二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.11 )
日時: 2010/08/31 17:43
名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: RRvZltlr)


 第六話 高雄

 *
 黒田さん
 *

 人の浪が押し寄せてくる。流されそうなので、建物と建物の間にある、猫が入るような隙間に入った。
 若田によると、こういう状態を台湾と中国では、人山人海と形容するらしい。
 しかし、この人の山と人の海のなかで、自分は孤独だった。
 今日は金曜日。雷門は創立記念日でお休み。
 朝だからだろうか、町を行き交うのは、きりりっとしたサラリーマン、リュックサックを背負った小学生——若田によると台湾の子どもはランドセルを使わないらしい——や談笑する中学生、自転車をこぐ高校生など、様々だ。
 にしても、なんて暑いのだろう。
 台湾と言うところは黒田さん曰く冬も暑いらしい。
 そうだ、黒田さん。
 俺はなんの為にお年玉を全部使い果たしてここまで来た?
 俺にだってわからない。 
 ただ、黒田さんに抱きつかれた瞬間、脳が麻痺して、かわりに口や腕や足が勝手に動いて俺は狂ってしまった。
 指令をださない脳を放っておき、口や腕や足は勝手に動き出し、手は荷物をもち、口は切符を買い、足は俺を飛行機に乗せた。
 そして今、俺は台北(タイペイ)にいる。
 
「若田、」

 とケイタイに話しかける。若田がぼりぼりポテトチップスを食う音が聞こえた。

「黒田さんはどこに?」
「やっぱ気になるんだ」
「あたりまえ」

 ああ、口よ、閉じろ!なにデタラメを言っている。
 恥かしさに朱に染まる頬とは別に、口はぺらぺらと動く。

「りえりは高雄の中学に——」
「は? 高雄?」
「うん、高雄。因みにこの名前は日本人がつけたんだよ」
「黒田さんは高雄の中学にいるのか?」
「うん」

 俺は今、台北にいる。
 
「それを早く言え——!!」

 バスに何時間も乗る。少なくとも六時間以上。
 若田が、尻に花が咲かなかった?と聞いた。台湾では、座りつかれたときそんな表現を使うらしい。
 高雄につくと、俺はまずホテルにチェックインした。
 また明日、その中学に行こう。

 次の日。
 その中学に行って二年生の教室を全部探して回った。九つもあったぞ、二年生の教室。
 そして俺は、一番最後の教室、二年九組でやっと見つけたのだった。
 黒田さんを。
 私服を着てもいいらしい。黒田さんは短パンに半袖のTシャツだった。
 教室中が笑っている。先生がなにか面白い事を言ったのだろうか。
 その時、先生の顔から笑みがふっと消えた。
 先生は生徒を引き連れ、教室から出て行った。
 どこへいくつもりだ!
 体育の授業をするつもりか?
 ついていけるだろうか、あそこまで。
 俺は声をかけた、黒田さんに。

「黒田さん!」

 でも、黒田さんは振り返らなかった。
 誰かの腕を掴んでいる。
 男だ。

 
 *
 彼女には、他に好きな人が出来たんだ。
 *