二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人 ( No.23 )
- 日時: 2012/08/10 22:21
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: bkovp2sD)
マルヴィナの師匠イザヤールは守護天使記録書物庫にいた。
生真面目で厳格な彼は、その性格からか上級天使の中でも上位である、というのは説明したとおり。
常に『近寄るな』的なオーラ(マルヴィナ曰く)が出ているような彼に、当然話しかける者は、
「よぉ〜っす。相変わらずだねぇ、イザヤール」
・・・いないと思っていたらいた。
イザヤール本人も、まさか声をかける者がいるとは思わなかったのだろう、珍しく驚く。
「・・・ラフェット」
そして、呼び手の名を呼んだ。
「・・・どういう意味だ」
「どうって・・・そのまま。相変わらず他人を寄せつけねぇって感じだしさ」
それには答えず、イザヤールは取り出した書を戻そうとする。
「え、ちょっと。なによ、私が来たから戻すって、感じ悪ー。何見てたのよ」
答える必要もなく、ラフェットは自らイザヤールの手元を見る。
守護天使の書。守護天使記録書物庫だから、当たり前だ。
手にしたその書には、天使界の言葉で、一人の名が書かれてある。
【エルギオス】
「・・・・・・・・・」
ラフェットは、少し眉をひそめ、だがすぐにかぶりを振った。
「・・・やれやれ。結局、いつもあんたって、そう。一人で抱え込んじゃって・・・」
「・・・関係のないことだ」
「それも“結局いつもそう”」
イザヤールは悪意なくクスリと笑うラフェットを見て、小さく溜め息をついた。
「まあねぇ。マルヴィナが普通より早く守護天使になっちゃったんだから、心配なのも分かるけどさ、
史上最年少のキルガもいることだし、だいじょーぶっしょ」
「マルヴィナは未熟だ」
「じゃーどうして認めちゃったのよ? ——あ、もしかしてオムイ様が?」
“そうさせたの?”とまでは言わず、ラフェットは聞く。
ほぼ無音に近い声で肯定するイザヤールに、ついに溜め息をつくと、
ラフェットは挨拶もそこそこに立ち去った。
(・・・分かってるわよ)
そう、思いながら。
(分かるわよ・・・あんたの心配事は。でも、だからって、どうしようもないでしょ)
決まったことなんだから。
蔓草模様の扉を開く。守護天使記録書物庫には、生真面目な天使だけが取り残された。