二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 黒田エリの好きな人 ( No.97 )
日時: 2010/11/20 16:29
名前: 紅花 ◆iX9wdiXS9k (ID: KuHgV/y.)


 【酒の力にご用心】
 

 バーテンは溜息をつく。
 偶然鏡の前を通りかかると、彼は鏡の中の自分を見つめた。
 青い瞳は疲労を浮かべ、赤い髪はぐしゃぐしゃだ。服はよれよれ、目の下には青黒いくま。
 酷い姿だなあ、と彼は苦笑し、髪の毛を整えると、また続けて食器洗いをした。
 最近店では酔っ払った客が殴り合いを開始すると言う事件が多発し、とうとう誰も来なくなってしまったのである。
 きっと彼女もこないだろう、とバーテンは溜息をついた。

 その時、木製のドアがぎぎぎっと開き、バーテンの顔が輝いた。
 冷厳とした女性である。青い髪が肩の上で揺れ、薄い青の双眸は強い意思を目に宿している。
 茶色く簡素なチュニック、白いシンプルなズボンに編み上げのブーツ。
 外見ではなく着易さを重視した服装。——紛れも無い、この店の常連客——玲奈だ。

「やあ、ヒロト」
「玲奈! 着てくれると思っていたよ」

 にこりと笑うヒロト。玲奈はふっと笑みを浮かべてカウンターに座り、「ではエール酒を一杯お願いしよう」と言いながら、人差し指を伸ばす。
 さっきの冷然とした表情とは売ってかわって、彼女の顔には悪戯っぽい笑み。
 しかしここでヒロトの目の下のくまに気付き、玲奈は眉を顰める。

「ヒロト。——あの事件のことか」

 ヒロトの顔から笑みが消える。彼はやつれた顔で、「うん、まあね」と言って疲れたようにエール酒を用意すると、玲奈の前に置いた。
 玲奈はふーっと溜息をつくとごくり、とエール酒を飲んで続けた。

「あのなヒロト。店をやってりゃ上がりも下がりもあるものだよ。上がるのは苦しいのに下がるのは容易い。
 それに世の中は広いんだ、もっと酷いこともある。
 三年前にいったところなんてどうだ、治安が悪くて、お金持ちは威張りまくるわ奴隷になった貧乏人たちは殆どがホームレスで腹を空かせ、一人一人と倒れていく。
 ——それにくらべりゃ、ヒロト、お前は幸せだ」

 ヒロトはそっと優しい笑みを浮かべる。だろう? と玲奈は優しく微笑む。
 それから、立ち上がるとヒロトを優しく抱いた。顔を赤くするヒロト。
 ヒロトは玲奈の青い髪から漂う甘い匂いを嗅ぎながら、ふわり、と笑みを浮かべる。

「——この私が自らあんたの嫁になってやろうと言うのだからな」

 ヒロトは驚く。それから、あは、その台詞前にもいったよ、と言う。
 そうかぁ? と酒の所為で上気した頬、弛んだ目蓋のまま、彼女は顔をあげてヒロトを見る。 
 じゃあ、明日式をしようかとでも言いつつ、玲奈の体から力が抜け、彼女が地面に落ちそうになった。
 そんな彼女を受け止めて、椅子に座りなおさせ、机の上につっぷさせる。
 眠った玲奈が寝言をぽつぽつと呟いていた。

「明日から……きやま……れいなだ……」

 とても幸せそうな表情で。 

 
 *


「玲奈。式を上げるんじゃなかった?」

 酔った玲奈を負ぶって帰ったヒロトは、翌朝であった玲奈に冗談混じりでそういった。
 玲奈ははあ? と頭にはてなマークを浮かべ、眉を顰める。

「式? 冗談も休み休み言え」
「冗談? でも本気だったよ、僕に抱きつきながら言ってたでしょ?」

 え、と顔を赤くする玲奈。玲奈の弱点、それは酒である。彼女は余りお酒が飲めない体質なのだ。
 ヒロトは玲奈の口調を真似る。

「『それにくらべりゃ、ヒロト、お前は幸せだ。この私が自らあんたの嫁になってやろうと言うのだからな』って言って、抱きついたでしょ? 
 寝言でも『明日から基山玲奈だ』って幸せな表情で言ってたくせに」

 かあああ、と玲奈の顔に血が上る。
 彼女はプライドを挫かれてもう涙目である。
 それからぶんぶんと腕を振り回しながら涙目で絶叫した。

「言ってない! お前と結婚するなんてゴメンだ! 言ってない、言ってないからな! それはお前の妄想なんだから!」
「はいはい。聞かなかったことにするね。だから泣かないでね」
「泣いてないっ! 泣いてなんか無いぞ! ってか抱くな! 撫でるなぁあああっ!」

 絶叫して今にも泣きそうな玲奈を抱きかかえて髪の毛を撫でる。更に暴れる玲奈。
 もう、玲奈はこういうところが可愛いんだから。と思いながら、くす、と笑った。

 
 *


 「やあ、ヒロト」

 玲奈が木製のドアを開けて入ってきた。ヒロトは顔を輝かせた……。



 (※以下無限ループ※)



 〜あとがき〜
 久しぶりに書きます。他のところで書いたのと同じものです←
 もう永らくネタがありません。どうしたらいいんでしょう……。
 玲奈はお酒に弱いイメージがあります。なのでこうなりました←