二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.121 )
日時: 2012/10/30 23:41
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: 7K.EniuH)

 シュタイン湖から、更に西。
 桜の神木の村、エラフィタ——

「そこに、かつてのわたくしのばあやが住んでおります。彼女が昔、聞かせてくれたわらべ歌・・・
それにルディアノという名が出てきた記憶があります」
 フィオーネはまつげを若干伏せた。
「・・・ばあやさん?」
「はい。——はい? いえ、名前はソナ・フローレンスです」
「はあ。かつての、って、王家ではおばあさんが変わるって事?」
「・・・はい?」
 マルヴィナのかなりとんちんかんな言葉に、キルガが苦笑して“ばあや”の説明をした。
「ああ」
 マルヴィナ、ようやく理解。フィオーネの話は続く。
「わたくしには、どうしてもあの騎士が悪い人には思えないのです。・・・どうか皆様、あの方のお力に・・・」
 四人はちらり、と顔を見合わせ、頷く。キルガが答えた。
「分かりました。訪ねてみましょう。
——ところで、・・・メリア姫、と言う人物をご存知ですか?」
「はい・・・? メリア姫、ですか?」
 一瞬だけフィオーネの目が泳いだのを、キルガは見た。
「・・・存じませんわ。異国の姫君であられますの?」
「・・・・・・・・・。まあ、そうですね」
 そのままキルガは黙り込む。沈黙。マルヴィナはその空気に耐えかねて、思い切り砕けた口調で言った。
「・・・じゃっ、行ってみるよ。あの騎士のためにも、さ」
「ちょ、マルヴィナ。お前誰に向かって・・・」
 セリアスは当然のごとく慌てる。だが、フィオーネはそれを止めた。少しだけ切なく、笑って。
「・・・王家の人間というだけで、皆様方はわたくしを敬ってくださいます。
しかし、わたくしは普通の人間であることに変わりありません。
親しく話してくださるのなら、それ以上嬉しいこともありませんわ」
「マルヴィナ、でどうぞ。今日から友達ってことで。だから敬語は、お互いなし! いい?」
 セリアスは、一瞬呆気にとられた。この大胆さと、さっぱりした性格、そして、相当の勇気。
 こんなものを身につけている人間(天使?)など、そうそう入るものではない。
 フィオーネは十九歳だった。                ・・・・・
マルヴィナたちもまた、人間界で言えば十九歳である。つまり、表向きには同い年だ。
 呆気にとられた視線を背に、二人の会話はしばらく続いていた。
 フィオーネの表情に、笑顔が戻っていた——。