二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.136 )
- 日時: 2010/12/30 15:23
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: nF4l3yrg)
「北」
マルヴィナは、いきなり簡潔に言う。
「・・・北?」
「うん。わらべ歌、三回聴いてきたから間違いない」
聴きすぎだ。
「覚えてきたけど・・・歌おうか?」
「・・・ああ、頼む」
「ん」
マルヴィナは、すぅ、と息を吸った。春風が、優しく吹き過ぎる。
ヤミにひそんだ魔物を狩りに、黒バラの騎士が立ち上がる
みごと魔物を打ち滅ぼせば、しらゆり姫と結ばれる
騎士の帰りを待ちかねて、城中みんなで、うたげの準備
それから、騎士様、どうなった?
北ゆく鳥よ、伝えておくれ。ルディアノで待つ、しらゆり姫に、
黒バラ散ったと伝えておくれ
北ゆく鳥よ、伝えておくれ。黒バラ散ったと伝えておくれ——
「・・・以上」
村全体が、静寂に包まれていた。
「・・・マ、マルヴィナ・・・あなた、凄い歌の名手じゃない・・・」
シェナが恐る恐る、呟く。
「・・・そう?」
「絶対。聞き惚れちゃった・・・うん」
返す言葉が見つからないのか、シェナはもごもごと言った。
「・・・北行く鳥、・・・か。なるほど」
「そ。だから、探すとしたら——北がいいと思う」
「・・・ま、今日はもう遅い。宿とって、明日行こうぜ」
四人は同時に頷いた。
翌日、マルヴィナは一つの悲鳴ではっとした。
服を返しにソナの元をたずね、だが相変わらず彼女はクロエの家、
今度は神木を囲むように歩いていき、家に入る手前、・・・が今であった。要するにクロエ宅の手前。
馬のいななく声が聞こえた。黒い影と共に。
「・・・レオコーンだ!」
セリアスが反応する。「・・・やば、あれじゃ村人にびびられる——マルヴィナっ!?」
セリアスが話し終える手前に、マルヴィナが動く。・・・またしても川を飛び越えようとして。
「危——」
ない、と言おうとしたが、見事に今回は踏み切った。ほっ、としたのも束の間、
着地にやはりずるりと滑る有様である。
「っわわわわぁぁあわあっっ」
「言わんこっちゃねぇ!!」
すぐさまセリアスも川を飛び越える。キルガの狼狽の声がした。
「つかまれっ」セリアスがマルヴィナの腕に手をのばし、自分がそれを掴む。
「うわっ」
そして、不安定な姿勢で何とか両足は地面に残った。
「あっぶな——ああ、助かったセリアス、ありがとう」
「なんて事なし。それより、黒バラの騎士サンは?」
「入り口だろ。——二人とも! 先行ってる、後で合流しよう!」
そして、駆け出した。
——その光景を、キルガは半ば呆然と見ていた。同時に、全身の力が抜けたような、大きなショックを覚えた。
「?」
シェナが、冷や汗までじわりとかくキルガを見て、ははぁ、と笑った。
「マルヴィナの事好きなんだ」
いきなり不意打ちを食らったかのように、キルガはむせる。
くるりと振り返り、くすくすと笑う少女を半ば睨む。
「そう怖い顔しないでよね。——セリアスに助けてもらったマルヴィナ見て、ショック受けた、ってところでしょ」
「・・・シェナ・・・君は予言者か何か?」
「相当動揺してるねぇ。そういう場合超能力者というのでは?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
最近よくやり込められる。