二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】 銀ノ鬼ハ空ヲ仰グ 【陽炎編/ウ゛ィオラ様オリ登場】 ( No.556 )
日時: 2012/03/26 12:28
名前: 李逗 ◆8JInDfkKEU (ID: Q8MrRCmf)



「ハイマジカルバナナッ、バナナと言ったら黄色っ」
「黄色と言ったらマヨネーズっ」
「マヨネーズと言ったら土方っ」

「土方と言ったら死ーね!」
「死ねと言ったら土方!」
「土方と言ったら死……」

「うるせェェェェ!!!」
「トシぃ!! 前見て前ェェ!!」

マジカルバナナを利用した悪質ないじめ(言葉の暴力という)についに業を煮やした土方が、後部座席を振り返りながら叫んだ。


第三十三訓 季節感のズレとか気にしちゃ駄目。


「うるせーですぜ土方さん。ただでさえ狭い車内の中だっつーのに」

悪びれもせず平然と言ってのける沖田の台詞で、土方のこめかみに青筋が浮かぶ。
ここは真選組の所有するパトカーの中だ。運転する土方の隣には局長である近藤が、後部座席には左から沖田、寥、アリスの順で三人が座っていた。
土方抹殺部隊の三人である。

「その狭い車内でマジカルバナナやってたのはてめーらだろーが。つかアリス、てめーまで何で付いてきてやがる」
「暇だったからに決まってるでしょ」
「俺ぁてめーに仕事言いつけてた筈だが」
「「「死ね土方」」」
「何でそこだけ揃ってんだてめーら殺すぞ」

特に総悟とアリス、と付け加えられた言葉に答えたのは寥だった。バックミラー越しにいつものシラけきった顔が映り、土方の苛立ちが募る。

「それは今ウチらの共通の敵は土方だから」

その言葉に沖田とアリスが頷いて同意を示す。土方は今後ろを振り返り三人を斬りたい気持ちで一杯であった。その気持ちに気付いている近藤が、土方がハンドルを離しはしないかと心配している事が気配で分かる。
普段滅多に同じパトカーに乗り合わせたりなどしないこの五人が揃っているのは、昨日真選組に入った一本の電話が原因だった。

“幕臣の跡取り息子を護衛せよ”

江戸幕府開闢より幕臣として幕府に使えてきた名門家の子息、それを護衛せよという内容だったのだが、理由が電話などでは話せないということだった。それで真選組の局長である近藤、副長の土方、参謀である寥、護衛の際は要になるであろう一番隊隊長の沖田、そして何故か着いて来た局長補佐のアリスが依頼主の家まで出張っているのだ。

「ねぇ、まだ着かないの? 屯所から大分乗ってると思うんだけど」

狭い車内が嫌らしく(ならば着いて来るなと言いたい、)アリスが聞いた。
既に一般の市街地を抜け、幕臣や将軍家縁者の家が立ち並ぶ江戸城下の一等地に入っている。だからなのか、車も人影もまばらだ。

「いや、教えられた住所だとすぐそこだと思うんだが……ああ、ここだ」

近藤が答えたのと示し合わせたように、土方がパトカーを一つの武家屋敷の前で停車させた。
パトカーを降りて、五人は絶句する。

白く汚れの見つからない塀に、表札の下げられた立派な門。それは他の家とたいして変わりは無いのだが、問題はその大きさだった。寥が呟く。

「……でか」

只でさえ広い近隣の家々が庶民の住む家と同等に見える程の大きな(大きな、以外の形容詞が見つからない位大きい)武家屋敷に、本多という木の表札がどっかりと構えていた。