二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.146 )
日時: 2011/01/04 15:33
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: sj9OXI0G)

               今年の初更新。・・・がまさか黒騎士が村人におびえられるシーンからとは(失笑



 レオコーンは、中年の木こりの男に詰め寄って、いや、話を聞こうとしていた。
マルヴィナは彼に見覚えがある。「この辺の土地はオラの庭よ」とか何とか言ってた人だっただろうか。
 嫌に威張りくさった男だった、ということしか覚えていないのだが、
今の彼はいきなり現れた漆黒の鎧の男に怯える一方だった。
「あちゃー・・・レオコーン、自分の格好に気付いてないな・・・あれじゃ誰に話聞いても逃げられるぞ」
「誰かは攻撃するかもよ」
「・・・勇敢だなとしか言えねーな・・・」
「とりあえず・・・レオコーン!」
 マルヴィナはその位置で黒騎士を呼ぶ。よく通る声が、村に若干響いた。
「・・・? ああ、マルヴィナ、だったか」
「正解」
「・・・何故ここに?」
 あんたこそ、とは言わない。
「ルディアノの事を聞いてたんだ。——黒薔薇の騎士と、白百合姫のこともね」
 レオコーンの表情が変わったのを感じる。
「・・・黒薔薇の騎士だと? ・・・何故それを・・・それは私の別の呼ばれ名ではないか」
「称号みたいなものか? わらべ歌になってたんだけど」
「わらべ歌だと? 馬鹿な、私がおとぎ話の住民とでも言うのか」
 十分そう見えるけど、といいかけて止めるセリアス。
「さぁ? ・・・とにかく、ルディアノは鳥が示す。——追ってみないか、幻の・・・北行く鳥を」
「・・・北・・・北か。——そうだな」
「決まりだな。・・・キルガとシェナ、遅いな。何やって・・・あ、来た」
 タイミングがいい。駆け寄ってきた二人は、マルヴィナとセリアスと、
住民の恐怖の目を向けられている黒騎士の姿を確認すると、小さく頷いた。
「・・・レオコーン。貴方に、話がある・・・今から行くルディアノまで、同行してもらいたい」
 キルガはそう言った。


 北に向かうにつれ、雲行きと、風がおかしくなっていった。
 草花が無い。彼はと、毒溜まりの沼。魔物がやけに多い。キサゴナ遺跡に行ったときに
マルヴィナを狙ったリリパット——の亜種、毒矢頭巾と呼ばれる魔物がうろついていた。
 毒の風呂にでも入ったのだろうか、というのがマルヴィナの第一に抱いた毒矢頭巾への感想である。
「・・・あのさキルガ。・・・本当にこっちか? ルディアノはこんな荒地にあるのか・・・?」
「間違いない」キルガは断言する。「・・・そろそろかな」
「・・・・・・?」マルヴィナ、セリアス、レオコーンはそろって怪訝そうな顔を作る。
「レオコーン、貴方に聞きたい」
 キルガは一呼吸分溜めてから、こう言った。

 ——今、世界紀では何と呼ばれているか、と。

 いきなりのその質問に、怪訝顔三人組はさらに目をしばたたかせる。
「・・・何を言う、世界紀五の六八二四、五〇一の年。呼ばれは、 安・星鈴_ル・ラーム_ 」
 すんなりと答えたレオコーンに、次はマルヴィナとセリアスが驚き、顔を見合わせた。
「・・・どういう事・・・?」
「・・・五〇一・・・!?」
「・・・何? 違うというのか?」
 レオコーンの声が、焦っているように聞こえた。マルヴィナが答える。
「・・・違ってる。しかも・・・大きく」
「何だと? だが、確かに——・・・・・・なっ、ま、まさか!?」
「そのまさかは正しいだろう」キルガが続けた。

「・・・正解は、世界紀五の六八二四、[八一二]の年——呼ばれは 安・月小_ル・アリア_ の世代だ」

 その差、三百年。
 皆が、絶句した。
「さっき、クロエさんの旦那のジャコスさんがエラフィタの歴史書を持ってきてくれたの。
神木やらのことだったんだけど・・・それに、三百年前のことがしっかり残されていたわ」
 シェナが借りてきたらしいそれを静かに開き、読み始める。

  “世界紀五の六八二四 五八九
     今年も桜が満開となった。ルディアノ王国のメリア姫もお見えになっていた
     姫様はまた美しくなられた。
     桜と同じく、眩しい「・・・なんて書いてあんのかしら? 汚いわねこの字・・・次行くね」

   世界紀五の六八二四 五八九 星蘭の月、封海の日  「約半年後のことよ」
     ルディアノ王国が滅びたという不吉な噂が流れている。
     だが、我らは信じることもせず、また本気にもしなかった。
     今日のご飯は桜の——「あ、これは関係ないわね」

   世界紀五の六八二四 五八九 星蘭の月、央青の日  「二十日後」
     ・・・やはりルディアノは滅びてしまったのか。いつものように、兵士様と共にいらっしゃる
     メリア姫のお姿が見えない。そして、様子を確認しに行った若者たちも帰ってこない。
     我が息子さえも・・・私が最後の確認者だ。私がルディアノへ赴き帰ることが無ければ
     ルディアノは滅びたということだ。だから——”

 シェナはそこで一度止める。すっ、とレオコーンを見る。兜の下で、彼は震えていた。
 シェナは続けた。飛び切りの、重々しい口調で。

  “だから——その時はルディアノの事は、忘れ去ってくれ。
   これ以上[犠牲者]を増やさないための村長最後の命令である”

「・・・これが、今この土地にルディアノのことが知られていない真相」
「・・・・・・・・・メリア姫は・・・?」
 答えられるはずが無い。
 衝撃的な、だがどうすることも出来ない怒りと悲しみが、レオコーンを支配し、そして——

「レオコーン!!」
 ・・・そして、レオコーンは駆り立てられたように、北へ。
 まっすぐに、馬を走らせた——・・・






         Chess)かなり長くなったな・・・