二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 凍りつく花、 〔テニスの王子様〕 ( No.17 )
- 日時: 2010/07/29 18:38
- 名前: 黒百合 (ID: TtH9.zpr)
- 参照: 壊さないで、壊さないで。 普通が1番なんだから。
幼稚舎からエスカレーター式。
綺麗な校舎に、充実した設備。
誰が見ても1目で解る、お金持ちな学校の図だ。
そんな氷帝学園に在る、個性の強い人物が集うテニス部。
正レギュラー・準レギュラー・一般、と複雑な内部構造。
とりわけそこの正レギュラーは、個性が強いどころではなく、とても中学生とは思えないトコロがある。
その中学生とは思えない顔立ちに、体格。
部長の跡部を筆頭に、
ホストのような大人びた雰囲気を纏い、学園中の女子の目を釘付けにする。
昨年は青春学園を抑えて、都大会制覇。
関東大会準優勝で全国大会出場・・・・・・、とホストの様な正レギュラーは優秀な戦歴を持ち、
関東・全国でも名の通った名門校と化していた。
そんな氷帝学園テニス部の、マネージャー。
特に勉強が出来るわけでもなく。
特に運動が出来るわけでもなく。
かといってそれほど可愛いわけでもない。
等身大の普通の女子中学生である。
学園中の女子を擒にする、
正レギュラー達と常に行動を共に出来る、おいしい立場な筈のマネージャー。
だが、特別扱いされるワケでもなく、必要以上にちやほやされるワケでもなく。
彼女はそれなりに過ごしている。
それなりに・・・・・・・・・、彼らと絆を造りながら。
3年間、その普通さ故に、彼らに親しまれてきた。
001:普通的日常 朝練ver.
「ふわぁ〜あぁ」
「うわ、大欠伸っ」
「うるさーい」
時刻はまだ朝の6:00。
いつもならまだ布団の中の夢の中。
しかし此処は、氷帝学園テニスコート。
「今日は早いんだよー、朝練の開始時間ー」
そんなコトをぼやきながら、ちゃくちゃくと練習の準備を進める。
「仕方ねぇだろ! コンソレーションで5位になって、都大会決まったんだからよ!」
「はいはい。 そーだねぇ」
「ったく、マネージャーも気合い入れろ! 美耶!」
美耶と呼ばれた少女は、隣にいる青い帽子を被った少年を見上げる。
「・・・・・・、何だよ」
そして、眠たげな表情[カオ]は何処へやら、いつものヘラッとした笑顔を見せる。
「ん——? なーんか、見慣れないなぁ、と思って」
「悪ぃかよ、」
「いや? 似合ってるけど」
「な?!」
顔を赤らめる宍戸が、可愛いなぁ、と思ったり思わなかったり。
美耶は言葉を紡ぐ。
「レギュラー、守れて良かったね」
宍戸は、まだ納得していないような表情だったが、照れくさそうに笑う。
「まぁ、な」
此処に、正レギュラーを不動のモノとするため、土下座をして断髪までした男がいる。
それが、宍戸亮。
テニス馬鹿であり、純情少年であり。
そのため、口が上手い筈もなく。
「えと、あ「さーてと、練習始めますか! ・・・・って、跡部いないじゃん!」・・・テメェ、ワザとか?!」
「えぇ、なにが?!」
“ありがとう”の5文字も、スラッと言えなかったり。
「朝っぱらから元気やねぇ、お2人さん」
「こっちは眠いってものよぉ!」
関西弁の青光りする髪の少年と、ピンクのおかっぱで小柄な少年が近づいてくる。
「あ、」
「侑士! 岳人!」
美耶が名前を呼べば、侑士はヒラヒラと手を振った。
岳人は、無駄に飛ぶ。
「あ、2人とも! 跡部見てない?」
「跡部・・・・・・? 見てへんけど。 どないしたん?」
「なんか話があるってさ、昨日メールが」
「せやけど、まだ来とらんみたいやな」
「そう。 しょーがないから、部室のほう見てくる!」
美耶はすたすたと部室の方へ歩く。
後ろ姿でも、不機嫌なのが伺える。
「怒ってるぜー、美耶」
「大丈夫やろ、いつものコトや」
宍戸も、逆方向のテニスコートへ向かって歩き始めていた。
「あーあ、あっちもご立腹だぜ?」
岳人は侑士を見上げながら言う。
侑士はため息。
そして、不敵に微笑む。
「・・・・・・、あれも、いつものコトや」
———部室———
「あーとーべー!」
美耶は部室を覗いて大声を出す。
「・・・・・・、此処にもいないよ?」
誰に言うもなく、1人ごとを呟く。
「跡部部長なら、テニスコートです」
「うおわ?!」
奇声を発して振り返ると、そこには後輩陣が。
「何してるんですか、海神先輩。 本当に駄目ですね」
「待て待て待て。 何が駄目なのかさっぱり解らないんだけども!」
「あはは、全部じゃないですか?」
「ちょーたろーくん!!」
厳しいお言葉を後輩に掛けられ、美耶は部室から出る。
表情は、やっぱりヘラっと笑ったまま。
「そいう、ヘラヘラしたトコロが、駄目なんですよ」
日吉に追い打ちを掛けられるが、いつものこと。
「いいじゃない。 それじゃ、遅れないようにね」
「海神先輩じゃないんだから、大丈夫です」
「このヤロっ」
他愛のない会話は続く。
美耶はこの2人と、そこそこ仲が良いようだ。
「にしても、跡部さんと何か話ですか?」
進み出した美耶に、長太郎が呼び止める様に毒気のない瞳で質問する。
「さぁ・・・、なんだろね? ホントは、テニスコートで話があるって昨日メールがあって・・・」
「じゃぁ、テニスコートにいれば良かったじゃないですか」
日吉から、ツッコミ。
「その、だって遅いから。 こっちのほうに先に来るかなって思って」
「へぇ」
「自分が呼んでおいてさぁ」
「えと、」
「ホント、俺様何様、跡部様ってね・・・、あのナルシストめ」
「良い度胸じゃねぇか、あーん?」
「なんでもないです。 跡部様」
即座に態度を変える美耶。
声で解る。
後ろには跡部と、おそらく樺地も。
「たく、何やってんだ、テニスコートにいろって言ったろ」
「ごめん・・・・・・って、跡部が来るの遅いからじゃん!」
「待ってろっつったろ。 待ってろって!」
「ごーめーんーなーさーいー」
舌打ちして美耶を見る跡部。
どちらにも反省の色は見られない。
「それじゃ、俺たちは行きますから」
日吉の声で、その場の空気が変わる。
「もうそんな時間か」
跡部は部室の時計を見た。
「・・・・・・、ねぇ、それでなんの話なの?」
美耶は跡部に尋ねる。
すると、気のせいなのかそうでないのか———、跡部を少しだけ不機嫌そうな顔をした。
「跡部?」
「————————————それは、また今度だ」
「は?」
疑問符が浮かび上がる。
「ちょ、跡部?!」
美耶はテニスコートに向かう跡部のジャージを掴んだ。
「気になるじゃん!」
「気にするな。 気にしたら死ぬ」
「嘘?!」
跡部に、振り回されっぱなし。
後輩に、馬鹿にされっぱなし。
同学年とは、ただのトモダチ?
「樺地、ジローを起こしてこい」
「ウス」
「美耶は、そこのボールを運べ」
「はーい、」
それでも、それが普通的日常。
普通の普通な、朝の練習。
1番しっくりくる、普通的日常朝練ver.