二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ—花曇編— ( No.465 )
- 日時: 2011/09/10 10:21
- 名前: 李逗 ◆8JInDfkKEU (ID: r9bFnsPr)
翌日の朝刊に載った『真選組・京都見廻組過激派攘夷浪士大量検挙』の見出しを見て、銀時はてめーら行くぞと気だるげにそう告げた。
第二十九訓 曇り時々雨 のち晴れ
和月達万事屋四人と、眞前、朱音の親子は朝目覚めたばかりの町を真選組屯所に向かっていた。
「来た!」
「あ、アリスだ」
聞き覚えのある声に見やれば、真選組屯所の門の前でアリスがこちらに向かって手を振っていた。その隣には寥。そして二人の真ん中には一人の少年がいた。
少年の黒に近い紺色の髪と漆黒の瞳は朱音に良く似ている。
「兄ちゃん!!」
朱音はそう言うと、少年に飛びついた。それに続いて眞前も少年に走り寄る。
銀時はそれを一瞥すると、寥に話しかけた。
「もうこいつを助け出したのか? 早えな」
「眞前さんが情報を流してくれたお陰です」
珍しく感心した様に言う銀時に、寥は表情一つ変えず答える。
昨日、眞前と朱音を助け出したあと。
八人は一度万事屋へ戻り、銀時と和月、眞前の三人で直ぐに真選組へ向かった。そこで近藤、土方、沖田、寥、たまたま寥と一緒にいたアリスに眞前を見つけ出した事を話したのだ。春雨が絡んでいた事を除いて、ではあるが、それ以外は全て。勿論眞前が息子を人質に取られている事も、望んで攘夷活動に参加した訳でない事も。
そして更に、晃己を人質にして京都に潜伏していた組織の情報を流した。
「副長もゴリ……局長も総悟も、事後処理でまだ京都にいるけどね」
「今確実にゴリラって言おうとしましたよね」
新八の突っ込みを訊かぬふりをして、アリスは笑った。
銀時たちの話を聞いた後、近藤は直ぐに京都の警察組織である京都見廻組に連絡したらしい。それとほぼ同時に近藤と土方は沖田率いる一番隊を連れて京へ上り、見廻組と協力して潜伏場所に攻め込んだ。寥とアリスは後連れて来られる晃己を迎える為に屯所に残ったのだと言う。
「幹部も部下もほぼ全員制圧したそうです」
「今は残党処理に追われてるって♪ まさか感付かれるとは思ってなかったみたい」
「本当に……本当に有難うございます」
眞前はそう言うと、晃己と朱音を促し、三人で頭を下げた。
「とにかく家族皆無事で良かったね、朱音ちゃん? 私達は殆ど何もしてないけど」
アリスにぽんぽんと頭を撫でられて、朱音は嬉しそうに笑った。そんな朱音を見て、和月と神楽は顔を見合わせて微笑む。
「万事屋の皆さんと、真選組の皆さんのお陰です。ありがとうございました」
それを聞き、アリスはいいえと笑った。寥は終始無表情。和月はそういえば、寥が怒った時意外の表情を見たことが無いとふと思う。
「じゃあね、アリスちゃんに……無表情馬鹿」
「誰が馬鹿だコラ」
「うん、またね♪」
和月の言葉と、五十鈴親子が一度お辞儀をしたのを合図に、六人は真選組屯所を後にした。
「——で、お前等これからどーすんだ?」
所変わってかぶき町、開店前のスナックお登勢。
その看板の前に、身支度をし終えた眞前、晃己、朱音を見送る和月たちが並んでいた。
「とりあえず朱音を預けていた親戚の家へ行き、その後家に帰ろうかと思います」
「気をつけて下さいね」
眞前がそう言うと、彼の隣にいた朱音が自分の前にいた神楽に飛びついた。別れるのが寂しいのだろう、神楽の服の袖をぎゅっと握り締めている。
和月が視線を二人から再び正面に移すと晃己と目が合った。瞬間彼はぺこりと頭を下げてきて、和月も思わず首だけでお辞儀を返した。
「依頼料はあちらに着いてから送らせて頂いてもいいですか?」
「おう。達者でな」
銀時の言葉に、桂さん達にもよろしくお伝えくださいと言うと眞前は何度目かになるお辞儀をする。長々と頭を下げて頭を上げると、神楽にしがみ付いたままの朱音を呼んだ。
和月と神楽は名残惜しげな朱音の髪をなでてやり、父と兄の下へ行くように促す。
「本当に、本当にありがとうございました……!!」
最後にそれだけを言うと、眞前は晃己と朱音を連れて歩き出した。顔だけこちらに向けた朱音に手を振ると、花の様な笑顔が返ってきて。
「朱音ェ、いつでも遊びに来て良いアルからな!」
隣の神楽が大声で叫ぶ。
三人は大通りから途中で右に曲がり、やがて見えなくなった。
「行っちゃいましたね、三人とも」
「何か……寂しいアル」
新八と神楽がぽつりと呟く。二人にとっては妹が出来たようなものだったのだろう。特に神楽には。
和月は空を見上げた。
見上げた空は昨日の雨が嘘だったかの様に晴れ渡っている。朱音達が消えた方角の空に一つ、綿菓子の様な、隣にいる銀時の髪にも似た雲が浮かんでいた。
道脇の桜の花は昨日のうちにすべて散ってしまったのだろうか。枝の先からは若く青い芽が顔を除かしていた。
「晴れたね、銀時兄ィ」
「あぁ」
見上げた隣の銀時と眼が合い、和月は満面の笑みを浮かべる。
「めんどくせぇがヅラと夢幻に教えてやらねーとな。行くか」
銀時はそう言ってふわぁと大きなあくびをして一歩踏み出す。待って下さい銀さん、待ってヨ銀ちゃん、あ、銀時兄ィ!うるせー早くしろと、四人は晴れ渡った空の下を歩いて行った。
【花曇編完結】