二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Prologue ( No.3 )
日時: 2010/05/27 15:56
名前: 日向 (ID: zRIiH/oV)

夕陽が落ち、辺りが真っ暗になった満月の夜。
あたしは自室のベッドで寝転びながらカイト兄から貰った【魔法の仕組み〜基礎編〜】を読んでいた。
「えっと・・・・・・、【魔法元素は火水風土光闇の6つで、人間はそれぞれの属性で魔法が使えるようになっている】、か」
本のあった一文を読んだ後、あたしは本を閉じて枕元に置いた。
あたしがやりたい事。その答えは見つからない。憂さ晴らしに魔法関係の本を読んだけど、答えを遠まわしにしている。
どうしようか、と思っていたその時、自分の本棚にある革製の本に目をやった。
「そういえば、あの【開かずの本】の中身って何だろう・・・・・・?」
【開かずの本】とは、あたしは生まれた時からある古い本のこと。
鍵はしてないというのにページが開かないとある意味謎な本。
幼い頃のあたしはずっと本を開く努力はしたが水の泡。それ以来あの本は7,8年くらい放置状態だ。
「・・・・・・叔父さんに聞いてみよう」
お父さんの弟である叔父さんならきっと分かるはず。
そう思ってあたしは【開かずの本】を持って居間に向かって歩き出した。

居間に着くとオスカー叔父さんとケイラ叔母さんがお茶を飲んで団欒していた。
「ん?リクか。どうした?」
無精髭を伸ばしていかにもワイルドな叔父様のような雰囲気を持つ叔父さんにあたしは手に持っていた本を見せる。
「この本さ、どうやったら開くの?」
あたしの質問に叔父さんは黙って立ち上がり、あたしの近くまで来て持っていた本を取り上げてしまった。
「リク、今日はお前に話したいことがある。ちょっと座ってくれないか?」
「? うん」
訳も分からずあたしは素直に座る。それと同時にケイラ叔母さんが立ち上がった。
「私は少し席を立たせて貰うわ。ゆっくりと話しなさい」
「・・・・・・ああ、分かってる」
「?」
叔母さんはそう言って居間を出てしまった。
二人きりになった空間にはカチコチ、と振り子時計の音しかしなかった。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
沈黙の中、叔父さんはフゥッと息を吐いてあたしの瞳を見た。
「・・・・・・リク。お前は亡くなった両親の事は一体何者なのか、疑問に思った事はないか?」
「・・・・・・え?」
叔父さんの質問にあたしは困惑した。両親は生まれた頃から居なく、二人とも魔法使いだった事しか知らない。
今更疑問に思っても仕方がない事。
「特に無いよ。お父さんとお母さんが魔法使いだった事しか分からないから」
「・・・・・・そっか」
いつもの口調で話したあたしに叔父さんは目を伏せて顔を下に向く。
「・・・・・・実は、お前のお父さん、俺の兄さんはただの魔法使いじゃないんだ」
「え?」
その言葉にあたしは困惑の顔で叔父さんを見る。
「お前のお父さん、ジャック・ティオーラは【暁の魔法士】と呼ばれる最高魔法士だったんだ」
「最高魔法士・・・・・・?」
「ああ、魔法士の階級では一番トップの地位の事だ。ジャックはその地位にいたんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
そんなのは初耳だ。今までお父さんは普通の魔法使いだと思っていたのに、そこまで凄いとは思わなかった。
「・・・・・・・・・じゃあ、お母さんは・・・・・・?」
聞いてはならない。でも、聞かなければならない。そう本能は告げていた。
「・・・・・・・・・・・・」
しかし、叔父さんは黙っていた。きっと言っていいのか迷っているのだ。
「・・・・・・リク。お前は、魔法に長けた一族の事を知っているか?」
「・・・・・・それって、【古代種】の事?」
古代種とは、魔法に長けた長寿の一族。魔法が人にでも使えるようになる前に最初にその力を持った一族の事。
古代種は魔力が強く、呪文を言わずとも魔法が使える。人間の姿をしている為あまり見分けがつかないらしい。
今はミルス・クレア魔法院で古代種が二人いる事しか知らない。
本来なら魔法学校でも習う事でもあるが、普通学校でも基礎の基礎として習っている。
「でも、その事とお母さんとは関係があるの?」
「・・・・・・ああ」
一瞬、叔父さんの目が真剣さを宿っておりあたしは少しビクついてしまう。
そして、叔父さんは渇いた唇で口を開いた。
「お前のお母さん、リーシャは・・・・・・・・・・・・古代種の一人だったんだ」
その言葉に、あたしは頭の中が真っ白になった。