二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [銀魂]拝啓、大嫌イナ神様ヘ。 |1up ( No.17 )
日時: 2010/08/20 20:12
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: ALFqxRJN)

■雲と共に

蝉の鳴き声が喧しいある暑い夏の日。

昼過ぎの村塾。
縁側に4人の子供が並んで座っていた。
子供達の手には切り分けられた西瓜が握られている。

「あ、にゃんこ」

空を眺めていた銀時が不意に声をあげた。
其の頬には西瓜の種が一粒張りついている。

「何処だ銀時! にゃんこは!?」

銀時の隣で桂は異常な反応をみせると辺りを忙しなく見回した。

「うるせーな。猫なんて珍しいもんじゃねェだろ」
「貴様にはにゃんこの愛らしさが解らんのか!」

猫の愛らしさを語り始める桂を無視して高杉は西瓜を食べ続ける。
其の時、ずっと空を見上げていた無兎が口を開いた。

「ちがうよ、こたろー。そらににゃんこがいるんだよ」

無兎は空を真っ直ぐ指差した。
高杉と桂、そして銀時が指の先を辿ると其処には青い空に白い雲がぽっかりと浮かんでいる。

「あのくも、にゃんこみたいなかたちしてる」

無兎は楽しそうに雲を目で追う。

「そうか? 雲は雲だろ」
「うわ、高杉には夢がないなぁ」
「無兎俺にはにゃんこに見えるぞ」
「ねぇ、くもってたべれるの?」

無兎は今度は遠くの大きな入道雲を指した。
まるで、綿菓子のようにふわふわな入道雲である。

「そりゃ、食えるに決まってんだろ?」
「阿呆か食えるわけねーだろ。何嘘教えてんだ銀時」
「へぇーふわふわであまそうなのに……じゃあ、くもはどうやってできるの?」

無兎は首を傾げて高杉と桂と銀時を見つめる。

「どうやって、考えた事もなかったな」
「アレだろ。どっからか流れてくんじゃね?」
「どっからって何処なんだよ」
「うーむ……」

意外な難問に4人は難しい顔で空を見上げた。
雲は徐々に形を変えていく。

「あ、おさかな」
「どの雲だ?」
「あのちっちゃいの」
「あー……確かに魚に見えなくもないな」
「無兎、あの雲は何に見える?」
「あれはねー……」

何時の間にか西瓜を食べる手を止めて。
何時の間にか外に飛び出て雲を探して。
そして何時の間にか空が茜色に染まっていく。

「そうだ、松陽せんせーも呼んでこよ!」
「待て銀時!」
「俺等もいくぜ!」
「せんせー、いまなにしてるかな」


(雲と共に)
ゆったりと流れる彼等のある暑い夏の日。