二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 猫と犬 【黒執事】 ( No.6 )
- 日時: 2010/07/31 20:58
- 名前: アリス (ID: /jbXLzGv)
02匹 その執事、爽快
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ドレスの上にコートを羽織り、日傘を片手に持ち準備万端。
既に呼んでいた馬車に乗り、アリスとグレイは屋敷から出た。
「グレイ…この馬車遅いわ。急がせて頂戴。早くシエルに会いたいのよ」
「イエス・マイロード」
グレイは颯爽と扉から外に出ると、馬車を動かしている人の隣に座った。
「うわぁ!?」
「お嬢様がお待ちかねです。悪いのですが、急がせて貰いますよ」
にっこりと微笑むと、グレイは呆然としている操縦士から鞭を奪い取る。
そして鞭を馬に当て、速度を上げた。
腰を抜かす操縦士。
中でシエルに会えないかと幸せに浸るアリス。
馬を急がせるグレイ———。
その光景は、周りから見ても不思議なものだったらしい。
暫くして、操縦士を含めた三人はファントムハイヴ家の屋敷前に着いた。
「本当にシエルにピッタリな威厳と風格のある建物よね…♪」
「お嬢様、行きましょうか」
グレイはアリスに手を差し伸べる。
それをアリスはありがとう、と呟くと手に取った。
屋敷の扉が開き、中からシエルが現れた。
アリスはドレスの裾を持ち上げ、シエルの元へと走り出した。
シエルは困った様に眉間に皺を寄せながらも、駆けて来るアリスを見つめていた。
アリスはシエルに飛び付く様に抱き付いた。
「アリスッ!!お前また…ッ!!」
「もう…一応私シエルより、年上なのよ?その話し方はないわよ?それに今回此処に来たのにも、理由があるんだから♪」
少々迷惑そうにシエルは、溜め息を漏らした。
アリスはそんなシエルを見てから、一通の手紙を何処からか取り出した。
シエルはその手紙を見て、真剣な眼差しになる。
「まぁ良いでしょう、“御姉様”。僕も貴女に聞きたいことが幾つかある」
「くす…本当に仕事以外では、私に一切話してくれないのね。昔はもっと、私に信頼抱いてくれてたのにね」
「…入りましょう。風が出て来た」
アリスとシエル、そしてグレイは屋敷に静かに入った。
「とりあえず部屋にでも入らないと、落ち着かない。セバスチャン。御姉様達を僕の部屋にお連れしろ」
「イエス・マイロード。アリス様、坊っちゃまの部屋は此方で御座います」
セバスチャンに誘導され、広い屋敷を見渡しながらアリスとグレイはシエルの前から去る。
シエルは一人悲しげな顔をして呟いた。
「“あんなこと”があっても…アリスの僕への態度は、変わらないんだな…」
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シエルの部屋に案内されたアリスは、グレイとセバスチャンを部屋から出した。
無論、それはすぐに来るであろうシエルとの話の為だ。
ガチャッ———
扉が開き、シエルが入って来た。
「すまない、探し物があってな」
「ううん、良いのよ。分かってるわよね?私が此処に来た理由———“猫”として来た理由ぐらい…」
「お前とは長い付き合いだ。もう一応性格ぐらいは、分かってるつもりだが」
アリスはクスリと微笑み、机の上に座る。
アリスは懐から“あるもの”を出した。
それは、女王から渡された手紙。
それを意味するは、女王がまた“憂いを晴らして貰いたい”ということだ。
「貴方にも渡されてるこの手紙…女王はどうやらまた、貴方と私をお呼びの様ね?」
「もう既に調べ始めている。先日ロンドンで起こった、大火事についてだ。いつもお前は面倒臭がって、仕事をしないからな」
先日ロンドンを恐怖のどん底に陥れた、大火事。
犯人が自首し、捕まえられたのだが謎めいた言葉を残し、犯人は逃走したのだ。
謎に包まれた、挑発的な一言だけを残し———。
『“猫”にも“犬”にも俺は捕まえられない…俺は、ある方に守られているからな…』