二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.60 )
- 日時: 2010/09/17 17:41
- 名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: QCG7hJgu)
第三十話 でーと
*
それはとても幻想的な光景。
*
放課後。
赤い絵の具で塗りつぶしたような空が広がっている。
微かに残る青が赤と混じりあい、紫になって雲を彩る。
さっき雨がふったばかりか、綺麗な虹がかかっている。
それはとても幻想的な光景。
沈もうとしている太陽に照らされた空。
残った色彩に塗られた雲。
輝く光の橋。
私は校門を出ようとしていた。
実際の私よりもずっと長い影。
そんな私の影と、誰かの影が触れる。
振り返ると、一郎太が立っていた。
二見さんはいなかった。
水色の髪の毛に絡まっているような水の珠。
顔を洗ったのだろうか、水がずっと顔から滴り落ちている。
風が吹いて、前髪に隠れた瞳もこちらを見る。
私が恋した、緋色の瞳。
彼は唇を動かした。
彼の唇から出る声はまるでオルゴールのメロディーのよう。
ヴィオラのようにしっかりとした音色。
でも、ヴァイオリンのように滑らかだ。
「こんどの日曜日、暇?」
それは、私の心をときめかせる、魔法の呪文。
顔を赤くさせて俯く一郎太。
なんて可愛いらしい仕草なんだろう。
なんで二見さんを誘わないんだろうとかそんな疑問は消えていた。
「暇に決まってるじゃん」
いつのまにか、随分背が高くなっていた。
もう私より高い。
彼が小指を突き出した。
私は彼を見上げる。
一瞬躊躇ったけど、自分の小指を絡めさせた。
「ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんの〜ます。ゆびきった」
そう言って小指を話す。
ちょっと名残惜しそうに、まだ小指を突き出して、私がまた絡めてくれるか、待ってるような一郎太。
私がなんにもしなかったのを見て、ふぅっと溜息をつく。
それから顔をくしゃくしゃにして笑った。
目立たない公園。
半端じゃないほど目立たない。
だれもこない。
だけど、ステキな公園だ。
風が吹いて、花の香りを運んでくる。
キッツイ太陽の光を、大きなはっぱが防いでくれる。
「遅い」
来た人影を思いっきり睨みつけた。
コンビニのビニール袋を下げて歩いてくる。
爽やかな色の髪の毛は、空にとけこんでしまいそうな青。
夏、見ると涼しいなあって思える。
ノースリーブの白いTシャツ。上には水色の字で「wind」。
短いズボンにサンダル。サンダルはちょっと安っぽいけど、気にしない。
だって私もサンダルだもん。人に言えることではありません。
私のサンダルは青。ブルーのハイビスカスが咲いてるの。
ノースリーブの上着も、白に水玉模様。
今日はオシャレして、スカート着ました。こっちは水色に白の水玉模様。
「あぁ〜、ごめん。はい、アイス、たべる?」
苺味のアイスを渡してくれた。
彼は私の隣に腰を下ろし、ソーダ味のアイスを嘗める。
それっきり、一郎太は黙ってしまった。
どこか虚ろな目で前方を見つめ、ペロペロとアイスを嘗めている。
それから顔を僅かに動かしたかと思うと、私のアイスに襲い掛かった!
ぺろん、と赤い舌をちろちろ覗かせて私のアイスを嘗めたかと思ったらがぶりと噛み付く。
驚いて唖然としている私の口に自分のソーダ味のアイスを突っ込む一郎太。
うわわわわわ、これって間接キッスぅ!?
いつのまに無粋な狼になったんだ一郎太ぁ!
それから一郎太は私の口からアイスを引っこ抜き、続けて嘗めながらにやっと笑う。
「あっ、あんたねぇ!!!」
「美味しかった?」
「美味しかったじゃねぇっ!」
一郎太が手を伸ばし、私の手の上に置く。
暖かい。
ふわりと心が軽くなる。
一郎太が顔を近づかせた。
あっ、やばい。
近い。近すぎる。
離れろ!
って言いたかったけど、うわ、やべ。
キスしてもらえるのなら本望だなんて思ってる自分がいる。
やばい。
今度こそ絶体絶命!?
「はいはいそこまで。アイス溶けるからねー、早く食べようねー」
私と一郎太の間に割り込んできたのは——。
柔らかく長い緑色の髪をポニーテールにし、悪戯っぽい笑みを浮かべた少年。
「リュウジくん!?」
「緑川!?」
慌てて手を引っ込める私と一郎太。
そこに座ってはぁ、と大袈裟な溜息をつくリュウジくん。
「ったく、一刻の油断もならないんだから。間接キッスは許しても直接キッスは許さないからね。していいのは俺だけ」
うわ、何勝手に宣言してるの!?
大体、私はものじゃなぁあい!!!
「どういう意味だそれ」
「そのまんま。元カレでしょ。二度見さんのところに行けば」
「二度見じゃない二見だ! 黙れこのチビ!」
「君に言われたくないね。指切りなんて幼稚」
ぱぁあああっ、と顔を赤くする一郎太。見られてたのか。
舌戦を始める二人。するりと立ち上がって、私はその場から逃げ出した。
*
こいつらに捕まったら、なにされるかわかんないから。
*