二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.126 )
- 日時: 2010/12/29 13:38
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: 6BzIL6f7)
・・・ところで。
「○×&%☆*ひゅーん。・・・・・・って、はぁるぅ・・・」
「あ。サンディの事忘れてた」
マルヴィナは今更フードから手を離す。
「・・・ヴィぃナぁーっ!! よっくも閉じ込め続けてくれたワネっ!!」
「さっきのひゅーんって何? フレーズ?」
さりげなく、・・・というか思い切り無視して、マルヴィナ。
「・・・マルヴィナ、それを言うなら“フレーズ”・・・じゃない、”フリーズ”」
つられたシェナが訂正する。
「あーっ、マジ最悪。死ぬかと思った」
「大げさな。・・・んじゃ、どうしようか。早速エラフィタに向かう?」
「そうしよう。・・・で、キルガ」
「はっ?」
出し抜けにセリアスに名前を呼ばれ、キルガの声が驚いたせいで微妙に高くなる。
「・・・さっきの質問。メリア姫の事尋ねて、あっさり引き下がったアレ。・・・説明してくれ」
「・・・相変わらず記憶力がいいな」キルガは肩をすくめ、ふっと笑う。
「・・・?」
シェナがマルヴィナに視線を向ける。マルヴィナはぼそりと答えた。
「キルガって、何か質問とかをしたら、納得いくまで聞くんだ。まぁ、すぐ理解しちゃって
滅多にそういうことは無いけど・・・その後もずっと考え込んでいたろ?
納得していないのに質問するのをやめるなんて、らしくない、って事」
「なるほどね・・・さすが幼なじみ」
「うん。・・・あれ? 言ったっけ? 幼なじみって事」
「え」
シェナは目をしばたたかせる。
「・・・おーよそ寝ぼけて間違えたってトコじゃね?」
と、話の微妙な合間に、サンディの声。どうやらキルガの話につっこんでいるらしい。
「・・・あれ? ・・・ごめん、キルガが何の話してるのかわかんなくなっちゃったわね」
「いや、いいよ。後で説明してくれりゃいいんだし」
マルヴィナとシェナが会話を慎む間にもキルガとサンディの議論(?)は続く。
「不自然だ。第一、そのルディアノという国が知られていないのもおかしい」
「んじゃやっぱデマカセだったんじゃないの? 王のいってたとーり、この国せんりょーしたかっただけ的な」
「・・・それにしては手が込みすぎている。・・・この事件にはまだ何かが隠れて・・・」
・・・三分経過。
いい加減呆れてくるような議論の長さである。
両者見かけの割にと見かけ通り、口が達者な者同士だからだろうが、ここまで来れば天晴れ者である。が、
しばらくしてその声が途切れた。
ほとんどもう会話を聞いていなかったマルヴィナ、セリアス、シェナが意識を戻す。
「・・・ふふん。反論ナシね」
言ったのはサンディ、つまり、
「・・・あれ? もしかしてキルガ、話し合いでやり込められた?」マルヴィナが尋ね、
「・・・・・・・・・そのようだな」セリアスが苦笑。
キルガが議論でやり込められるのは珍しい。
勝ち誇ったような表情のサンディと妙に落ち込んだようなキルガを見て、マルヴィナも苦笑した。
・・・ところで、何の話をしていたのかは、やはり分かっていないままであった。
微妙な空気のまま、一同はエラフィタを目指す。
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.127 )
- 日時: 2010/12/29 14:11
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: 6BzIL6f7)
エラフィタに向かう手前、マルヴィナはまたフィオーネと会話した。
ちなみに、内容はと言うと。
「今から行くのね? わたくしも行きたいのは山々ですけれど・・・なんだか、任せきりで申し訳ない・・・」
「構わないって。どーんと任せちゃいなって!」
「助かるわ。本当にありがとう」
「フィオーネは優しすぎるんだ。もっと強引になっちゃってもいいと思うよ」
「ご、強引・・・?」
「うん。つーか、ナめられてると思ったらチョップ一発かますくらいでもいいかと」
・・・余計なことを吹き込むな、と言われそうな会話であった。
と言うわけで、四人はシュタイン湖を西へ歩く。
ふうわりと、暖かい風が吹いてゆく。
エラフィタの地方は、一年中が春だ。暖かくて、優しい。マルヴィナは春が好きだった。
「あっ、あれじゃない? 桜が」
シェナが微笑んで、ひらり舞い落ちた桜を器用につまむ。
「お、すげぇ。俺そーゆー器用なこと無理」
「コツをつかめば簡単よ」
「・・・コツつかめば、桜をつ[か]むのが簡単・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
瞬時にして、計六個の冷めた視線がセリアスに突き刺さる。
「・・・間違えました。つ[ま]むのも」
「ワザとだろ」
マルヴィナのツッコミは容赦ない。
桜の香りが本格的になった頃、夕方近くに四人はエラフィタの村に着く。
「わぁ・・・のどかだねぇ」
「シェナみたいに意外と凶暴か痛っ」
瞬時にセリアスにシェナチョップ炸裂。笑顔で。
「・・・聞こえる? 誰かの歌声」
「聞こえるよ。・・・あの家かな」
エラフィタの村はドーナツ状の形をしていた。真ん中の穴の部分に、桜の神木が悠々とそびえ立っている。
そのドーナツには、欠けた部分がある。そこは川が流れていた。
今ちょうど立っている位置とその家の狭間に、その川は流れていた。
「おや、聞きほれたかい?」
歌声を聞く四人に声をかけたのは、村の住民と思しき老人。セリアスのいた方向から、大きな株を手にやってくる。
「綺麗な声だね。あそこの家の人?」
マルヴィナが初めからもろタメ口で問い返す。
「ああ。彼女はこの村一番の歌の名手、ソナばあさんさ。
昔その歌声を見込まれてセンなんちゃらって城で働いていたんだと」
四人は一度静まり返る。
「・・・お、おばあさん!? あの声で!?」
まるで超清楚な若い娘のような歌声だった。なんて凄いんだろう——マルヴィナは思った。
「あの、その人、あそこに住んでいるんですか?」
シェナだ。銀髪の美少女に問われた老人の顔が一瞬にやけ、セリアスが咳払い。
老人は慌ててその咳払いの意味を察し、作り笑いをする。
「い、いやぁ、はは。あの家は、クロエばあさんの家だ。ぐるっと神木の周りを囲むように回っていけば、たどり着ける」
「・・・こんな近くにあるのに?」
「川が邪魔しとるからの。——飛び越えてみりゃ、話は別だが」
マルヴィナは右足を少し引いた。やってみるつもりらしい。
川幅はまあまあ広い。だが、いける。だって天使だ!
だっ、と走る。
「おっ、いい助走だ——あっ」
老人は、最初感心、したが、・・・すぐに落胆した。
飛び越えようと踏み切った場所は不幸にもぬかるんでいて、ズルリと滑り——
あえなくマルヴィナは、どぼん、と川に落ちたのであった。