二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.68 )
- 日時: 2010/09/19 00:08
- 名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: tOcod3bA)
第三十五話 三角関係が四角関係になる日
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今までの、帳消し。
*
太陽の光が暖かい。
テレビで円堂たちの活躍を見て、ネオジャパンの出番はないだろうなぁ、と思う。
だから、練習をサボって散歩する。
今頃、怒ってるだろうな。監督にキャプテン。
ぼんやり歩いている。
迂闊だった。
一匹の犬が家から飛び出してきた。
その犬の犬小屋の近くには、「猛犬注意」の張り紙。
おい、鎖! 鎖、切れてる!
いつも冷静で完璧なシュートを打つと言われた御影専修農業高校付属中学校サッカー部の一員である俺が、慌てるとき、それは二種類ある。
一つ目、犬。
小さい頃二匹の黒くてでっかいニューファランド(一匹十七キロの太っているやつ)にのしかかられて以来、俺は犬が苦手だった。
しかも困った事に、杉森と俺と山岸以外、誰も俺が犬が苦手って知らないんだ。
あと、俺はついでに猫も苦手だ。
それは初めてあった猫に鰹節をあげたら手ごと噛まれ、手を引き抜こうとしたらそれはそれで頬を引っかかれ、まぶたの上すれすれをかまれ、逃げ出そうとしたら追いかけられて足に爪をたてて噛みつかれる。
ついでに、背中をひっかかれ血がでた。
その後知ったのは、俺に他のオス猫の匂いと犬の匂いがついていたのでテリトリーを荒らしたと思われたらしいのだが。
「あっ、改。どうしたの? また犬と遊んでるの? ほんと人気者だよねぇ〜」
御影専農でのクラスメート——二年生で転校して雷門いった人だけど——であり俺の幼馴染——黒田エリこと李絵梨。
彼女は、俺が犬嫌い猫苦手なことを知らない。
ってか、いえるはずない。
彼女は動物が大好きで、猫も好きで、できれば猫アレルギーがない、もしくは猫好きな人と結婚したいとか夢見ている人だ。
猫が苦手、って言ったら、犬が嫌い、って言ったら、嫌われちゃうんじゃないか、ってちょっと怖い。
はい、と手を差し伸べるエリ。その手に捉まって立ち上がる。
彼女はまじまじと俺の着ているユニフォームを見ると、新しいチームに入ったんだ、と言った。
久しぶりに、幼稚園に遊びに行く。先生、随分老けたなぁ。
想い出のあるブランコ。あのブランコでよくエリと遊んだなぁ、と思い出す。
「私、よくブランコから放り出されてたよね。その時、改、手当てしてくれたの、覚えてる」
「……俺だってよく放り出されてたよ。しかも俺の場合は足がブランコに引っかかって、三回くらいずるずるひっぱられたりしてた……俺がちゃんと座る前に、エリが押すから」
「う……っ。ごめん。まだ許してなかったの……?」
「あと滑り台。俺がまだ立ってるのにほいっと俺のこと押すから、半分かがんだ状態で滑って地面に衝突したこともあった」
「あっ……。根に持ってたんだっ……!?」
「次にジャングルジム。俺が高いところにいるのに驚かすから。地面に衝突はしなかったけど、ジャングルジムにひっかかって、下りるに下りられない状態になったり」
「げっ……。よく覚えてるね……」
焦るエリが可愛い。
どうしたら許してくれるの? と聞いてきたエリを見る。
エリは、小さい頃から人気者だった。
彼女が好きな子は、少なからずいた。
じゃあ、今はどれくらいいるんだろう?
彼女は見ないうちに、もっと魅力的になったように思える。
ちょっぴり悲しくて、すねるように唇を尖らせた。
えっと……唇、そうか。それだ。
「じゃあ、こうしてくれたら許してあげる。今までの、帳消し」
思わず笑みが浮かぶ。
自分の唇を彼女の唇につけた。
驚くエリ。
「大好きだよ」
小さい頃から、ずっと胸に秘めてきた言葉。
*
——やっと、言えた。
*