。
数瞬の後、桂はふっと表情を緩めた。
「駄目だと言っても聞かぬだろう。……夢幻、必ず戻って来い」
「う、ん」
それだけ言うと、桂は今だ脇腹を押さえ苦しむ神楽を負ぶった。嫌アル、夢幻と一緒に居るネと神楽が暴れる。しかし、余程の激痛なのか、途中でそれを止めた。神楽の青い眼がこちらをじっと見つめる。夢幻はまた微笑んだ。何時もと同じに、つとめて明るく。
「むげ、ん……」
桂はちらとこちらを見やると、慎重に少女の横を通り過ぎていく。不思議な事に、少女は一度たりとも視線を桂と神楽に向けない。それを訝しく思いながらも、二人の姿が消えるまで——足音が聞こえなくなるまで見送った。
直後、夢幻の眼と髪が赤い光を持った。瞬きにも満たない間に、夢幻の髪と目は赤く変わる。燃え盛る炎にも似た、紅蓮の赤。
「神楽やこたろを傷付けるっ……、許さない」
夢幻が全身から発するそれは怒り。仲間を傷付けられた事に対しての。
それを見るや、少女はにやと唇の端に笑みを浮かべた。そして羽織っていたマントを床に放る。
そこに居たのは橙色の髪、紺碧の瞳を持つ少女——無黯。
「まさかあの子が乱入してくるとは思わなかったよ。悪い事しちゃった」
言いながら、無黯は傘を肩に担ぐ。夢幻はゆっくりと、鞘から刀を引き抜いた。銀色の光放つ、はがねの刃。
「許さない」
刹那。
二人が同時に地を蹴った。