二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  凍りつく花、 〔テニスの王子様〕   ( No.29 )
日時: 2010/08/03 20:09
名前: 黒百合 (ID: TtH9.zpr)
参照: “スキ” 一言で壊れてしまう。 大切なこの関係が、一瞬で。

 

 004 謎的発言 携帯ver.




「たっだいまー」

家のトビラを開け、大きな声を出す。
リビングで食事をしていたらしき母が顔を出す。

「おかえり」
「遅くなってごめん、」
「良いわよ、どうせ隼人のトコロ行っていたんでしょう?」
「あぁ、そうだよ。 今日は部の皆も一緒に」

という具合に、母と話をしながら夕食を済ませ、美耶は2階の自分の部屋へと階段を上った。



———美耶の部屋———


「ふぅー、今日は疲れたなぁ」


そんな独り言を呟き。
ベットへダイビング。
そして、携帯を開いた。
画面に映るのは、“白石蔵ノ介”という名前。

———蔵に、電話しようかなぁ

そんなコトを考えながら、登録された幼なじみの番号を押す。


『もしもし。 美耶。 久しぶりやなぁ』


落ち着いていて、優しげな彼の声。
聞き慣れた懐かしい声に、美耶は何故か安堵する。

「そんなに久しぶりでもないやろ、蔵」

電話の向こうの大阪弁の相手に話す時だけ、美耶は関西弁へ戻るようだ。
自分でも、不思議に思う言語感覚。

『そうかぁ? 美耶、3年なってから、めっきり電話の回数減ったで?』
「何でそんなん数えてるんよ」
『数えんでも分かるほどっちゅー話や』
「ふーん?」

美耶は自分でも意識していなかったため、曖昧な返事をする。

「んー、まぁ、皆と仲良くやってるし、蔵とこうしている時間、減ったかもなぁ」

美耶が思いついたようにそう言うと、白石は少しだけ黙る。
沈黙が訪れる前に、美耶が口を開こうとすると


『解った、スキな人でも出来たんやろ!!』


と、底抜けの明るい声。

「はぁ?!」
『図星やな? その反応。 んんー、絶頂!!』
「意味解らんこと言わんといて。 それから、耳元で五月蠅いわ」
『ええやん。 それより、誰や』

声だけで解る。
絶対に、電話の向こうで馬鹿にした笑みを浮かべている。
美耶は頬を膨らませて、


「だから、意味解らんこと言わんといて。 スキな人なんか、おらへんわ」


実際そうだ。
クラスではあまり男子とは話さないし、仲の良いテニス部の皆でも、“恋愛対象”と意識したコトはない。

『残念やなぁ、』
「何がやねん」
『まぁ、でも、何かあったんとちゃうか?』
「何もにあけど・・・ なんで?」

白石は黙り込む。
しばらくの間、2人の間に沈黙が流れた。

「蔵?」

美耶が耐えられず、白石に呼びかける。

『ん? あぁ、悪い。 それじゃ、明日早いから、またな』
「え? ちょ、あ!!」

美耶は耳に当てていた携帯を見る。


「切れた・・・」


結局、白石の考えは謎のまま、一方的に切られてしまった。

「意味解らん・・・」

そのまま、携帯を閉じる。
僅かに、幼なじみへの苛立ちを感じながら。







(さぁ、引きずり込んであげる。 ————————狂おしい愛の中へ)





携帯が光った。
着メロも流れる。

「あれ、メール」

美耶は手に取り、開く。

「誰だろ、知らないアドだ」




















              『黒キ百合ニ貫カレテ倒レシ氷ノ戦士タチ』




















たった一文。

「・・・・・・、何、コレ」

たった一文の、メール。
件名も何もない。

「イタズラメール、かな」

美耶は少しの間それを眺めていた。

「こーゆーのは、削除したほうがいいよね」

自分自身に言い聞かせる様に、「削除削除、」と何度も呟く。


「怖・・・」


それだけ。
それだけだった。
たった一文の、不気味な文章。
ただの悪戯だ。
感じたのは、それだけだった。