二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編— ( No.458 )
- 日時: 2011/09/04 10:50
- 名前: 李逗 ◆8JInDfkKEU (ID: r9bFnsPr)
第二十七訓 なんちゃらと煙は高い所がお好き
銀時が扉の取っ手を握った、直後。
二人はほぼ同時に、背後から突然現れた気配を感じ取っていた。
和月はとっさに刀を抜き、振り返りざま攻撃を受け止める。がぁん、と二つの物がぶつかり合う音と共に、刀を持つ両腕に激しい衝撃が加わる。
攻撃を仕掛けてきた相手は、くるりと宙で回転すると後方に退いた。着地した瞬間被っていたマントが頭からはずれる。
そこにいたのは和月とあまり歳の違わぬ少女であった。左が赤、右が藍と両で瞳の色の違う眼をしているほかは人間と大差無いが、その白い肌と傘で夜兎だと判る。
和月は崩れていた体制を立て直すと、隣にいた銀時と共に少女を見つめた。
「てめー、何モンだ」
銀時の問いに、少女はにぃと口角を上げた。いたずらを見つかった子どもが見せる様な笑み。
「私の名前は鶯莉。春雨の、第六師団副団長だよ」
「副団長が何の様」
和月が訊くと、少女——鶯莉は視線をこちらに移した。和月も視線を逸らさず、まっすぐに睨みつける。
「……やっぱり似てるなぁ」
「「は?」」
ぽつりと呟いた鶯莉の声は、和月と銀時にはよく聞き取る事が出来なかった。かろうじて似てる、の部分が微かに聞こえただけで。どういう事か問い質そうとするも、鶯莉の方が先に口を開く。
「ねぇ、私今暇してるんだよね。——そっちの銀髪、ちょっと闘らない?」
そう言って突き出された傘の銃口は、真っ直ぐ和月に向かっていた。和月は何も言わず黙って彼女を睨みつける。
鶯莉と闘う気など毛頭無い。が、闘わないと答えて果たして彼女は大人しく引くだろうか。それを和月の直感が直ぐに否定する。鶯莉の眼はようやく遊べると言う様に輝いていた。はなから“闘う”以外の答えなど無いと。だからと言って、和月はそれを了承するわけにはいかなかった。
なんと答えようか考える和月の耳に、天井から何か金属質の音が聞こえてきたのはそのときだった。
「オイオイ、何だあれ。どうなってんだあれ」
銀時の言葉に釣られて見上げた天井を見て、和月はぎょっと目を見開いた。音の発生源である天井が、重く擦れる音を立てながら開いてゆくのである。
完全に開ききったそこに見える筈の空は無く。巨大な戦艦の船底らしきものが顔を覗かせていた。
「なななな、何あれ、銀時兄ィ」
「知らねーよ。俺が聞きてェよ」
突如現れた戦艦。その船底を呆然と見上げていると、船底の一部が開き、そこから縄でつくられた梯子の様な物が降りてきた。鶯莉の足元まで降りると、その穴から誰かが顔を出す。
ちっと舌打ちが聞こえてそちらを見れば、鶯莉が心底苛ついた様な顔をして船底を見上げていた。
『鶯莉さぁぁあん、無黯です。そこ、時限爆弾が取り付けられたみたいですよ! 早くこっちに乗り移ってください』
口調からして鶯莉の部下だろうか。遠くてよく見えないが、どうやら女の子の様だ。拡声器を使って叫んでいる。
『団長補佐さんが早くしないなら置いていくって言ってますよぉ』
それを訊いた時、鶯莉が和月と銀時の方を向き直る。二人は反射的に戦闘体制を取った。
「あーあ、折角楽しめると思ったのに……まぁいいか」
そう言うと、鶯莉は縄で出来た梯子に捕まった。それを合図にした様に梯子は上へと昇ってゆく。
「闘り合うのは次に会った時、ね」
「ふざけんな、誰が闘り合うか、誰が!」
船底に消えて行く鶯莉に和月が叫ぶと、鶯莉はけらけらと笑った。
鶯莉が完全に消え、船底の穴が閉まる。それから数秒の後、戦艦は重低音を響かせて飛び立った。
「……和月」
銀時に呼ばれ、和月は隣を向いた。銀時の緋色の眼と視線がかち合う。
和月はその次に言われるであろう言葉を察して、銀時よりも先に口を開いた。
「大丈夫だよ銀時兄ィ。天下の春雨第六師団副団長様が、本気であんな事言う訳無いから」
「そーか」
そう言って笑って見せたものの、あれが本気でない訳が無い事位和月も銀時も分かっていた。彼女のあの目は和月と闘う事を熱望していたから。銀時自身、あの目を向けられた事があるだけに知っている。鶯莉の眼は、つい先日地下でのあの激しい戦いで会った、神楽の兄の眼を彷彿とさせた。闘う事が生きがいである者の眼。
だからと言って彼女がここに居ない今、それをどうにかする事など出来るわけも無かった。
『おい銀時、和月!』
と、再び銀時の懐から桂の声がした。銀時は懐からかれーだーを取り出す。
「何だヅラ」
『ヅラじゃない桂だと言っているだろう! 貴様等今何をしている!?』
切羽詰った桂の声がきーんと耳に響き、銀時は眉を寄せる。
何って、今迄天人相手に戦ってたんだよ。
「新八から聞いてねーのかよ」
『新八君はまだ……いや、今出て来たところだ。それよりあと十分しかないぞ』
「「——は?」」
桂が何を言っているのか理解出来ず、二人は同時に間抜けな声を上げた。それを訊いた桂の呆れた様な溜め息が、かれーだーを通して伝わる。
『あと十分で時限爆弾が爆発すると言っている!!』
桂の声に、和月と銀時は顔を見合わせた。数秒の後、二人の口角がにたり、と上がる。
そして。
「「ああぁああぁぁああああ!!!!!」」
これ以上無い位の速さで部屋を飛び出した。世界陸上に出てたら世界新出てたんじゃないかな。
……つーか忘れんなよ。