二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.8 )
- 日時: 2010/08/29 16:34
- 名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: JXt4HhjK)
第五話 ナナ
*
そいつはなのった。ホームレスだって。
*
ぶらぶら散歩していると、あの時俺を転ばせた、一年生ぐらいの女の子が笑っていた。
蒼いワンピース、小柄な体。長い茶髪のしたで、紅の目が光る。
「あの時の」
「うん、そうだよ」
まるでケーキのような、甘ったるい、けれども鈴のようによく響く声。
綺麗な形の、珊瑚色の唇を開いて、言葉を紡ぎだす。
「私はナナ。ホームレス」
ホームレス。
その単語が脳裏で響く。
こんなに小さいのに。苦労してきたんだなあ、と思った。
ぼさぼさした髪を見れば、その髪はもうかなり櫛を入れていないと伺える。
でも、彼女の体は汚れていなかった。
自分の見るホームレスは、体が日焼けして、土や埃で汚れて、何円かお金が入ったお皿を前に何度も何度もひざまずいて。
とても哀れで、みてると悲しくなっていたのに。
はだしに蒼い簡素なワンピースのこの少女の肌は白い。
まるで家からいっぽもでたことないみたいに。
哀れむ心は湧いてこない。
その、嘲るような笑みに怒りを感じた。
お前がいなければ、俺に関わらなければ。
黒田さんとあんな関係になることもなかったかもしれないのに。
普通のクラスメートとして一年を過ごせるかもしれなかったのにッ!
「サッカーしない?」
え、と呟き、ナナをみた。握り締めた拳が自然と緩んでいく。
サッカー、て。
おしとやかなお嬢さまにしか見えないこの少女に言われると、なんか嫌な気分しかしなけど、でも、俺は、
「ああ」
頷いていた。
「いっくよっ!」
ルールは簡単。先にゴールすること。それだけだ。
ボールを蹴って走ってくる、ナナ。あの時と同じように、軽やかで無駄がない動き。
でも、スピードなら俺だって。
走って向かい、ボールを絡め取る。よし、チャンスだ。
ボールを思いっきり蹴ったと思いきや、
「風丸くん! 頑張って!」
今度は後ろ向きに転んだ。くそっ、どうなってやがる。
しかもナナのやつ、またいつのまにかどっかへ行ったらしい。
ちっ、と舌打ちして、あたりを見回す。
誰もいない。
? 誰も居ない?
さっき、確かに黒田さんの声が。
ありえないか、黒田さんは台湾にいるんだから。
台湾。
日本から飛行機で三時間ぐらいするらしく、日本との時差は一時間。
ふうっと溜息をついた。
好きでもない相手のことを考えてどうする。
そう自分に言い聞かせた。
心のどっかがずきんと痛んだのは、たぶん気のせいだ。
*
絶対に、気のせいだ。
*