二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】 銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ 【リリ様オリ登場。】 ( No.525 )
日時: 2011/12/31 10:55
名前: 李逗 ◆8JInDfkKEU (ID: bFAhhtl4)


第三十二訓  ねぇ知ってる? もの凄い怖がりの人って霊感あるらしいよ。


近藤と土方にその少年を紹介されたのは、毎日の朝礼の時だった。

「今日から入隊することになった波兎狸だ。皆宜しく頼む!」
「な、波兎狸です。よろしくお願いします」

近藤に紹介された少年は、近藤と土方の間でどこか怯えたような口調でそう言った。
まだ幼さのぬけきれていない顔立ちの少年——狸は、沖田を連想させるクリーム色の髪をしていて、アホ毛がぴょんと立っている。女装したら似合うだろうその顔立ちの中で、右が赤、左が灰色という眼が妙に際立って見えた。

「新入隊士なんて私達以来ね、寥」
「そだね」

隣にいたアリスが上機嫌で言う。寥は役職上、狸という少年が入隊すると聞いてはいたものの、会うのは初めてだ。

「それで近藤さん、そいつはどの隊所属なんですかィ? 俺的には土方抹殺部隊に入ってほしいんですがねェ」
「何その隊!? そんなもんあったの!?」
「現在俺と寥と寥が引っ張ってきたアリスが所属中でさァ。現在隊士募集中」

沖田の言葉を聞き、土方のこめかみに血管が浮き出る。次の瞬間、既に彼は刀の柄に手をかけていた。

「総悟てめェェ俺が引導渡してやらァ!!」
「ちょっトシ頼むから落ち着いてェ!!」

いつもどおりの朝の風景。それをはじめて見る波兎はびくりと肩を震わせた。
怖がりな性分なのだろうか、先ほどからずっとなにかに付けて怯えまくっている(いやでも一般人がこの光景を見たら怯える気がしないでもない)。

「ちょっと朝からやめてよ埃たつでしょ。で局長、彼の所属はどこ?」

アリスが黒々とした殺気を放ちながら言うと、土方は舌打ちしつつ刀から手を離した。


「いやーそれがまだ彼に見合う役職が見つかって無くてな。暫く様子を見ようと思う」
「その間はてめーが預かれ——寥」


土方がその瞳孔全開の眼でこちらを見てきた。寥は眉ひとつ動かさず、面倒そうな口調で言葉を紡ぐ。


「ウチのとこに来ても何もする事無いと思うけど」
「てめー暇だろうが。どうせ仕事しねェなら、こいつに真選組の事教えてやりやがれ」
「「死ね土方」」
「総悟、寥に声かぶせてくんじゃねェ」


いつもの如く二人で組んで土方にちょっかいをかける寥と沖田に溜め息をつくと、アリスは近藤の隣に立つ狸に視線を移した。
その他の隊士達はいつもの事と、すでに土方達三人の存在自体無視している。

「騒がしいでしょ、狸君」

笑みを浮かべつつ話しかけると、狸は驚きつつもこちらを見た。


「私アリス。宜しくね」
「宜しくお願いします」


そう言って、狸はにこりと笑ってみせた。
どうやら初めての場所に来て緊張し、生来持っている怖がりな性格が前に出てきただけらしい。話してみると明るくて元気な普通の元気な子だった。

「皆さん仲が良いんですねぇ」

狸がぽつりと呟くと、口喧嘩をしていた三人が一斉にこちらを向いた。
沖田と寥は平然としているが、土方は二人同時に相手をしたせいかつかれきっている。ひーいずべりぃたいあーど。


「「「仲良くねぇよ」」」


言う割にぴったりと息の合った切り替えしに、その場に居た全員がけらけらと笑った。とちわけ近藤が。


「それじゃ改めて。新入隊士の波兎狸君だ。皆宜しく頼む」
「よろしくお願いします!」



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その夜の事。
割り当てられた四畳程の小さな部屋で、狸は黙々と机に向かっていた。墨のつけられた筆で、さらさらと紙に何か書いていく。


『ヅラってる人へ。 今日真選組に無事潜入することが出来たよ。でも普通に面白そうな人ばかりで安心した。これからお仕事頑張ります。
あー勿論ちゃんとスパイらしく情報よこすから。取り合えず明日は海に行く事になったから楽しんできます。明日から面白そうです。 狸』


狸、と名前を書き終えてから封筒に入れると、狸はごろんと横になり、そのまま眼を瞑った。


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遅れた上に狸君キャラ崩壊してすみません…!!
愛だけは詰めておりまs(