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第壱話「自殺行為のアイドル」

「……」
「綾女ちゃん! 今回もオリコンチャート1位だよ!」
「……そうですか」
嬉しくない。だって貴方達は、金の為に私を歌わせるのでしょう……?
「……」
私も売れているから、金の面で苦労したことはない。でも、お金しか得られない人生なら……。終えてしまいたい。

「……」
ここから落ちれば、私の望みは叶う。
後悔はしない、悲しみもしない。……恐れさえもない。
「……」
初めて笑った。誰も見ていない所で初めて笑った。
「……さようなら」
金だけが蔓延った醜くて汚い世界。
景色がゆっくりと流れて行く。それは落ちて行く私にとってのことで。周りの人は驚いて、そしてそれは一瞬の出来事……。

『嗚呼、死ネル』

喜びが込み上げてくる。これ以上にない喜びが全身を駆け巡る。

『嗚呼、後少シ』

この空間がもどかしい。地面にあと少しで届くのに、まだまだ遠い。

『嗚呼、終ワル』

地面と私の身体が、ぶつかった……。