二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【烈人と玲菜が】ボカロで学園【コラボってみた】 ( No.43 )
- 日時: 2010/06/29 20:20
- 名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
第四話:好きだなんて、言えないよ
がし、と腕がつかまれた。あったかいというよりもむしろ熱い体温がじんわりと伝わってくる。
力強く、振りほどけそうにない手があたしの腕を掴んでいる。
「……え、……?」
一瞬頭の中が真っ白になる。なぜ腕をつかまれているのか、誰につかまれているのか。
全くわからなくて、いやわかっているはず。けどなぜか頭がそれを理解しようとしなくて。
まるで体全体が心臓になってしまったかのように、ばくばくと音が鳴る。
「え、……ぁ……?」
声がかすれる。体が火照る。がくがくと体が震えて、つかまれた腕から広がっていく体温に体中が硬直していく。
ゆっくりと、振り向く。あたしの予想が正しければ。ただし、ければ。
あたしの腕を掴んでいるのは〝レン〟。なんで、レンが? レンがあたしの腕を掴む——つまり、引き止めるの?
その意味がどこにある? どうしよう、どうしよう!? やばいよ、可笑しくなっちゃうよ!
レンであってほしいと願いながらも、レンだったらどうしようと不安が押し寄せる。
「……れ、……」
けれど、振り向いて見えたのは。
あたしの予想通りに、レンがあたしの腕を掴んでいる光景だった。
「ん……っ……?」
なんで? どうすればいい? 熱い、顔が熱い。体が熱い。
レンはなぜか哀しそうな目をしていて、あたしを見据えていて。
今にも泣き出しそうで、それでいてしっかりとしていて。
いつもは冷静なレンだけど、冷静に見えるけれどこのときは確実に冷静ではなかった。
「……あ……」
思わずじっとレンを見つめてしまうと、レンが少々顔を赤らめながらあたしの腕から手を離した。
熱い熱いレンの体温が、腕に残っていた。
「……ご、ごめん……」
ふっとレンが俯いて、そう呟いた。そういわれても、あたしはどうすることもできなかった。
このまま去ればいいのか。それともレンになにか言葉を掛けるべきなのか。
できることなら前者を選びたかったけど、そんなのあまりにも気まずすぎる。
明日には席替えして離れてしまうのだから、明日はいっぱい喋っておきたい。
こんな空気のまま別れても、明日どぎまぎしてなにも話せずに終わると思う。
だからなんとしてもあたしは、誤魔化すというか……とにかくそういうことをしておかなければならなかった。
というか、こんなこと考えるぐらいなんだから——ああ、あたしはレンのことが好きなんだ。
きっと、大好きなんだ。
「えっ、と……あ……」
何も言えずに押し黙ってしまったレンを見て、あたしが何とかしなきゃいけないなと思った。
このままだと「じゃ、じゃあまた明日な」なんていわれて練習に戻られるに決まっている。
なんとか、しなきゃ。けど、どうすればいいんだろう?
下手になにかいっても、多分逆効果。じゃあどうするべき?
『告白しちゃえ』
——ああああたしのばかばかばかばかーっ! なななんでこんな時にミクの言葉を思い出すの!?
告白? そんなのできるわけないっ、きっとフラれて終わり! 嫌だもん、そんなの。
フラれて気まずくなるぐらいなら、今のままがいい。今のままの友達がいい。仲良しがいい。
でも心のどこかで『告白したい』と思ってるあたしは、欲張りなのかな。
「ご、ごめん。じゃあ、また——」
だめ! もうレンが行っちゃう。このまま別れたら、明日あたしまともにレンに顔を合わせることができない。
だって、腕に残るレンの体温がじわじわと体中に広がって……心臓は破裂しそうなぐらい、波打ってるんだから。
こんな状態で夜を迎えたら、寝れずにどきどきしながら夜を過ごすことになる。
どうすれば、いい?
『告白しちゃえ』
……っだからあ! 告白なんて、できるわけないじゃん。レンがあたしのこと好きなわけ、ない!
でも、どうすればいいの? こんな状況、予想なんてできるわけないよ。
あたしはどうしたらいいの? ねえミク、後で責任取ってよね。
「——明日な」
そんなことを考えてるうちに、レンがそう言って体育館の中へとぱたぱたと走っていった。
……だめだったよ。ごめんね、ミク。あたしには、告白なんてできないんだよ。
あたしにはそんな勇気、ないもん。
もっとレンと喋っていたい。
できることなら、付き合いたい。
それが本心。
はっきりとわかった、『好き』の気持ち。
けど、伝えることなんてできないよ。
あたしはまだ、レンといっぱい楽しく喋りたい。
あたしは、あたしは————…………
それでいいとかだめだとか、もう、わかんないよ
四話*えんど