二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.182 )
- 日時: 2011/01/23 19:39
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: FjkXaC4l)
——ピンポーン
「うわっ」
マルヴィナが身を引いた。
「何だこれは? 音が——」
『はぁい』
さらに女性の声がして、マルヴィナは数歩逃げた。ちゃっかり腰の剣に手を伸ばしている。
「なな何なんだこれは!? 物から人の声がするなんて聞いたことないぞっ」
キルガは物——インターホン越しに、中の女性と話していたため、説明役はシェナとなる。
「あれは“インターホン”って言って、機械の一つよ。家の中と外で、通話できるの。電話みたいに」
「そっ、・・・そうなのか? てっきりあの中に人が閉じ込められているのかと・・・」
マルヴィナの返答に、セリアスが吹き出す。
「剣に手なんか伸ばして・・・ウォルロ村にはなかったのか、インターホンは」
「あるわけないじゃないかっ」
「何気に失礼だぞ、ウォルロ村に」
マルヴィナは真っ赤になりながらセリアスをジト目で見る。
キルガの話し声が聞こえなくなり、しばらくして家の扉が開いた。
中から現れたのは、先ほどの声の主と思しき女性。
緑の、艶のかかった髪と、幼く見える笑顔を持つ——彼女が、エリザだった。
「ルーくん・・・あ、夫のルーフィンのことね。ルーくんは人見知りなの。
で、研究室に行きたい人はみんな私のところに来るんですっ。・・・あまりいませんけど」
天真爛漫な若奥様エリザは、説明しながら四人をルーフィンの研究室へ案内する。割と近かった。
着くなり、彼女は妙に独特なノックをする。中から、声が返ってきた。
「・・・エリザかい? こんな時間に、珍しいな」
「うん。パパのお使いの人だよー。病気の原因のこと、知りたいんだって」
しばらくの沈黙。
「・・・入ってもらってくれ」
そしてようやく許可が下りる。
ルーフィンはぼさぼさ頭をさらに無造作にかきむしって、椅子ごと振り返ってから眼鏡越しにエリザと四人を見た。
なるほど、変人そうだ。
マルヴィナはそっとそう思う。
まず部屋。窓は本棚の後ろだ。薄暗い照明が机にぽつんと立っている。
その下には書類。机の下にもある。多分、もう必要のないものなのだろう。
だったら捨てればいいのに、と思ったらゴミ箱の中は満杯だった。
次いで服装。もろ白衣。何の科学者かと思ったが、そういえば学者でした、
・・・あれ、学者と科学者ってどう違うんだろう・・・とかなんとか思っていたりするが、じろじろ無遠慮に見ることの失礼さくらいは常識として分かっているので、そこで観察をやめる。
「えっと・・・あぁ、原因でしたね」
「いやいやいやいや。ルーくん、自己しょーかい自己しょーかい」
エリザのツッコミに、ルーフィンは
「もう知っているんだろう、この人たちは」
・・・とかなんとか言う。
そういえばエリザにすら自己紹介をしていなかったことを今更ながらに気付いた四人は、
(ルーフィンへの皮肉も込めて)勝手に自己紹介を始める。
「・・・。わたしはマルヴィナ」
「えっと、セリアスっす」
「シェナでーす」
「・・・キルガです」
最後に紹介された名に、エリザは反応する。
「えっ、キルガさんっていうんですか? すごい、守護天使様と同じ名前——けほっ」
「?」
シェナがエリザの言葉の語尾に混じった音に眉を寄せた。一方キルガは少しだけ俯き気味となる。
「・・・偶然でしょう」
苦しそうに言う。そして、黙った。
「・・・まぁ、いいとして。本題の病気ですけど、原因、分かりましたよ」
微妙にスルーされて、マルヴィナはむ、と眉をひそめかけ、・・・止まる。
「・・・え」
「原因。聞きに来たんでしたよね」
「・・・そ、そだけど」
早ぇ! と言いそうになるのをどうにか止めるマルヴィナ&セリアス。
「さっすがルーくん! で? ・・・原因は、何なの?」
研究室が、シーン、と静まる。外の住民たちの声だけ、わずかに聞こえた。
「原因は・・・呪い、です」
「・・・はっ?」
だが、そのとき、なぜか外の声も途切れた・・・ように感じた。
Chess) 三巻終了〜〜♪