二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.49 )
日時: 2010/09/11 14:35
名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: v20iF7Or)


 第二十四話 二人の少年の会話の内容

 *
 あぁ、お前が誰のこと好きかも知ってるぜ?
 *
 
 切先と若田は、公園のベンチに座っていた。
 若田の黒い髪の毛、じつは天然パーマで、ふわふわしている。
 ノーフレームの眼鏡のしたの黒い目が、悪戯っぽく輝いてる。
 口元にはにんまりと笑みが浮かんでいる。
 基本、若田はあまり大口を開けて笑わない。
 唇の両端を吊り上げてにんまり笑う。それが彼の笑い方。
 若田にはそんな笑みが似合っていた。
 雷門の制服を着て、バッグからノートパソコンを出し、台湾のオンラインゲームを遊ぶ若田。
 
「うぅん、絶命の炎では無理か……じゃぁどの技使おうかなぁ?」
 
 学校では物静かで大人しい秀才として知られる若田。
 だが、学校を出れば一変、オンラインゲームにハマる少年になる。
 ゲームのラスボスを倒すのに失敗して、はぁ、と溜息をつく若田。
 そんな若田の隣で、「ロビン・フッド物語」を読む切先。
 細長い顔に切れ長の瞳。束ねた黒い髪が風に揺れる。
 平和な時間を過ごす二人。若田はオンラインゲーム、切先は本の世界に入り込んでいる。
 こうなったら誰もこの二人を止められない。
 若田を止めるには母親の声、切先を止めるならば切先を擽らなければ止められない。
 平和な二人には、バリアがはってある。
 だから喧騒は聞こえない。
 そう、傘美野中が壊れた音でさえ、ここには届かない。
 ふぅ、と溜息をついてパソコンを閉じる若田。ついにラスボスを倒したらしい。
 ふぅ、と溜息をついて本を閉じる切先。ついに読み終わったらしい。
 バリアの中で、悠然と談笑する若田と切先。

「レーゼのこと、どう思う?」

 若田が切り出すと、切先は思わず黙ってしまった。
 緑川リュウジは、自分の友人だ。
 そしてレーゼと緑川は、同一人物。
 
「緑川は友達だけど、レーゼは……敵」

 切先が呟くように言った。
 矛盾している、と心のどこかが言っている。

「ちょっと感じたんだけどさあ、」

 若田が呟いて、バリアが消えた。
 喧騒が聞こえてくる。
 若田は立ち上がって歩き出した。滑り台の上まで上る。高いので面白いと子どもたちに有名な滑り台。
 その上から遠くを見ると、ふわっとした笑みを浮かべながら言った。

「どんなにちがってても、同一人物だよねぇって」
「…………?」
「偶に、レーゼから見かけるんだよ、緑川のカケラを。そして緑川からは、レーゼのカケラが見えるんだよね」
「それがどうかしたのか?」
「そのカケラはなんだと思う?」
「…………わからん」
「それはさ、りえりを思う心だよ」

 ぐっと親指で自分の胸を指差し、にやっと笑う若田。
 それから、こんな言葉を俺には似合わないよなぁ、と言って笑う若田。
 
「りえりを思う心、か」

 確かに、レーゼと緑川は黒田のことが好きだった。
 レーゼは黒田のことを生贄にすると言った。
 緑川も、普段の行動から考えて、好きなんだろうと思う。
 毎日毎日、べたべた黒田にくっついてた。
 
「そして風丸はあの二人に敵対心を持っている」
「……はっ?」
「風丸は今も好きだよ、りえりのこと」
「——でも、あいつは二見と、」
「実は俺、見てたんだよ。——あいつら二人のキスシーン」
「へ?」
「それから二見が風丸に告白した。すっごい複雑な顔してたぞ、風丸。なんか断ろうとしてた。けど、二見が泣き崩れたんですっごい焦ってたぜ」
「マジかよ」
「それで二見が告白したんだよ。ずっとずっと好きだったって。ずっと前から好きで好きですきで、たまらなかったって。あんなに激しい告白は始めてみたね。俺も風丸も気圧されてた。どうして私のことに一度も気付いてくれなかったの、ひどいって。そこまで言われたら風丸も断れないだろ。それで言ったんだよ、わかったからこんど遊びに行こう、って」
「へぇってお前どこに隠れてたんだよ」
「教壇の後ろ。あーゆーところに隠れても見つからないなんてさすがだよなぁー。で、きっちり尾行したよ」
「お前なぁ……」

 呆れる切先。若田はにっと笑って続ける。

「そしたらさぁ、向こう側を、りえりと緑川と亜風炉と南雲と涼野が通り過ぎたんだ。で、りえりったら気付いたみたいだぜ。風丸もりえりに気付いた。そん時一番りえりの近くにいたのが緑川だった。そして、これはあの二人も知らなかったんだが——緑川は、風丸に気付いてたみたいだぜ」
「お前鋭いよな」
「あぁ、お前が誰のこと好きかも知ってるぜ?」
「な、」
「一年の音無。そうだろ」
「……よくわかったな」
「なんでアタックしないかっていうと、シスコン阿仁ぃ(あにぃ)、鬼道の警備が怖いから。違うか?」
「う……その通りだ」

 顔を真っ赤にさせてもじもじしている切先を見ていると、若田は憎めない、と思った。
 それから話題を変えるべく切先を引っ張って起こすと、笑いながら言った。

「さぁて、とめにいこうぜ? ——レーゼのことを!」

 *
 りえりを思う心、か。
 *